鳩山首相の政治生命も、秒読みになってきたようだ。1年もしないうちに首相がコロコロ変わる「ワイマール症候群」が続くと、国民の中にヒトラーのような「強い指導者」を望む群衆心理が出てくるのは、古今東西を問わない。日本ではそういう心配はないと思っていたが、「100兆円の国債の日銀引き受け」を主張する亀井静香氏が鳩山氏の次の首相候補に擬せられるのを見ると、万が一のリスクも考えたほうがいいのかもしれない。
ナチは一般に思われているように大資本の利益を代弁したわけではなく、その正式名称「国家社会主義ドイツ労働者党」が示すように、労働者の党だった。ヒトラーはユダヤ人に代表される大資本を攻撃して弱者のルサンチマンに訴え、短期間に権力を掌握したのだ。彼はメーデーを国民の祝日として労働組合を統合・強化し、「生活に困っている者をまず助ける」という経済政策の原則を掲げた。これは「生活が第一」という民主党と似ているが、類似はそれだけではない。ヒトラーが実施した政策は、次のような徹底したポピュリズムだった:
こうしたバラマキ財政の財源は国債で調達されたが、シャハトが帝国銀行(中央銀行)の総裁を兼務していたときは、国債の発行にも歯止めがかけられていた。しかし戦費の調達に迫られたヒトラーはシャハトを解任し、帝国銀行を国有化して大量の国債を引き受けさせ、財政が破綻して戦争にも敗れた。ハイパーインフレが起こらなかったのは価格統制をしていたためだが、敗戦によってヒトラー政権の発行したライヒスマルクは紙切れになった。
ナチの赤字財政がうまく行った(ように見えた)のは、ヒトラーの絶対的な権力があったからだ。国債とは課税の延期に過ぎないので、徴税能力がその担保なのである。ヒトラーなら消費税を80%にすることもできるだろうが、普通の政権には不可能だ。そういう政策をとれるのは、亀井氏ぐらいのものだろう。日本郵政の社長人事のような暴挙を簡単に許す民主党政権では、あっというまに全権委任法が成立する可能性もゼロではない。いやな世の中になってきたものだ。
追記:リフレ派が亀井氏を賞賛しているのも不気味だ。複雑な経済問題を「簡単に解決できる」というカルト的な教義は恐い。
ナチは一般に思われているように大資本の利益を代弁したわけではなく、その正式名称「国家社会主義ドイツ労働者党」が示すように、労働者の党だった。ヒトラーはユダヤ人に代表される大資本を攻撃して弱者のルサンチマンに訴え、短期間に権力を掌握したのだ。彼はメーデーを国民の祝日として労働組合を統合・強化し、「生活に困っている者をまず助ける」という経済政策の原則を掲げた。これは「生活が第一」という民主党と似ているが、類似はそれだけではない。ヒトラーが実施した政策は、次のような徹底したポピュリズムだった:
- 公共事業で失業問題を解消
- 中小企業のモラトリアム
- ユダヤ人(大資本)に増税して労働者には減税
- 生活保護の拡大と(派遣村のような)救貧活動
- 老人福祉の大幅な強化
- 有給休暇や健康診断などの労働者福祉政策
- 自動車税の減税
- 高等教育の無償化
- 母子手当による少子化対策
- 大規模店舗の規制
- 高利貸しの追放
- 価格統制
こうしたバラマキ財政の財源は国債で調達されたが、シャハトが帝国銀行(中央銀行)の総裁を兼務していたときは、国債の発行にも歯止めがかけられていた。しかし戦費の調達に迫られたヒトラーはシャハトを解任し、帝国銀行を国有化して大量の国債を引き受けさせ、財政が破綻して戦争にも敗れた。ハイパーインフレが起こらなかったのは価格統制をしていたためだが、敗戦によってヒトラー政権の発行したライヒスマルクは紙切れになった。
ナチの赤字財政がうまく行った(ように見えた)のは、ヒトラーの絶対的な権力があったからだ。国債とは課税の延期に過ぎないので、徴税能力がその担保なのである。ヒトラーなら消費税を80%にすることもできるだろうが、普通の政権には不可能だ。そういう政策をとれるのは、亀井氏ぐらいのものだろう。日本郵政の社長人事のような暴挙を簡単に許す民主党政権では、あっというまに全権委任法が成立する可能性もゼロではない。いやな世の中になってきたものだ。
追記:リフレ派が亀井氏を賞賛しているのも不気味だ。複雑な経済問題を「簡単に解決できる」というカルト的な教義は恐い。
コメント一覧
サラ金多重債務者の支払金利が、自分の収入を上回った時に、もう借金返済は無理だと感じるのでしょうか
?
