ラストワンプレーに会心のビッグトライ!
12月20日(日)・秩父宮ラグビー場

△帝京大学 17対17 関東学院大学▲
(トライ数3対2で帝京が2回戦進出)

《出場メンバー》
①伊東⇒吉田 ②森 ③甲斐⇒坪井 ④菅原⇒中田 ⑤ボンド ⑥ツイ ⑦吉田(光) ⑧野口 ⑨滑川 ⑩森田 ⑪富永 ⑫南橋 ⑬河合⇒徳永 ⑭伊藤 ⑮船津⇒沼尻

いよいよ16チームが大学日本一を目指す大学選手権が始まった。20日に一斉に行われた1回戦での帝京の対戦相手は、リーグ戦の雄、関東学院。過去6度の日本一経験を持ち、帝京はこれまでの関東学院との対戦で、一度も勝利していない。
これまで帝京大学の前に大きな壁として立ちはだかってきた関東学院を破り、2回戦へ駒を進めることが出来るのか? 
冬らしい抜けるような青空ながら、最高気温11度。微風が吹く中試合は12時にキックオフされた。

【前半戦】
関東学院のキックオフで始まったこの試合は、序盤FWが積極的に攻勢に出た帝京ペースで始まる。7分にはFLヘンリーの突進やSO森田のキックなどで、関東学院陣内深く攻め込みチャンスを得るが、得点を挙げることが出来ない。

全国大学選手権大会・1回戦

その後逆に細かいミスで一気に自陣に押し戻され、9分にはPGを与え、0対3と先制点を許してしまう。
しかし、再びペースを取り戻す帝京。13分には関東学院陣内深く攻め込むと、ゴールラインより10mのマイボールスクラムからオープンに展開。森田が華麗なステップで縦に突進。一度は潰れるがSH滑川からヘンリーへと渡り、ゲインラインを一気に突破して、ほぼ中央にトライを決める(5-3)。さらに船津がゴールを決め7対3と帝京がリードを奪う。

全国大学選手権大会・1回戦

その後も帝京ペースで試合は進み、20分過ぎには森田の効果的なタッチキックなどで関東学院陣内に深く攻め込み、ゴールライン直前のラインアウトからモールを形成しトライを狙うが、攻め切れない。
27分には帝京は一時退出者を出し、数的不利の境地に追い込まれるが、全員が一丸となったディフェンスで14人の10分間を守り切り、7対3と帝京リードで前半を終了した。

【後半戦】
後半戦スタートから帝京はSO徳永を投入し、追加点を狙う。開始直後にはポンドの突破から関東学院陣内深く攻め込むと、ポイントを形成し、滑川ー徳永と繋ぎ、右タッチライン際を走るWTB伊藤に飛ばしパスが渡り、そのまま伊藤が右隅に飛び込んみ、12対3と帝京がリードを広げる。
その後、関東学院が意地を見せ、21分には関東学院にこの試合最初のトライを許す(12-10)。
ここがチャンスと攻勢を強める関東学院に対し、27分にはモールを一気に押し込みトライを献上。12対17と逆転を許す。

全国大学選手権大会・1回戦

帝京は30分にはPGを失敗。その後もチャンスを生かし切れない帝京。ついにロスタイムに突入する。森田のタッチキックでようやく関東学院陣内右奥に攻め込むと、その後のプレーでゴール目前に迫る。だがスクラムは関東学院ボール。帝京FWが一丸となる。ここで関東学院がファールを犯し帝京ボール。
帝京はショートキックで試合を再開し、ラックを形成。ヘンリーがサイドから伊藤にボールを託し、最後は伊藤がタッチラインぎりぎりにグラウンディング。土壇場で帝京が17対17に追い付く会心のトライ!。

全国大学選手権大会・1回戦

結局、トライ数で上回る帝京が2回戦進出を決めると同時に、“関東学院超え”を果たした。
岩出監督が選ぶゲームMVPには、後半から出場し、攻守に活躍を見せた徳永が選ばれた。

