採用するから株を買って――。ハローワークに紹介された業者から採用面接で出資を求められたという苦情が11月下旬、大阪のハローワークに相次いで寄せられた。面接した求職者は「仕事がほしいという弱みにつけこんだ詐欺ではないか」と憤る。(浅倉拓也)
ハローワーク梅田によると、問題になったのは、大阪市都島区の建築関係の業者。ハローワークには「近く法人化する」などと説明し、10月下旬から、とび職、事務、軽作業などで計24人を募集していたという。応募した5人から同様の苦情が寄せられた。
求人票を見て面接に行った男性によると、マンションの一室にスーツ姿とスエットパンツ姿の男性2人がおり、仕事内容を簡単に説明された後、「持ち株制度というのがあって」と切り出された。1株500円の株を5万円分ほど買うよう迫られた。
男性は「今は金がない」と断ったが、相手は「3千円でも」などと金額を下げながら食い下がった。男性は根負けし、千円を払い、領収書を受け取ったという。
業者からはその後、12月10日の採用を延期するという連絡があり、千円を書留で送り返すと言われたが、いまだに届いていないという。
「おかしいとは思ったが、正社員にすると言われたので……」。男性は今年、派遣切りにあい、工場での仕事を失った。ハローワークを通じて約40社に応募したが、就職が決まらない。「早く仕事をしたかった。弱みにつけ込まれたようで許せない」と言う。
同様の相談はほかに4件あり、ハローワーク梅田は、出資などを採用の条件にすることは公正な採用選考に反するとして、業者に対し、出資を持ちかけないよう指導。業者はその後の12月10日、求人そのものを取り下げたという。
求人票に記載された業者の携帯電話は22日、つながらない状態が続いていた。