2009年12月18日

潰れて当然?

 USENという会社、ご存知だと思います。

 もちろん、有線放送を中心に、さまざまな事業を手がけている会社ですね。この会社の二代目の社長の宇野康秀と言う人、一時期は時代の寵児みたいに持て囃されていました。ライブドア騒動の時にはライブドアの株式を大量取得して業務提携したり、映画製作会社「ギャガコミュニケーションズ」を買収したり、無料PC動画配信の「Gyao(ギャオ)」をスタートさせたり、六本木・東京ミッドタウンの6フロアー全部を借り上げたり…、いろいろと派手なことをやっていました。(そうそう、こんな本も出ていました。)

 しかし、手がけた事業のほとんどが失敗し、今は経営が相当苦しいみたいです。

 大金を投じてきた子会社を次々と手放していますし、一時は3800円もあった株価が、現在では50円ほどにまで落ち込んでいます。まさにつるべ落としですね。ここの株を持っている人たちはたまったもんじゃないでしょうね。

 宇野康秀と言う二代目社長に経営センスがないのは明らかですが、私はこの会社がここまでダメになった理由は別のところにあると思っています。

 2003年、USENとその関係会社は、有線放送のライバル企業から、約500人の社員(全従業員の約3割)を引き抜いて関係会社に移籍させています。さらにUSENは、その会社の顧客に限って、放送料を安くするなどのキャンペーンを行い、約4万8000の契約者を奪ったとされています。
 この件に関して、そのライバル会社から提訴されたUSENは、「不公正な従業員の引き抜きと違法な営業行為で、その会社の営業上の利益を侵害した」として、約20億5000万円の円の賠償を東京地裁に命じられています。
 さらに、USENは、違法な営業で損害を受けたとしてこのライバル会社を訴えるという、盗人猛々しい手段に出ていましたが、上記の判決とともに、東京地裁によってその請求は当然棄却されました。
 また、上記の引き抜きでライバル会社を突然退職した元従業員310人が、同社に退職金の支払いを求めた訴訟(これも盗人猛々しい所業ですね)では、東京地裁によって「一斉退職・就労放棄は著しい背信的行為」であるとして、懲戒解雇を有効と認め、この馬鹿げた請求は棄却されています。

 さらにさらに、USENは、くじ引きで「当たり」が出た消費者に特別な割引をしているように見せかけた手法(「当選商法」というのだそうです)で、衛星音楽ラジオの契約を勧誘していました。これが悪質な契約約款違反にあたるとして、総務省によって警告の行政指導を受けています。なんと、「当選者」が2年以内に解約すると、31,500円もの違約金を支払わせていたそうです。ひどすぎる!

 こういう一連のやり口を見る限り、USENという会社がまともな企業とはとても思えません。汚い手を使ってライバル企業を蹴落とそうとしたり、詐欺に近い手段で消費者を騙そうとする企業が、繁栄するはずなんかありませんね。今の株価はまさに適正な水準だと思います。宇野康秀氏の経営センス云々以前の問題として、このような企業は自然と市場から淘汰されていくのが筋なのです。

 企業がサステナブル(持続的)な成長を遂げるためには、CSR的な観点から経営を行わなければなりません。今日の企業は既にそのような環境下にあるのです。こういう当たり前のことを自覚しない限り、たぶんこの会社に未来はないでしょうね。
 
