2009年12月27日(日)

まな娘への心配募る 親子離れ離れ8ヶ月 カルデロン一家在留問題

 
父アランさん、母サラさんと記者会見に臨み、「日本で勉強したい」と語ったカルデロン・のり子さん(右)=3月13日午後、霞が関の司法記者クラブ

 蕨市在住で日本生まれのフィリピン人、カルデロン・のり子さん(14)と両親をめぐる強制退去問題は4月、在留特別許可が出たのり子さんを日本に残し、父アランさん(37)と母サラさん(39)がフィリピンへ帰国することで一応の決着をみた。のり子さんは現在、県内のサラさんの妹(31)夫婦の元で暮らす。家族が離れ離れになって8カ月、両親はまな娘への思いを募らせている。

 アランさんとサラさんは現在、2人が生まれ育ったマニラ市のトンド地区に住む。アランさんによると、トンドは低所得者層地域で、仕事を探す人たちであふれかえっているという。アランさん自身も仕事が見つからず、貯金を切り崩しながら生活している。

 そんな両親の楽しみは、インターネット電話でのり子さんと話すこと。ネット電話は通話代が無料のため、ほぼ毎日通信しているという。パソコンに内蔵されたカメラで、お互いの表情を見ながらのやりとりだ。

 最近の話題は2学期の成績表や冬休みのこと。のり子さんは部活で音楽部に所属し、「ダンスを一生懸命やっている」と報告している。アランさんは「のり子がいなくて寂しいけど、寂しいって言ったらもっと寂しくなるから、勉強頑張りなさいとか、お手伝いをしっかりしなさいと励ましている」と話す。

 帰国当初、のり子さんはカメラの向こうでよく泣いていたが、このごろは涙を見せなくなった。「少したくましくなった」とアランさん。しかし、「のり子はまだ14歳、男の子なら大丈夫かもしれないけど、女の子だから不安。子どもの面倒を見るのがお父さんの役目なのに…」と日本に残した一人娘を心配する。

 夏休みを利用して、のり子さんはサラさんの妹とともにフィリピンへ渡った。4カ月ぶりの再会。その際、アランさんは「全員分は渡せないけど、日本でお世話になった人たちに」と、のり子さんにフィリピンのお菓子を持たせた。「のり子と会えてうれしかった。今までお世話になった人たちにも会いたい」と今も感謝の気持ちを忘れない。

 カルデロンさん一家をめぐっては「子どもの人権は尊重するべき」「不法入国は許さない」といった意見が世論を二分した。東京入国管理局は不法入国、滞在を許さないスタンスを貫く一方で、森英介法相(当時)は両親退去後に「上陸特別許可を出すこともやぶさかではない」と述べるなど柔軟な姿勢も見せた。

 のり子さんに認められた在留特別許可は法相に裁量権があるが、許可基準の不透明さを指摘する声もあった。このため法務省は7月、基準を明確化し、許可する上で特に考慮する要素として「小中高生の実子を同居して育てている」ことなどを追加した。

 一家を支援する渡辺彰悟弁護士によると、のり子さんの就学費と生活費の援助を目的として立ち上げた「のり子基金」は今年7月末時点で、約316万円集まったという。渡辺弁護士は「300万円集まったことに感謝している。ただ、国は両親を帰すべきではなかった。両親と離れて1人、親せきの元で暮らすのり子さんを見ているとつらそうだ」と心苦しそうに話した。

 

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