全国大学選手権大会・1回戦

《試合後のインタビュー》
岩出 雅之監督
「私が帝京を指導するようになってからは公式戦で関東学院には一度も勝ったことが無かったので、そういう意味でも期するものがありました。しかしながら、個人的な想いはできるだけ学生にそれを感じさせないように、力ませないようにしていました。
躍進を遂げた関東学院に我々がいい意味で挑戦し続け、砕かれて、そこから学ばせてもらった多くのことをぶつけて、恩返ししたい。その中で我々の成長を実感したいと思って臨んだゲームでした。
皆の熱い想いが、自然に伝わりあった試合だったと感じます。最後は、多くの監督さんがそうであるように、選手たちを信じる気持ちだけで試合を見ていました。
内容は関東学院が、ブレークダウンの攻防に、マイボールもアタックも多くの人数をかけて、繰り返して取りにくるところに、我々が対応できていない場面もあったと思います。対抗戦とは違う、リーグ戦チームの強み、弱みを我々なりに分析して臨みましたが、ブレークダウンにやや課題が残りました。またゲームの流れの中で学生の強気な部分がマイナスに出たところもありますし、もう一度ゲームマネジメントの部分、ラグビーの組み立て方と無用な反則について話し合おうと考えています。
リーグ戦とは違って、ノックアウトゲームの中で、この試合で得たものを大きく捕らえて、より逞しくなって、関東学院の今日の想いを我々の力に加えて、次の試合に臨みたいと思います。」

□キャプテン No8 野口 真寛(4年)

全国大学選手権大会・1回戦
「今日のゲームは厳しい場面の多いゲームでした。関東学院のブレークダウンに対して、自分たちがやや受身になってしまって、クリーンボールを出せなかったことが苦戦の原因です。
でも最後は自分たちの今まで経験してきたこと、130人の想い、粘り強さをひとつにして勝利することが出来た試合だったと思います。
今日のようなゲームを関東学院と出来たことが自分たちの力になったと思います。また関東学院の分も含めて次の試合で結果に繋げたいと思います。今日厳しい試合に勝って力を付けたので、これを早稲田にぶつけたいと思います


□体を張ってFWを盛り立てた HO 森 太志(3年)
「最初にスクラムで激しいプレーが反則を取られたので、自分たちの強みを出すのに時間がかかってしまって、それが苦戦の原因になったと思います。またラインアウトも関東学院のディフェンスにはまってしまいました。
自分たちが点を取るということよりも、相手に点をやらない、ゼロに抑えたいと思っていたので、モールで取られてしまったのは悔しいです。
スクラムでは駆け引きの部分で少し後手になったんですが、最後は基本に戻って自分たちのスクラムをしっかり組もうと決めてからは押せたので、次の試合も自分たちのペースで攻めていきたいと思います。スクラムを安定させて、セットを安定させて、自分の仕事がしっかりできるように準備したいと思います」

□途中出場でディフェンスに貢献 LO 中田 晃司(4年)

「最後まで諦めずに戦った結果がこうなったと思います。入替で入る時は、チームが勢いづくプレーをしようと思っていて、まずはディフェンスから行こうと思って入りました。
ディフェンス面ではいいプレーが出来たと思うんですけど、オフェンスでは1週間の宿題が出来ました。次の早稲田戦もエンジョイして絶対に勝ちたいと思います」

□攻守に粘り強いプレー FL 吉田 光治郎(3年)
全国大学選手権大会・1回戦
「関東学院が想像以上に強くて、自分たちが自信を持っていたブレークダウンで最初の10分に受けてしまったので、そこは次へ向けての課題だと思います。
14人で戦っている場面では、前半は耐えられたんですけど、後半はトライを取られてしまったので、ああいうしんどいところでも、しっかりタックルをしてブレークダウンでプレッシャーかけて、点を取られないように我慢できるようなラグビーをしていきたいです。
ラストは、最後まで諦めず絶対行けると全員が思っていたのでそれが勝因だと思います。早稲田戦は、ブレークダウンがキーだと思うので、最初の10分でがちがち行って勝ちます。」