そして、その時に取る行動は
1. 「会社のカネを使い込んで、競馬で最後の大勝負にかける」
2. 「おとなしく自己破産して、すべてを失う」
1の「会社のカネで」のところに多くの人は抵抗があり、踏み止まりますが、もし合法的なカネであれば、多くの人が1を選ぶのでは、そしてその時が・・・?
注意点として「列記した政策で潤う人もいる」という点。亀井氏の地元あたりなんかまさに公共事業と第一次産業がメイン。国債出しまくって都会の現金持ちがひどい目にあっても、地方の人間が餓死するよりマシという判断だと思います。池田先生の「労働生産性を上げる」というのは地方ではまるで机上の空論で、もっと言えば派遣の禁止か否かなんて問題も地方の自分たちにはさしたる影響がありません。なぜなら派遣先の企業は大抵都会。地方は仕事をする場すらない。ゆえに要は公共事業で地元に金を落としてくれるか否かに集約されると思います。今のところそれが叶わないので、大分県のように賄賂を払ってでも公務員になろうとし、高等教育を受けた地方の人間のほとんどが公務員になる。
私が予想するに、今後の長期的な政局は”ヒトラー”型ではなく”ポルポト”型になると思います。都市が地方を苦しめているという言い方が正当化されて、都市部の資産を地方に再配分するという考えが増し、それゆえに都市部の意志から地方分権という名の「ポートフォリオから不採算地域の切り離す」行為が求められるようになってくると思います。
早く日本人がチェコとスロバキアが円満?にそれぞれの道を進むことができていることに目を向けるべきでしょう。
来年度防衛予算は4兆8千億円足らず、防衛費はこれまでもGDPの1%程度です、戦争もしないで第二の敗戦を迎えることになれば世界の笑いものですね。関東大震災が起こり数百兆円の復興費用が必要な事態になればその費用は調達できるのでしょうか?現在の日本並みに軍事費を抑え、戦争をしてなければヒットラーの経済政策は成功していたかも。
池田さんにお伺いしたいのですが、日本に、シャハトが考案したメフォ手形がどのようなものであったかを理解している経済専門家が何名いるのでしょうか。私は、エコノミストと称する人たちで、メフォ手形を知らない人があまりに多いのに驚いています。勝間和代さんのような、無知なリフレ派はしょうがないとしても、そうでない方でも知らない人が多いように思います。
メフォ手形は、通貨として使うことができなかったため、金融業者が「手形割り」をしていたようですね。しかし、ナチス政権は5年後の償還を拒んだ。あきらかな「国家詐欺」です。ナチス政権はシャハトを追放し、償還を求める金融業者を「ユダヤ人」にして収容所送りにした。元警察官僚の亀井さんは、銀行員を逮捕して刑務所に入れるつもりでいるのですかねw
「神風思考」といわれる日本人の逃避行動ですね。
心理的、物理的圧力に精神が耐え切れなくなり、大日本帝国のような「爆発的解決」を求めるのです。
そこには神がかり的な、魔術的な魅力があり、オウムのエセ教義に心酔するかのような、倒錯的心理状態が起こっているのでしょう。
ほんのわずかな「思考能力」、これがあれば日本人はもっといい人生を歩めたのかもしれません。
民族の限界です。
http://www.axishistory.com/index.php?id=3612
戦線別ドイツ軍戦死者統計
ヒトラーを倒した主戦力は圧倒的にスターリン(戦死480万人中、
Eastern Front(- Dec 1944)とGermany (1945)だけで400万)。
ヒトラー政権は社会主義的バラマキ政策で大衆の支持を得たものの、
社会主義ソヴィエトの赤軍にベルリンを落とされて敗北した。
