空中キャンプ

2009-12-24

ちょうどいい価格帯

電器店で困るのは、ちょうどいい価格帯の商品がないときだ。たとえば、目覚まし時計を買いにいくと、まず目につくのは、650円とか、980円のちいさな目覚ましである。安いことは安いが、これらは見るからに壊れやすそうで、寝起きのぼんやりした状態で目覚まし音を止めたりしたら、そのままばらばらになってしまいそうな不安がある。もうすこしがっしりして、あるていど重量もあって、ボタンの作りもきちんとしたものがいい。お金だって、もうすこしなら払ってもいいとおもっている。

しかし、その上の価格帯が、なぜか3,900円とか、4,500円といった微妙に手の届きにくい設定になっているのだ。いっぺんに二段階も上がってしまう。たしかに、4,500円の目覚ましはいかにも頑丈そうだし、日付や曜日が表示できる液晶画面がついていたり、大音量が複数回にわたって鳴るようなしくみもついている。でもそれいらないし、目覚ましで4,500円はきびしい。その値段が迷いなくすっと払えるようになれば、わたしもりっぱな大人なのだろうが、さすがに躊躇してしまう。

目覚ましで4,500円なら、Yシャツには12,000円払わなくてはいけないし、加湿器には28,000円ださないといけなくなる。そのランクの生活はまだずいぶん先のことである。わたしが欲しい目覚ましは、1,980円の、毎朝じりじり鳴ってくれる元気のいいやつだ。これは、鼻毛カッターにも同じことがいえる。わたしは友人に、鼻毛カッターの便利さを説かれ、試しに使ってみようとおもった。平均的な値段のことはよくわからないが、わたしの感覚では、4,000円くらいはするのではないかおもった。わたしにとって、鼻毛カッターの妥当な値段は4,000円だ。

ところが電器店にいってみると、1,500円のやつと、8,000円のやつしかないのである。まただ。予想価格の半分以下のもの、そして倍のもの。中間はないのか。そのあいだの、4,000円くらいのやつはないのか。わたしは、鼻毛カッターの相場がまったくわからなくなり、さすがに8,000円はだせないから、1,500円の方を買うしかないのだが、これがまたえらく簡易な作りで、ほんとうにわたしの鼻毛を除去してくれるのかと心配になるような頼りなさなのだ。

値段からいっても、もちろん充電などできないので、電池を入れて作動させるしくみになっている。この鼻毛カッターを鼻に押し入れるのだが、ときおり微妙に痛かったりして、このまま鼻の内部をカッターの刃がするどく抉ってしまったらどうしようという恐怖に耐えながら、鼻毛処理をおこなうことになる。やっぱりけがはいやだし、なんだか落ち着かない。もうちょっとしっかりしたものがよかった。

なにより、電器店でそうした価格帯ごとの機能をいちいち検討したり、迷ったり、いくらなら払えるかを考えたりするのがめんどうなのだ。ふつうに「ちょうどいい値段のやつ」を売ってくれないだろうか。また、iPod などを買うと、レジのお姉さんがふいうちで、「○○円の保険をかけると、バッテリー交換、修理等が無料です」などと、瞬時には判断がむずかしい種類のオファーをしてくるので、またあれこれと悩まなくてはならず、電器店はなにしろたいへんなのだ。