希少価値の高い金属、いわゆる「レアメタル」、この貴重な資源をめぐって、中国などとの争奪戦がヒートアップしつつあります。
福島県の金属精錬工場。ここでは、あるレアメタルの取り出し作業が行われています。元になるのは家電などから取り出した充電用電池。果たして、何が取り出されるのでしょうか。
充電用電池をおよそ1000度の炉の中に投入し、不純物を蒸発させます。そして、2時間後。出てきたのは真っ黒い固まり。この中には、ニッケルが含まれています。ステンレスや硬い合金を作るのに使う代表的なレアメタルの1種です。
(取扱量は増えている?)
「増えています。まだまだ拡大する事業と考えている」(東邦亜鉛 佐藤義和課長)
レアメタルの回収に自治体も乗りだしました。数多くのレアメタルが使われている携帯電話やデジタルカメラ。こうした小型家電は、リサイクルの仕組みができているテレビなどと違い、多くの人が使わなくなっても家に置いたり、燃えないゴミとして処理しています。八王子市ではモデル事業として、これらの再資源化を始めました。
「家庭に眠っているレアメタルを資源化することで、資源を大切に使っていこうと」(八王子市環境部 山口清隆課長)
携帯を振りながら踊る、奇妙なキャンペーン。
「希少なレアメタルなど、金属をなんとか確保したい」(経済産業省 高橋千秋政務官)
国も先月から、使用済み携帯電話の回収を呼びかけています。政府がレアメタルに注目する背景には、一体何があるのでしょうか。急速に開発が進む電気自動車や太陽電池。レアメタルは、こうした最先端の製品に数多く使われてるため、需要が急拡大し、価格も上昇しているのです。
「レアメタルをめぐり、世界的な資源の争奪戦が始まりつつある」(丸紅経済研究所 柴田明夫所長)
なかでも、レアメタルの一大産地である中国が「使う側」に回ったことが大きいといいます。
「(レアメタルは)今までは中国が作り、日本が消費する構図。中国自体が急速な成長をして、先端部門で市場が広がり、(レアメタルの)輸出規制を行っている。輸出関税を高くしたり、輸出を許可制にしたり。将来的には輸出禁止も有り得る」(丸紅経済研究所 柴田明夫所長)
獲得競争のヒートアップをうけて、国がレアメタルを備蓄している施設では、ことしの夏から、これまで7種類だった備蓄対象を9種類に増やしました。
今後の課題は、家電などの回収システムをいかに整備するか。まとまった量が集まらないと採算がとれず、結局、回収自体をあきらめざるを得ない可能性もあるのです。
「効率よく集められれば、ビジネスとしても成り立つ」(日本リユース機構 佐野剛介氏)
世界的な争奪戦に突入したレアメタル。国内に眠る資源をいかに確保できるかが問われています。(23日17:10)