政府の裁量的な福祉政策はダメだとフリードマンはのたまうけれども、
現実として政府の裁量的福祉政策抜きでは近代国家として成り立たない。
ソ連のようなDQN国家でも、戦争に勝てただけマシなほう。
(中華民国や南ベトナムやフィリピンなどと比べればの話だが)
第三帝国が公共事業で失業率を改善したのは事実だと思いますが、それが軍備拡張なしでも上手く行ったかどうかは何とも言えません。
http://royallibrary.sakura.ne.jp/ww2/gimon/gimon13.html
1938年には失業者が1932年の2%にまで激減しましたが、予算は年々膨らみ続けて12倍に、軍事費は50倍になっています。よく「失業者を激減させた」と書かれるアウトバーンの予算などが、いかにごく一部にすぎなかったのかよく分かります。ナチスの経済復興は、まず軍備拡張ありきのものでした。
メフォ社債などという偽装国債(一見社債に見えるが、実はただの国債)の発行もあって、ナチスの開戦は一種の計画倒産だったのかもしれません。
あと、1930年代はブロック経済真っ只中だったので、現代の開放経済で同じ政策は効きません。たまにデフレからインタゲでインフレ化に成功した例として、1930年代のスウェーデンが挙げられるのですが、これをもって現在の日本でもインタゲでデフレが克服できるとするのには無理があるでしょう。
ただ、たまに聞く恐ろしい暴論として、開放経済で財政出動が効かないなら、「財政出動の効果を上げるために」閉鎖経済にすればいいという人がいます。これでは本末転倒なのですが、問題の単純化の果てにはこういう結論が待っているということです。
>経済問題を「簡単に解決できる」というカルト的な教義は恐い
上記の点や国家主義的政策は仰る通りだと思います。しかし短期政権がコロコロ変わった点では第4共和制のフランスも同じ。むしろ同時代の平和主義・文化主義・個人主義のフランスの方が、今の日本に近いのではないかと感じます。外交は宥和的で内政はバラマキ。あっちにもこっちにも良い顔をしようとして、結局は全体としては閉塞状況になっていく。。。まさに今の日本かと。
「財政赤字はフィクションか」へのコメントに、私が貯金を全て人民元と米ドルに換えて外国の口座に移し金のアクセサリーを買い込んだ、と書いたら、「世界経済は繋がっているから、日本がハイパーインフレになったら海外脱出すればよい、という単純なものじゃない。仮にも世界経済の1割を占める日本経済が大混乱に陥るわけだから、中国の抱える様々な脆弱性に火がついて延焼する可能性だってある。」という反論を別の方からいただききました。
経済的にはそうなのでしょう。だけど私がレンテンマルクやシュトレーゼマンに言及したのは、当然その後に来る政治的帰結を恐れてのことなのです。池田先生がここでお書きになっているような政治的シナリオは、強い者にはすぐなびく日本人(失礼)なら大いにありうる事です。
でも、若い頃のヒトラーがそれなりにイケメンなのに比べて、メタボの河童みたいな亀井さんじゃなに言ったって女性はソッポを向くと思います。
趙秋瑾
gase2さん、良いサイトですね。メフォ手形に対する考えは、私とは少しちがいますが、必要なデータも記載されていますし、リフレ派の経済学者やエコノミストはこのサイトに記載されている程度のことを勉強してから政治家にものを言いに来やがれと言いたくなりますw
経済の話ではないですが…
情報の受け手が多いほどスローガンは単純化する必要がありますが
人物評価は別として毛沢東やヒトラーはその才能があったのでしょうね。
彼らの政敵には、高い教育を受けて理論武装してる者も多かったけど
人心を掌握する術では大きな差があったというか。
