【社会】児童ポルノ深刻化 愛知県警摘発、全国最多2009年12月24日 09時08分 18歳未満の子どものわいせつ画像をインターネット上で公開する児童ポルノ事件の摘発が全国で増え続けている。愛知県警は1〜11月、児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で全国最多の98人を摘発。その事例からは、未成年者がサイトを開設するなど深刻な実態が浮かび上がる。捜査を強化する一方で画像の流出は止まらず、供給源の特定や被害者の救済が課題となっている。 「アダルト系の掲示板なら投稿者が増え、広告収入で小遣い稼ぎができると思った」。今年2月、わいせつ画像の投稿掲示板をネットで開設したとして、書類送検された岐阜市の高校2年男子生徒は調べに、そう供述した。 この掲示板には、福島県の中3男子生徒がわいせつ画像を投稿した。男子生徒は「裸の女の子の画像を自分が持っていることを自慢したかった」と供述。ゆがんだ顕示欲と、それを小遣い目的で商売にする児童ポルノ犯罪の病理は未成年にまでまん延している。 愛知県警が今年摘発した掲示板の開設者は高校生や会社員ら3人で、住居地は岐阜市、東京都、宮崎県。その掲示板に画像を投稿して摘発された10〜50代の15人は青森から沖縄まで15都府県で、ネット犯罪特有の広域性もうかがえる。 同県警では、ネット上の有害情報を探して摘発する「サイバーパトロール」の手法が各警察署に浸透。不特定多数のパソコン内の情報を交換でき、画像の流出を助長する「ファイル共有ソフト」の対策も少年課が5月から始め、全国最多の摘発に結び付いた。 だが、98人の摘発のうち、画像の投稿や掲示板開設が85人と大半を占めるのに対し、子どもを撮影して画像をつくりだした摘発はわずか2人。ネット上で転載を繰り返す画像の「製造元」をたどるのは困難だ。 被害者の心の傷は深刻だ。「あの写真がある限り、絶対に結婚も子どもを産むこともできない」。日本ユニセフ協会のホームページでは、幼少期に親族に無理やりわいせつ画像を撮られた女性が、大人になっても苦しむ声を紹介している。 少年課は今後、製造元の摘発を目指すとともに、被害者の保護や立ち直りの支援に力を入れていく方針だ。 ◆全国623人摘発(1〜11月)過去最多 愛知県警によると、1〜11月の全国の児童ポルノ摘発人数・件数(暫定値)は623人、873件。過去最多の昨年(412人、676件)を既に上回った。摘発人数は愛知県警の98人に続き、神奈川県警81人、警視庁48人、大阪府警38人の順。三重県警は14人、岐阜県警は7人。 警察庁は6月、取り締まり、画像の流通防止対策、被害児童支援を三本柱とする児童ポルノ根絶プログラムを策定。政府も今月22日、犯罪対策閣僚会議を開き、児童ポルノ排除の総合対策を検討・推進するワーキングチームを設置すると決めた。 提供を目的とせず、子どものわいせつ画像を個人的に持つ「単純所持」は児童ポルノ禁止法で規制しておらず、国際的な批判が強い。衆院解散前の通常国会で与野党が処罰化に向けた同禁止法改正案を出し合って協議したが、廃案になっている。 (中日新聞)
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