タイトル:Happy Christmas 〜version S.Y.K〜 ――あなたは誰とクリスマスを過ごしたいですか?――
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【type A 観覧車の室内】 「……ったく。 密閉された観覧車の室内に、呆れたようなため息が落ちる。 「大体、観覧車なんてなにが楽しいんだよ。 悟空は眉間に皺を寄せながら、窓の外を眺めていた。 「……密室に二人っきりだからいい、だって? 負けじと言い返してみれば、本気で呆れたように見つめ返された。 「…………」 二人の間に、気まずい沈黙が流れた。 「……ホントにな、そーいうこと顔赤くしながら言うな。 しかし、小さく呟かれた言葉にはっと顔を上げる。 「こっち見んな」 素直ではない彼に、つい笑みがこぼれる。 「手、出せよ」 ふと、唐突に言われて、首を傾げる。 「いいから、手出せ」 少し緊張しながらも手を差し出すと、てのひらにころん、と小さな箱が載せられた。 「なに、驚いてんだ。 嬉しさに、目が熱くなるのがわかった。 「もうすぐ、てっぺんか。 ……それは。 「……プレゼント。もうひとつ、やろうか?」 気づけば彼の腕にとらわれて、耳元で囁かれて。
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【type B 自宅】 「これは、どこに飾る? 靴下……の形してるけど」 クリスマスツリーを知らないという玉龍と共に、飾りつけを始めて小一時間。 「知らなかった。クリスマスって、こんなことするんだね」 色々な飾りつけの入った箱を楽しそうに眺めながら、玉龍が微笑む。 「あ……これは? 他のより大きいし、引っ掛けるとこ、ないけど」 首を傾げて玉龍が取り出したのは、大きな星の形をした飾り。 「……こんな感じで、いい? ちゃんとツリーになってる?」 背伸びして恐る恐るといったように星をつけ終えて。 「よかった。ツリーの飾りつけって、すごく楽しいんだね」 それはきっと、玉龍にとって初めての出来事だから。 「違うよ」 しかし、唐突に否定される。なぜかと首を傾げてみれば。 「あなたと一緒だから、楽しかったんだ。 心から嬉しそうな笑みに、目を奪われる。 「楽しくて、嬉しいこと。教えてくれてありがとう」 御礼を言いたいのはこちらだと、首を振った。 「……あ」 ふと、玉龍が何かに気付いたように目を丸くした。 「そういえば、クリスマスプレゼント。あげなくちゃ。 すっと、手を取られる。突然のことにそのまま固まっていると。 「今日はなんでもしてあげる、ってのじゃ駄目、かな」 ……言われた言葉に、ぴきりと思考も固まる。 「プレゼント……。僕じゃ、駄目?」 真っ直ぐな視線に射抜かれて、囁かれた言葉は。
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【type C いい雰囲気の個室バー】 「メリークリスマス」 低く囁く声色が、バーの個室に響く。 「聖なる夜をあんたと一緒に過ごせるなんて……オレは世界一幸福な男だ」 グラスを差し出しながら、そんな甘い言葉を囁かれて。 もう酔ってしまったのかと、冷めた声で問いかければ。 「ふ……違うさ。あんたの美貌に酔いしれ――」 まだふざけた言葉を続けようとしていたので、思いきり彼の耳を引っ張った。 「いっ、痛いいだい! ごめっ、悪かったってホント!!」 クリスマスデートの夜に、大遅刻という失態をやらかした恋人が慌てふためいて謝る。 「や、違うんだって! 忘れてたわけじゃないぜ!?」 ……視線をそらすと、機嫌をうかがうように覗き込んでくる彼が憎い。 「……だってさ。昨日、緊張してよく眠れなかったんだよ。……今日は特別な日だろ?」 確かに、クリスマスといえば一大イベントだ。 「ちーがうって。あんたと過ごす、初めてのクリスマス」 八戒が少し拗ねたように反駁してくる。 「……あんたにとっても、今日は特別だろ?」 質問を返されて、肩を竦めることを返事とすれば、八戒はしょんぼりと眉尻を下げた。 「待たせてごめんって……。でも、さっき言ってたのホントだから。 ふと顔が近づいて、紫の瞳が甘えるように見上げてくる。 「……な? 機嫌、直してくれよ」 せっかくのクリスマスに喧嘩ばかりしているのもどうかと思う。 「やった。じゃあ、さ。もうちょっと調子乗っていい?」 これ以上なにを調子に乗るつもりなのかと、視線を動かせば。 「聖なる夜には、聖なるキス。……な、させて?」 聖夜にふさわしくない、甘い響きの声色。