この記事へのコメント
私も六本木のドンキ前で「くじ引き当たり」に出くわしました。幸い、引っかかりませんでしたが。
後から腹立たしくなり、六本木ドンキにも足が遠のいてしまいました。
しかし、宇野康秀氏は一時、本当にもてはやされていましたね。先代が残した法的な問題をクリアして、ご学友たちとのネットワークを生かしてセレブなビジネスを展開、などなど、絶賛記事を読んだ記憶があります。
実は最初に勤めたところでこのメディアと結構関わっており、ここのオペレーターの方に営業をしていました。大半は若い女性の方で、結構楽しくはありました。当時は先代さんの時代でしたが、オフィスには営業マン用の机ががーっと並び、昼間は営業に出ているので空です。オペレーターの方によると、蛍光灯が点滅していても交換しない(社長の方針)とか、いろいろ奇妙なルールがあるんです、と言ってました。
オペレーターさんたちは普通のOLさんでしたが、営業の人は100人のうち1人くらいはガンガン顧客が取れて残るけど、残りは親戚や友人に入ってもらってそこで限界が来て退社する、と言ってました。(それでも当事は不景気だったから、続々大卒が入社してました。)
タフな企業、と割り切ってましたが、やはり一線を越えてしまったのかな、と思います。
その一線がわからないのが、タフな企業の最大の問題なのかもしれません。
いつも違法すれすれだから、次にやることが違法でも、本人たちの感覚がマヒしているから.....。
こないだ「若者はサラリーマンに夢を持っていない」と書きましたが、こういう企業のニュースを見ると、確かに「職人やアーティストになりたい、こんなことしたくない」と思うでしょうね。
Posted by mistral at 2009年12月22日 12:11
☆mistral様

そうですか、mistralさんはUSENと、そういうご関係をお持ちだったのですね。

私は逆に、件のライバル会社の方と個人的な関わりがあります。

今回の私の記事が、USENに対して厳しい書き方になってしまったのは、
そういう事情も少しはあるのですが…。

それはそれとして、USENのやり方というのは、
コンプライアンスの面から見ても、
相当問題があると思います。
(多分このほかにも、表に出ていないことがたくさんあると思っています。)

mistralさんのコメントにも書かれてあったようなタフの会社というのは、
多かれ少なかれ、そういう様々な問題を抱えていますね。
その手の企業は、「一線を越え」やすいと思います。
そして、社員を大切にしない企業は、顧客や株主も大切にしない傾向があるのですね、やはり。

社員、顧客、株主、社会…、
企業を取り巻くステークホルダーは様々いますが、
それぞれに対して誠実な対応をしないと、
もはや企業は生き残れない時代なのだと
USENの事例を見て、つくづく感じた次第です。
Posted by le_fou at 2009年12月23日 11:32
レスありがとうございます。
実はライバル社の方ともおつきあいがありました。
放送所の数などや成り立ちなど、同じ事業でも随分違うものだなあと思ったことがあります。
どちらもかなりお世話になった者としても社員引き抜きは「そこまで露骨にやるかなあ」と思いました。

もっとも、その後の仕事で、某大銀行が「都心の不動産を持つ中小企業にどんなことをやったか」などをつぶさに知ることがあり、
「企業って、コワいところあるよなあ」と背筋が凍る思いをしたこともあります。もちろんその大銀行は今日も元気にやってます。多分つぶれることはないでしょう。

企業とかサラリーマンのもつ「光と影」について、まだ「若い人に納得できる説明」ができないでいます。それには哲学が要る、と思っています。
この冬、アグリエッタとフレイザーとハイエクで、少しつかめるでしょうかね???
Posted by mistral at 2009年12月24日 14:05
☆mistral様

そうですか、ライバル会社の方にもつながりをお持ちなのですね。

宇野康秀氏の愚かな点は、ビジネスのルールが変わりつつあるのに、
そのことに気付かず、古いルールのままで、
ライバル企業を潰そうとしたり、消費者を騙そうとしたところだと思います。

そういう人が、一時、最先端の経営者としてもてはやされていたわけですから、
本当にお笑いぐさです。

多くの日本の銀行は、国の保護がなかったら、
バブル崩壊でとうの昔に潰れていると思います。
その意味では、やはり因果応報ですね。

最後のご質問、無知な私には答えられませんが
mistralさんが素晴らしい解答に到達されることを願っております。
Posted by le_fou at 2009年12月25日 03:15


 
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