LED特集|これを読めば、すべて分かる!「LED電球」完全ガイド :Contents1
これを読めば、すべて分かる!「LED電球」完全ガイド
低消費電力&長寿命だが
「理想の万能電球」ではない
◎CONTENTS♯1「LED電球とは何か!?」
低消費電力&長寿命だが
「理想の万能電球」ではない
白熱電球と比べて圧倒的な省エネ性や長寿命が特長のLED電球は、第四世代(*1)の灯りだ。
その仕組みは、光を発生する半導体(発光ダイオード)を光源としていること。白熱電球や蛍光灯のようにフィラメント(*2)は使っていない。「電球型LED(LED電球)」や「蛍光灯型LED」などが製品化されている。
中でも大きく注目されているのがLED電球だ。理由は参入メーカーの増加による低価格化である。今春までは1万円前後だった普及タイプの平均価格が、今や4000円あたりにまでにダウン。コストパフォーマンスが一気に高まって人気となり、製造メーカー各社は大幅な受注残を抱え、うれしい悲鳴をあげている。
LED電球の四大特長
LED電球の大きな特長は、①省エネ、②長寿命、③即時点灯、④低放射熱――など。
まず①省エネ性能は、白熱電球に比べて圧倒的に高い。例えば60W白熱電球の消費電力は54Wが一般的。これと同タイプのLED電球は7W前後が主流であり、約87%もの消費電力カットを実現している。
②長寿命も大きな魅力だ。フィラメントを使わないため点滅等による劣化や断線がほとんどなく、定格寿命(*3)は約4万時間にも及ぶ。
これは白熱電球(約1000時間)の40倍。電球型蛍光灯(約1万3000時間)の3倍以上だ。オフィスで毎日10時間点灯しても10年以上、交換不要な計算である。高所や狭所など、ランプ交換が面倒な場所の照明としても最適だろう。
③即時点灯は、電源スイッチをオンにした直後に最大の明るさが得られること。しかも、この能力を低温時でも発揮でき、寒冷地などでも最適である(蛍光灯の点灯時のタイムラグは、低温時に一段と広がる)。
そして④低放射熱とは、赤外線が少なく電球のランプ部分が熱くなりにくいことである。白熱電球や電球型蛍光灯は使用中にランプ部分が高温となる。LED電球も発熱はするが、その熱を胴体部分に逃がす構造となっている(そのため胴体部分は60度ぐらいまで上昇する)。
白熱電球の場合、設置数が多いと室内温度の上昇要因になり、空調の電気代を高める可能性があるが、LED電球では、こうした心配はほとんど不要といえる。
他にも「水銀不使用で環境にやさしい」「紫外線をほとんど含まず虫が寄りつかない」など、LED電球には多くのメリットがある。
LEDと蛍光灯の比較
ここまでLED電球の特長を見てきたが、では現状のLED電球が「灯りの理想型」かといえば、それには残念ながら首を横に振らざるを得ない。現状で白熱電球、電球型蛍光灯、LED電球の3タイプを商品化しているパナソニックや東芝、三菱などの大手メーカーは、異口同音に「現段階ではLEDと蛍光灯とを、特性に応じて使い分けることがベスト」と話している。
例えば前述した低消費電力だが、これは白熱電球と比較した場合のメリット。表一で明らかなように、LED電球の平均寿命である4万時間まで点灯した場合、電気代はLED電球の6000円強に対して、白熱電球は4万7000円以上。その差は歴然である。白熱電球を使い続けることの合理的な理由は皆無といえるだろう。
しかし、電球型蛍光灯との比較では、差額は2700円ほどでしかない。4万時間とは、1日10時間365日使っても11年近くかかる計算だ。それだけ使っての2700円をどう考えるかであろう。
LED電球はまだ発展の余地が大きく残っており、今後の新製品の消費電力が、さらにダウンする可能性は高い。しかし、現段階では電球型蛍光灯とのランニングコスト差は大きくはない。省エネ性だけを目的に、電球型蛍光灯を高価なLED電球へ置き換えることは、必ずしも合理的とはいえないのである。
そこで注目すべきが「使い分け」だ。LED電球と電球型蛍光灯は同じW数タイプであっても、その特性が大きく異なる。そのことを念頭に適材適所で使用することが、十分な明るさと低電気代とを両立させる一番のポイントである。
LED電球の発光特性
LED電球が、他の電球と大きく異なる部分は「発光特性」だ。写真は白熱電球とLED電球の発光特性を比較したもの。左の白熱電球は、電球を中心にその周囲を均等に回り込むように発光している。電球型蛍光灯の特性も同様で、部屋全体を明るくする用途などに適している。
60Wクラスの白熱電球(左)とLED電球の「発光特性」の違い
(写真:NECライティング)
これに対してLED電球は、光が直下に集中し電球の横や後ろの発光は非常に弱い。この特性はLED電球の課題でもあり、近い将来、改善される可能性が高い。
だが、現状ではこれに合った使い方が望ましいわけであり、ダウンライトやスポットライトなど、ある部分を照射する器具での使用が最も効果的である。
天井も含めて部屋の隅々までを明るくしたい場合には、現状では電球型蛍光灯が最適だ。同環境で同じ明るさをLED電球に求めるには、設置個数を増やしたり、照射方向を変えるなどの工夫が必要だろう。
一方で、LED電球には4万時間という長寿命性がある。この特性は、高所や狭所など電球交換が容易ではない場所に最適だ。また屋外灯など、電球の交換作業回数を減らしたい場合にも有効である。屋外での使用には、LED電球の特性である低紫外線効果により、虫が寄りつかないというメリットもある。
さらに低紫外線がもたらすメリットとして、商品などを照らした場合に劣化(いわゆる照明焼け)させにくいことがあげられる。洋服や人形などを長期間ショーウィンドーなどで飾る際には最適であろう。
ただし、色の見え方に大きく影響する演色性は、電球型蛍光灯の方が高く、LED電球はメーカーによって低いものがある。料理など色の見せ方にこだわりを持つものへの照射は、蛍光灯が望ましいといえる。
また、最近は直管型蛍光灯に置き換わるLEDランプも発売されているが、こちらも留意すべき点が少なくない。既存で設置されている直管型蛍光灯器具の大半が、LEDランプ装着を想定した設計になっていないからである。
しかも、前述した発光特性の違いから、部屋全体を照らす蛍光灯と同様の明るさを得るためには、器具の増設などが必要になる場合もある。現段階では「直管型蛍光灯のLEDへの置き換えは慎重な検討が大切」というメーカー関係者が多い。
(*1)第一世代・ロウソク/第二世代・電球/第三世代・蛍光灯
(*2)白熱電球や蛍光灯の心線(発光体)のこと
(*3)全光束(光源から放出されたすべての光量)が初期の70%、または光度(光源の明るさ)が初期の70%に低下するまでの時間。設計寿命のことで、各製品の寿命を保証するものではない
■表1 電球タイプ別のコスト比較
※1)各電球の単価はLEDが4000円、蛍光灯が1000円、白熱電球が100円と仮定。
※2)電気代の計算式は(財)省エネルギーセンター資料を流用「消費電力÷1000×4万時間×22円/kWh」