□厳しいプレッシャーを克服しチームに貢献 SH 滑川 剛人(2年)
全国大学選手権大会・1回戦
「最後まで勝つことを信じて、チームメイトを信じて、勝利することが出来ました。ずっとやってきたことが最後に出来ていい試合だったと思います。
前半自分自身がプレッシャーを受けたんですけど、それを後半乗り越えて一試合で成長することが出来たのが嬉しかったです。
次の早稲田戦では、今日の試合をプラスに考えて、この一週間をもう一度頑張って行きたいと思います。絶対早稲田に負けたくない。絶対に早稲田に勝って日本一になります。」

□後半出場で監督が選ぶゲームMVP SO 徳永 亮(4年)
全国大学選手権大会・1回戦
「MVPは、自分じゃないと思っていたし、今年初めてなので嬉しいです。前半見ている分には、トライを取れるところは取ってゴールも決まっていたので、普通に進んでいるという印象でした。
後半はキックオフから乗れていたので、伊藤の最初のトライに繋がったと思います。その後ディフェンスで甘さが出て、しっかりバインドが出来ていなくて、オフロードで走られたりして、自陣に入った時にボールを出すところで出せなかったのがポイントだったと思います。
最後のシーンは、ロスタイムでも誰も諦めていなかったし、3分あるから大丈夫だと思っていました。それが勝利に繋がったと思います。
自分自身はいい感じで仕上って来ているので、自分のプレーを出来るように心がけています。去年負けたぶん、絶対に早稲田には勝ちたいし、接戦をものにして来た分早稲田といい勝負をする準備ができています。早稲田を倒して、最後に国立で全部員で喜びます」

□反省のゲームと語るも後半取り返した WTB 富永 浩史(3年)
「自分のせいでゲームを崩してしまったと反省しています。もっと冷静にやっていたら大丈夫でしたし、そのせいで後半はあまり思い切ってタックルに行けなくて、それでトライを取られたので反省のゲームでした。
トライを取って挽回したかったんですけどそれが出来なかったので、あとはチェイシングで走って自分が出来ることを精一杯しました。
次は早稲田戦なので、今日の反省点を1週間の中で完璧に修正し、思い切り自分のプレーをします」

□同点トライを含む2トライの活躍 WTB 伊藤 拓巳(2年)
「今日は一時退場とかがあって、チームの雰囲気があまり良くなかった時間帯もあったんですけど、最後まで自分たちを信じてまとまって、諦めずにやることが勝利に繋がりました。
最後のトライは判定になったんですけど、自分ではトライになったと確信がありました。
ここで勝ったことは大きいし、残り3戦しっかり頑張っていきます。次は早稲田ですが、自分の出来る一つひとつの目の前のプレーをしっかりして、1試合1試合勝って優勝します」

□エリアマネジメントをリードした FB 船津 光(4年)
全国大学選手権大会・1回戦
「今日は、前半はいい感じディフェンス出来て、エリアも取れていたんですけど、後半ちょっとタックルが甘くなってしまいました。トライを取ってからの自分のキックミスもあって、本当はあそこで勢いを付けたかったんですが。
早稲田戦は、タックルとエリアマネジメントをしっかりとして、さらに締まった試合をします。」

《NEXT MATCH PREVIEW》
【12月27日(日) 大学選手権2回戦 VS早稲田大学 秩父宮ラグビー場 14時キックオフ】
共に日本一を目指すライバル早稲田大学との対戦が、2回戦で早くも実現した。昨年は2度の対決で1勝1敗。今年の対抗戦では、お互いを知り尽くした中での激しい攻防の末、両チームともノートライの3対6で早稲田に軍配が上がっている。
果たして早稲田を破って念願の大学日本一へ大きな一歩を進めることができるか。国内最高峰のライバルマッチは、12月27日14時にキックオフだ。

(文・上村 智士郎、写真・志賀由佳)