「韓国伝統のトイレ、文化財に指定を」
仁荷大名誉教授、トイレの研究を1冊の本に
- 金光彦(キム・グァンオン)教授は、「全国を訪れて撮影したティッカン(トイレ)の写真を掲載したが、今ではそのまま残っているところが一つもない」と残念がった。/写真=李徳熏(イ・ドクフン)記者
「日本では文化財に指定しているのに、韓国では古い家屋の平面図にも表示がない」
「水洗トイレ=西欧式なのか。韓国でも古代に使っていた」
民俗学者で仁荷大名誉教授の金光彦(キム・グァンオン)さん(70)が、1970年代から取り組んできた風変わりな研究にピリオドを打った。トイレを意味する「ティッカン」という言葉の語源、その歴史から、各地域のトイレの特徴、王宮や寺院のトイレ、トイレにまつわることわざなどをまとめ、自ら撮影した約250枚の写真も掲載した、『ティッカン』(キパラン社刊)という著書を最近出版したのだ。
「本来、トイレこそが家屋の中でも最も重要な空間だ。1日に3-4回以上、必ず行かなくてはならない場所だからだ。それにもかかわらず、だれも関心を持とうとしない。伝統的なスタイルを貫いてきたティッカンが次々と消えていくのを黙って見ていられず、記録として残すことにした」
「ティッカン」とは文字通り、「裏側にある部屋」という意味だ。「ティッカン」以外にも、「厠(し)間」「浄廊」「ヘウソ」「トンシ」「西閣」「便所」など、さまざまな呼ばれ方をしてきた。「韓民族(朝鮮民族)は昔、シベリアから吹く冷たい風を避け、南方へと移動した。そのため、常に南側を表、北側を裏とする家を建ててきた。トイレを家の裏側に設けたのは、暗くて汚く、悪臭が立ち込める空間のため、できるだけ隠しておきたかったからだ」と金教授は説明した。
「ティッカン」という呼び名が初めて登場したのは、1459年に書かれた『月印釈譜』で、また「ティッカン」についての説明が本に登場したのは、実学者(実学は朝鮮王朝後期の思想・学問)の洪万選(ホン・マンソン)=1643-1715=が著した『山林経済』という本だった。金教授は「中国のトイレはドアや仕切りがないのが特徴なのに対し、日本では外部に少しでも露出してはいけない、という意識が強い。トイレに対する意識は、韓国・中国・日本でそれぞれ異なっている」と指摘した。
水洗式トイレといえば、西洋のトイレを連想するが、韓国でも古代に水洗トイレが使われていた。仏国寺(慶尚北道慶州市)の毘盧(びる)殿の横にあった、大きな石造りの便器がそれだ。便器の真ん中にマクワウリほどの大きさの穴を開け、その前後にも穴を掘って、用を足した後は水を掛けて便器の前後の穴へ流れるようにしたものだった。
「1985年、文化財庁が出版した『文化財大観』には、古い家屋132棟の平面図が掲載されているが、ティッカンの表示は一つもなかった。おかしな話ではないか。日本ではすでに、幾つかの古い家屋のトイレを文化財に指定している。韓国でも伝統的なティッカンを文化財に指定すべきだ、と90年代初めから求めてきたが、誰も聞く耳を持たなかった。これまでに麻谷寺(忠清南道公州市)のティッカンが取り壊され、松広寺(全羅南道順天市)のティッカンは近代的なトイレに改造された。仙巌(がん)寺(同市)のティッカンが原型のまま残っているが、これだけでも文化財に指定するのが望ましい」
国立民俗博物館長を務め、現在は文化財委員会の民俗分科会長でもある金教授は今後、すきや臼などの農具についてもまとめ、出版する計画だという。
許允僖(ホ・ユンヒ)記者
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