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【type D ショッピングモール】 「あ」 クリスマスのイルミネーションが光る、ショッピングモール。 「ね、これ可愛くない?」 彼が手に取ったのは、小さな鈴のついたネックレス。 「しかもこれペアだよ。こっちも鈴だけど、メンズ用にデザインされてるやつ」 蘇芳が示したもうひとつ。そちらも素敵なデザインで、確かに男の人が使っても差し支えなさそうだ。 「ちょっと、じっとしててね」 言葉と共に、蘇芳の指がさらりと首に触れる。 「はは、そんなびっくりしないでよ。合わせてみただけだって」 少し冷たい指が肌にあたって、思わずびくりと身体が跳ねてしまった。 「……うん。やっぱ似合う。これにしようか」 ……? 「ん? 別のがいい? ……ていうか、もしかして自分用に選んでたとは思わなかったとか?」 まさかと思うけど、と添えられそうな声色で聞かれて、ばつが悪い気持ちで頷く。 「彼女差し置いて、他の奴の為に買うわけないだろ? さすがに、まったく気付かなかったわけではない。 「あ、遠慮はなしだよ。今日はクリスマスなんだから、女の子は彼氏に甘えていーの」 優しく微笑まれて、顔が熱くなるのがわかった。 「あー……もう、そんな可愛い反応しないでよ」 困ったように笑う彼の顔が直視できなかった。 「はいはい、暴れないの」 思いがけない衝撃に動揺すれば、くすくすと楽しそうに笑う声。 「じゃ、プレゼント交換。あんたにはこれを贈るから……オレには、あんたをくれる?」 その、甘い囁きに。
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【type E クリスマスツリーの下で】 ――息が、白い。 「あ、こっちですよ。……って、走って来たんですか? そんなに焦らなくても」 こちらに気付いて、すぐさま駆け寄ってくれたのは恋人である悟浄。 どこかに入って待っていて欲しいと連絡してあったけれど、 「いえ、そんなに待っていませんよ。10分くらいですし。 言われて見上げれば、いつの間にか雪が降っていた。 悟浄の後ろには、大きなクリスマスツリー。 「……でも、良かった。何かあったかと心配しました」 優しい声色でそんなことを言ってくれる彼に、申し訳なさを感じて。 「……そうですね。少し、傷ついたかもしれません」 言葉とは裏腹に、穏やかな声音と、珍しく意地悪そうな笑みを向けられる。 「でも。あなたの顔を見た瞬間に、そんなもの吹き飛んでしまいましたよ」 そして次に向けられたのは、ふわりとした優しい笑み。 「わ……っと、危ない。地面が凍っていますから、気をつけて」 すぐに支えてくれる腕は、温かい。 「ええと……あの。 言いよどみながらも、すっと手を差し出される。 「手を、繋ぎませんか?」 嬉しそうで恥ずかしそうな、声。 「あ。でも俺の手じゃ、あなたの手を冷やしてしまいますね」 それでも、そんな風にまた、気遣うようなことを言うから。 「っ、…………温かいですね」 わずかに驚いたあと、悟浄がとろけるように相好を崩す。 「あ、あと。言い忘れていました」 思い出したように悟浄が声を上げる。 「……メリークリスマス」 幸せで仕方がないといった声色で、告げられて。
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Wish we could be together this Christmas. Thinking of you with love! Merry Christmas & Happy New Year!!
END. |
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