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ベンダーがあなたを相手にしない理由先週 EMC のアナリスト関連イベントに参加した筆者は、彼らが重点を置く固定客の獲得に関する最新情報を入手した。彼らの大規模な調査活動によって先ごろ明らかになった点の1つは、顧客の忠誠度が1%上昇すれば、それに続いてマーケットシェアが2%上昇することだった。これは市場独占に向けた確実な方法のように思えるが、EMC のように固定客の多い会社でもその過程においてかなりの抵抗があった。
筆者も大手多国籍企業勤務時代の数年前にかなり近い経験をしているので、ベンダーの大半があなたなど相手にしないことや、あなたにも多少その責任があるかもしれないこと、そしてこれが大企業寄りから消費者寄りにいたるあらゆる企業にあてはまる理由を説明するのも面白いのではと考えた次第だ。 筆者は今回、ソニーが自社の利益目標を数年先延ばししなければならなかった理由を説明したいと思う。彼らと、はるかに収益性の高い Apple との大きな違いは、顧客の忠誠度に重点を置いているかどうかだ。 ● 公開企業の重点を決める売上高成長 売上高成長に主な重点を置く見当違いの財務分析コミュニティーの影響が非常に大きいため、公開企業の大半は顧客を獲得するだけで、それを維持することは考えていない。 これは、顧客の維持が最高経営責任者(CEO)の重視する判断材料になっていないためだ。全体の数が増加し、利益の維持もしくは増加さえできていれば、不満を持つ顧客は1人もいなくなるまで毎月次々に切り捨てていくことが可能なのだ。 そのような戦略ではいずれ見込み客が枯渇してしまうと思われるかもしれないし、それは正しいかもしれない。しかし、これには戦略的な考え方が必要になる。しかも、CEO たちに戦略的な業績ではなく、四半期の実績だけしか考えさせない影響力を持つのもこれらアナリストなのだ。したがって、もしこれらの CEO が、自社の生き残りにきわめて重要な短期的成長を犠牲にして固定客拡大に資源を投入したら、その判断は一斉攻撃を受けることになるだろう。 このことはつまり、固定客を獲得し、維持するのが最もコストのかかることの1つである点が業界として分かっていても、大半の企業にとっては固定客より新規客の方が重要だという意味になる。PC 業界で Apple のマージンが最も高い理由の1つは、業界最多の固定客に恵まれているからだ。にもかかわらず、同社でさえこの基本部分を軽視する傾向が時々見受けられるのだ。 つまり、お金を搾り取る時以外には幹部らが既存客の存在を軽視する点であり、実際それは一歩間違えば顧客の忠誠度を低下させることにつながる。 ● 社内重視 大半の幹部は、製品と顧客のニーズを確実に合致させる作業にほとんど時間を費やさない。彼らは人員配備、予算争奪戦、主要判断の正当化や売り込み、あるいはその主要判断の結果生じる危機への対応などの社内の問題に大半の時間を使うのだ。 これでは顧客のための時間はほとんどなくなり、概して組織のかなり下の方の人間が対応することになる。こうなると、顧客満足度の優先順位は相対的に低くなってしまう。そして、製品ラインアップ担当幹部ではなく、顧客に直接対応する営業やサービスの組織が対応するケースが多くなる。 残念ながら、もしこの問題が製品の問題に起因するものであったなら(そうであることが多いのだが)、顧客に直接対応する組織からは苦情しかでない。だが、別の組織に属する彼らの苦情は大体の場合聞き流されてしまう。 ● EMC の顧客満足度のヒーロー Jim Bampos 氏 実際には、顧客ニーズの重視に情熱を注ぐことは容易だ。会社のあらゆる業績に関する数字は説得力がある。だが、自分の会社に不満を訴えるのではなく夢中になってくれる顧客の存在は興奮を覚える体験である。 しかし、トップ経営陣に悪い話を上げたくない幹部としばしば衝突することになるため、このような情熱を持ち続けることは難しい。 筆者は、自分が先刻承知の問題ばかり大量に見つけ出すという理由だけで品質管理組織全体を抹消する判断を下したある幹部のことを思い出す。この判断を受け、品質は大幅に低下し、それとともに売上高や利益も暴落して、この幹部もその後解雇された。しかしこれは、顧客の忠誠度を最優先事項にしようとする個人にとっての危険を良く表している。 EMC でこの取り組みを主導していたのが Jim Bampos 氏であり、同氏には顧客を EMC のファンにするという情熱以上の何かがある。同氏は満足度や忠誠度をさらに高いレベルに向上させる取り組みにおいて疲れを知らないように感じられ、大して驚くことではないが、EMC では顧客の忠誠度が1%上昇するごとにマーケットシェアが2%上昇した。 同氏はこの取り組みで悪戦苦闘してきたし、EMC のように顧客を支持者へと変えることに力を入れる担当者を置く企業は少ない。Bampos 氏のような人物はヒーローとして評価されるべきだと筆者は思っており、筆者は本稿をお借りしてそう評価している。 ● まとめ:相恵的関係 企業に自分の扱いを改善して欲しいと思うなら、その見返りを提供する必要がある。より良いサポートを受けるにはそれなりの代価が必要になる場合が多い。しかし、優れた使い勝手を確実に実現するためのほんの少しの対応改善に対し、企業、営業担当者、あるいはサービス技術者に感謝したり、見返りを提供する人は何人いるだろうか? 筆者の同僚の1人が古い Dell 製コンピュータで問題に遭遇(ハードディスクの障害発生)したことがある。営業担当は、新しいドライブを持ってきただけでなく、ドライブが到着したときに連絡し、交換手順を詳しく説明し、作業終了時に再び連絡して、すべて適切に動作していることを確認してきた。これはそれほどたいしたことではないのかもしれないが、われわれの大半が大体の場合に得られる専門サポートの内容を大きく上回るレベルである。 だが、われわれのなかで何人がわざわざ上司に連絡をしてこの担当者をほめるだろうか? 筆者は本稿を書きながら、自分がそうすべきでありながらしなかった例をいくつも思い出す。われわれは、このような特別な対応を当然のことのようにとらえ、なぜほかの担当者が同じような対応を取らないのか考えることが非常に多い。 企業についても同じことが言える。もっと多くの企業に EMC のような対応を望むなら、思い通りに行かないことに対して公式の場でクレームを付けるだけではなく、公式の場でも非公式の場でも彼らを高く評価すべきだ。さらに、もし対応の丁寧なベンダーがあったら、入札のときにその点を考慮すべきだ。入札額の最も低いところには、払いたくないサポートコストが関係してくる場合もある。Apple が最も低価格の PC ベンダーでないことは確かだが、顧客の忠誠度と財務成績は最強だ。筆者はもっと多くのベンダーがその関係性を理解してくれることを望みたい。 結局、企業はわれわれが育てるものだ。われわれが顧客として悪い経験を頻繁にするのは、最高の経験ではなく低価格をあまりに追求しすぎるためだ。文句を言ったり値段交渉するよりも、自分たちの力になってくれる人々のことをもう少し考えれば(ここで筆者は特に自分に言い聞かせているのだが)、自分たちの仕事や生活をもっと楽しめるようになると思う。すべては己に帰ってくるものだし、称賛を受けることは実際にうれしいことだからだ。 |
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