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きょうの社説 2009年12月25日
◎首相の元秘書起訴 「監督責任」重視の仕組みに
鳩山由紀夫首相の資金管理団体をめぐる偽装献金事件で、元秘書2人が立件され、首相
が事情聴取もないまま不起訴になるのは、やはり納得がいかない。「知らなかった」で押し通せば監督責任が免れるという前例をつくったことや、5万円以下は匿名が認められる仕組みを悪用し、法の抜け穴を広くするような結果を招いたことは極めて重大な問題であり、首相の政治責任は免れない。公明党は、政治団体の会計責任者が収支報告書への虚偽記載など違法行為をした場合に 、議員本人の公民権を停止するという罰則強化を打ち出した。現行法でも会計責任者の「選任及び監督」の責任を問うことは可能だが、条項の「相当の注意を怠ったとき」を立証するのは極めて困難とされる。 小沢一郎幹事長の元秘書の公判も絡み、民主党はこの点について消極的に見えるが、政 治への信頼を取り戻すには「知らなかった」では済まされないような抑止力が求められる。今回の教訓を生かすなら、議員の監督責任をより重視した改正が必要ではないか。 首相は一連の刑事処分を受けた会見で謝罪したうえで引責辞任を否定した。政権発足時 から低下したとはいえ、まだ高い支持率に支えられているとの強気の認識があるのだろう。だが、「恵まれた家庭に育ったから」といった説明や母親からの巨額資金提供の事実は、親の丸抱えで政治活動を行っている頼りなさを印象づけ、常識はずれの金銭感覚は国民の気持ちがどこまで分かるのかという不信感を与えた。米軍普天間基地問題など別の懸案で対応を誤れば、支持率は一気に危険水域に近づくだろう。 民主党は政権公約で「企業・団体献金の3年後の全面禁止」「個人献金普及のための税 制改革」を掲げた。党代表と幹事長が疑惑にまみれて果たして改革ができるのか。「政治とカネ」の問題に取り組むに値する党なのか厳しく問われていることを認識する必要がある。 年明けの通常国会は自民党の追及が必至だが、予算を審議する大事な場がこの問題で混 乱し、政治が停滞することは許されない。首相の政権運営はまさに、いばらの道へ踏み出したといえる。
◎北陸新幹線延伸 後退でも薄日差した思い
政府が、来年度予算案に計上する北陸など整備新幹線の建設費の一部を、未着工区間に
も配分できるようにする方向で調整に入ったのは、金沢以西への延伸を望んでいる北陸にとっては朗報と言えよう。未着工区間の扱いは、これから国土交通省が中心となって検討し、来年夏ごろまでに結論を出すという。昨年のこの時期に自公政権が決めた方針と比べれば後退だが、雲間から薄日が差したという思いでいる沿線関係者は少なくないだろう。未着工区間について、前原誠司国交相は就任早々から、自公政権の決定にとらわれない と宣言、今も「あくまでも白紙」という姿勢を堅持している。その一方で、来年度予算案に新規着工への布石を盛り込もうとしているのは、来年夏の参院選対策を重視する民主党の小沢一郎幹事長が過日、党の重点要望の一つとして、新幹線の整備促進に必要な予算措置を申し入れたことに対する配慮という意味合いもあるに違いない。 思えば、自公政権も今年度予算に未着工区間の「着工調整費」を計上して、今年夏の衆 院選に臨んだ。その結果、全国的には惨敗を喫して政権交代を許したにもかかわらず、福井県の3選挙区では全勝を果たした。仮に、小沢氏らがこの「先例」にならい、参院選対策の一環として新幹線を後押ししているのだとしても、それを全否定するつもりはない。 ただ、参院選までは新規着工をにおわせて、終わった途端に手のひらを返されるのは困 る。沿線関係者に期待を持たせた以上は、諸条件をしっかり精査し、責任を持って結論を示してほしい。 もちろん、どんな狙いがあるにしても、沿線関係者のすべきことは何も変わらない。今 後の議論の対象となる未着工区間は、北陸と北海道、九州・長崎ルートの3区間。国交省政務三役が決めた「当面の整備方針」では、これらに優先順位を付けることを検討するとしている。北陸には、新幹線対応の福井駅が既に完成しているという強みがある。3県が協力して優位性を訴え、優先順位1位を目指したい。
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