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きょうの社説 2009年12月27日
◎中高の「領土教育」 あいまいな解説書に懸念
文部科学省は2013年度から使用する高校新学習指導要領の地理歴史解説書に、韓国
も領有権を主張している「竹島」について直接記述しないことにした。政府は否定しているけれども、韓国側に配慮したものと受けとめざるを得ない。竹島を「日本固有の領土」と明記しないあいまいさが、「領土教育」に禍根を残しはしないか懸念される。文科省は12年度から使用の中学社会科の解説書に初めて竹島を明記した。昨年夏にそ のことが公表された時、韓国側は駐日大使の一時帰国や交流事業の中止など、過剰ともいえる反発をみせ、深刻な外交問題に発展した。 平野博文官房長官は高校解説書の竹島の記述見送りについて「わが国の教科書だ。外交 的配慮ではない」と述べたが、自国の教科書であれば、固有の領土と記すのが当たり前であり、少なくとも中学解説書より後退させてはならなかったのではないか。中学解説書にしても「我が国と韓国の間に竹島をめぐって主張に相違があることなどにも触れ、北方領土と同様に我が国の領土・領域について理解を深めさせることも必要」という書き方で、固有の領土という表記は巧妙に回避している。 北方領土は明確に「我が国固有の領土」と記されているため、文科省は竹島も北方領土 と同様に固有の領土であることを明示したものだと主張し、これを踏まえた高校解説書も同様の趣旨という。しかし、このような解説書に基づく教育では、固有領土の竹島を韓国が「不法占拠」しているという政府見解はわきに置かれ、領有権争いということだけが生徒にすり込まれる恐れも否定できない。 鳩山由紀夫首相は民主党幹事長の時に「日本列島は日本人だけのものではない」などと 言って、永住外国人の地方参政権を認める考えを示し、小沢一郎現幹事長も先に韓国を訪れた際、地方参政権付与の法案提出に言及している。政府、与党には竹島問題で日韓関係をこじらせたくない思いが強いと想像されるが、かりにも政治的思惑で領土教育がゆがめられるようなことはあってはならない。
◎兼六園の欧州客堅調 人気に応える本物に磨きを
兼六園を今年訪れた欧州からの観光客がすでに昨年1年間の実績を上回った。不況や円
高で石川県内を訪れる外国人観光客が落ち込む中で、日本の歴史や伝統文化に関心が深いとされる欧州客の底堅い人気を裏付けたといえよう。今後も景気に左右されにくい観光客層の拡大が十分期待できる。金沢市は国の「歴史都市」やユネスコの「創造都市ネットワーク」に認定、登録され、 都市の風格を高める下地に厚みが加わった。海外への知名度アップを図るとともに、「リアル・ジャパン」(本物の日本)を求める欧州からの客に応えられるよう、ミシュラン「三つ星」の兼六園はもとより、金沢の持つ「本物」の魅力に一層磨きをかける必要がある。 11月末現在で前年同期比3・2%増の1万3981人に上った欧州主要6カ国(フラ ンス、スペイン、英国、ドイツ、イタリア、ロシア)のなかでも、フランスは10・1%増の3947人を数えた。「ミシュラン効果」を生かしながら、フランスからの誘客をさらに推進したい。 来年は5月に金沢で日仏自治体交流会議が開かれる。金沢21世紀美術館とパリのルー ブル美術館との交流にも乗り出すなど、金沢の魅力を発信する好機である。市は今冬から工芸の魅力を通じた「クラフト・ツーリズム」を展開するが、金沢でしか体験できない旅の醍醐味(だいごみ)は誘客力を高める。伝統文化や食など金沢の「資産」をいかに活用していくかが問われている。 スペインからの観光客も約3600人を数え、同国での日本ブームを反映したといえる 。特に武家文化に触れるコースが人気といわれ、城下町としての金沢に対する関心が強まっているようだ。高山などから金沢に至る観光ルートとして県が定着を目指す「プラチナルート」のなかでも、「城下町金沢」のよさをよりアピールして、欧州での知名度を高めたい。 先ごろ、県の「外国人受入推進プラン」の委員らが金沢市内の観光関連施設などを視察 し、改善点などを提案した。北陸新幹線金沢開業に向けても、今後さらにきめ細かい対策を講じてもらいたい。
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