2009年  12/10  兵庫県新温泉町で起きたクマと人との事故の真相 
神戸新聞 - ?2009年12月10日?
新温泉町の山林  クマに襲われ県職員が重傷  保護作業中

 10日午後2時ごろ、兵庫県新温泉町用土、五十鈴神社東側の山林で、イノシシ狩猟用のワナにかかったツキノワグマの保護作業をしていた県森林動物研究センター(丹波市青垣町)の男性職員(47)が、このクマに左腕の数カ所をかまれた。男性は重傷。クマは射殺された。 ...
 同センターなどによると、同日朝、ワナにかかったクマを見つけた住民が新温泉長に通報。駆けつけた同センター職員らが、麻酔銃でクマを眠らせて山に返す作業に取り掛かったところ、ワナをくくりつけた木が倒れ、自由になったクマが男性職員にかみついたという。
 クマは体重100キロの成獣。現場は周辺に田んぼが広がるやまのふもとで、南約1キロには集落がある。
上の記事は、大変ショックキングな報道であった。こんなことはありえないと思い、記事に疑問を持ったため、実際はどうだったのか現場におられた方などに、会って聞き取りをした。

<聞き取り結果>

 現地はかなりの急斜面だったそう。
 県森林動物研究センターの職員3名、豊岡農林事務所の職員1名、鳥獣保護員(=ハンター)が現地に行き、イノシシ用くくりわなへのクマの錯誤捕獲であることが分かったため、坂の下から20メートルぐらいまで近づいて、麻酔銃を放ったという。最近の麻酔銃は、吹き矢と変わらないソフトさで、クマにダメージはないという。30メートルぐらい離れていても使えるというから、技術革新はすごい。吹き矢だと7メートルぐらいまで近づかないと、使えない。
 クマの体重30キロに対して、麻酔薬の入った注射器がふつう、1本必要。今回は100キロぐらいだったので、3本麻酔を打ち込み、わなを外して放獣する予定だったという。しかし、1本がわき腹に命中した時点で、クマがわなをかけてあった木を根ごと引っこ抜き、木に腕をつながれたまま、斜面を転がり落ちてきたとのこと。ちょうど転がり落ちたところに、人間がいたので、恐怖のあまりかみついたのだろう。鳥獣保護員(=ハンター)に、その場で射殺された。
 たとえまだ1本であっても、麻酔銃が命中しているのであれば、クマはそんなに力が出ないはずだと思われるが、冬眠前のクマは、脂肪層が厚くなっており、麻酔銃の針の先が、きちんと届いていなかったのかもしれないとのこと。

 職員は腕と足をかまれた。重傷というほどのことでもなかったが、軽傷でもないので、重傷にして救急車を呼んだ。それを、新聞記者が察知したのだろうとのこと。

 イノシシ捕獲用のくくりわなに間違ってかかるクマがあとを絶たないとのことだ。環境省は、クマ生息地でのくくりわなの禁止を求める私たちに、くくりわなの直径を12センチ以下にすることで解決できるといった。しかし、実際は、絶滅寸前のクマがどんどんかかっている。 
 →やはり、私たちが主張するように、クマ生息地でのくくりワナを禁止するしか、クマの絶滅は止められない。再度、環境省に申し出たい。


 ハンターとしては、わなの直径が12センチではイノシシがかかりにくいため、和歌山県や淡路島などのように、12センチ規制を返上しているところもある。
 今回の場合、クマの腕ではなく、手のひらにくくりわなのワイヤーがかかっていたということだから、直径12センチ以下は守られていたのかもしれないが、直径が15センチぐらいだったかもしれない。監視人がいないのだから、いったんかかってしまったわなの直径が何センチだったか、今となってはわからない。
 
 わなをかけた人は、クマが暴れたら根こそぎ抜けてしまうような木にわなをかけたことを、反省してもらわねばならない。そのせいで、県の職員はケガを負ったし、クマは射殺されるはめになったのだ。
 
 クマは、腕が自由にならない状態であったため、人間に対して、噛むことでしか対抗できなかったわけだ。一応話を聞いて納得できたが、それにしても、新聞記事の書き方には問題が残る。
 →自分を保護しようと来てくれた人間に噛み付いて重傷を負わせるなんて、クマはなんという動物なのかと、人々のクマへの反感を抱かせる記事になっていることについて、記者さんに反省を促したい。

 これで今年、兵庫県で殺されたクマは2頭となった。山の実りの豊作年で、クマ目撃数も激減していたので、貴重な遺伝子を守るため今年は捕殺ゼロを願っていたのに、残念な結果となった。

 ケガをされた県の職員の方には、本当に申し訳ない思いでいっぱいです。1日も早い回復をお祈りします。