人に感染すると6割近くという高い致死率を示す高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)について、人の間で感染しやすい特徴を持つ種類があるらしいことがわかった。H5N1の感染は、現状ではウイルスを持つ鳥と濃厚に接触した人などに限られているが、人から人に感染しやすくなれば、世界的な大流行(パンデミック)を起こす恐れがある。日本と中国の研究者が24日、米専門誌(電子版)に発表する。
研究は、東京大医科学研究所の河岡義裕教授や中国農業科学院ハルビン獣医研究所のホアラン・チャン教授らが、日本の「感染症研究国際ネットワーク推進プログラム」の一環として実施した。
どんな特徴があると、ウイルスが人から人に効率よく感染するかを見極めるため、2001〜05年に中国の野鳥や鶏から見つかった6種類のH5N1を、モルモットで調べた。
モルモットは、インフルウイルスがまず最初に感染する、鼻やのどの細胞のウイルスとくっつく部位(受容体)が人と似ている。6種類のうち、2種類だけが、モルモット同士で感染を起こした。この2種類を調べたところ、ウイルス表面にあるたんぱく質(HA)に特徴があった。
HAは受容体にくっつくために欠かせないが、一部のアミノ酸に変異があり、人型の受容体にくっつきやすいことがわかった。研究チームが遺伝子技術を使ってこの変異を元に戻すと、受容体にくっつかなくなり、変異がないと感染しにくいこともうかがわせた。
研究チームの河岡さんは「人に感染しやすくなる特徴は複数考えられ、今回見つかったのはその一つ。今回の変異があるウイルスはすでに野鳥や鶏の間で感染しているので、人に感染しないかどうか、注意して観察する必要がある」と話す。(大岩ゆり)