けっきょくどのような論理であれ、多くの「普通の人」は数式や
外国の文献の引用とか出れば、その時点でチャンネル変えて
ネットでも三行以上の長文は読まないのかもしれません。
それに対して
「けしからん。啓蒙すべきだ」だと学者。
「民衆はバカだ。分かる人間が中枢を担うべき」だと革命家。
「それが現実である以上は、それにあわせて戦略を取るべき」だと
民間のPR会社ということになるのでしょうか。
宗教やネズミ講の勧誘も、都会で春に行われることが多いですが
閉塞感や先行きの不安を感じていれば、判断力は鈍ります。
そして個人でなく社会集団単位でも同じ…というより、毎日多くの
メディアで不安を煽られている分、一度流れると加速は大きいのでしょう。
だから論理性よりもPR能力で決まってしまうのが現実なのでしょうね。
なお「民」の語源は、盲目にされた奴隷から来ているそうですが
漢人のシビアさが見えるようで興味深いです。
某超田舎旧帝大で非常勤講師をしているんですけど、まさにナチス前夜状態です。
ハブステーションの目の前に超超広大な土地にボコボコ研究棟を建ててる。現在5棟建設中。東大や京大の研究者が見たら泣くんじゃないかな。ムダにトイレ、椅子、机を発注しているのは予算消化のためだろう。麻生政権の予算編成からさらに加速している。
農学部の農地なんかほとんど使われてないで放置。カフカ的な警備員や職員が下を向いて徘徊しているんです。掲示板には就活に失敗した集団がビラが貼りまくって、授業前の机上に大量にばら撒いてある。経済学部は覇気がなく、ロースクールには20世紀左翼の教員が教鞭をとっている。
firefry_8255さま、
>「民」の語源は、盲目にされた奴隷から来ているそうですが・・・。
今の中国では、郭沫若が言った漢字の定義が一般的で、「民」が「奴隷からきている」というのもそのようです。
でも電子版の説文解字を見てもそうは書いてありません。字の形は目を突き刺すことの象形から来ており、神への供え物にされた被征服民ということのようです。同時に「冥」つまり「おバカ」という意味も昔はあったようです。(民はmin冥はmingで現代の発音は違いますが)
いずれにしても、おバカな人たちということには違いありません。
ラテン語のpopulusや英語のpeopleを日本で翻訳するときに「人民」と、「人」を前につけたのは、ちょっとはマシに見えるようにという配慮だったのかもしれません。(中華人民共和国の「人民」も「共和国」も日本が西洋語を漢字に翻案し中国が輸入したのです。)華人がシビアで日本人が優しいというのも当たっているかも知れません。秋
jij999さん、大学の経済学部で、レンテンマルクやメフォ手形を教えているのでしょうか。昔の自民党の国会議員や大蔵官僚は、かなり意識していたようです。今の自民党の国会議員や財務官僚は、知らない人のほうが多いでしょう。私は、自民党について言えば、タレント議員を増やし過ぎたことが原因であると考えます。民主党はどうなんでしょうね。私の知る限り、なぜなかは分からないのですが、菅直人副総理はレンテンマルクやメフォ手形を知っています。ご本人もそれなりに勉強されたと思うので、多少安心してはいるのですが、亀井さんのような無知蒙昧な人が金融をやっているわけで、どうなることやら、、、
ミュンヘン会談が1938年、メフォ手形の償還が1939年、そして第二次大戦の勃発も1939年です。歴史の教科書には、第二次大戦が勃発した原因はミュンヘン会談の宥和政策であると書かれているようですが、私は、メフォ手形の償還が1939年であったことを無視してはならないと思う。戦争をするくらいなら、デフォルトしたほうがいい。