習近平氏来日 日中外交の難しさ浮き彫りに
中国の習近平国家副主席の日本訪問は、天皇陛下と習氏との会見を巡る日中両国政府の不手際によって、日本国民の対中感情にしこりを残す形になった。
中国の「次代のリーダー」と目される習氏の来日が、今後の日中関係の展望を切り開く契機にならなかったことは残念だ。
鳩山首相と習氏の会談では、日中の戦略的互恵関係を推進していくことで一致した。首相が、日中間の懸案である東シナ海のガス田共同開発を前進させることや、中国の軍事力の透明性を高めるよう求めたのは当然である。
習氏は台湾問題の重要性とともに、チベット、ウイグルの少数民族問題が「中国の核心的利益」であると指摘、日本側にくぎを刺すのを忘れなかった。
だが、少数民族問題ではまず、中国側が弾圧行為をやめ、対話を通じて、人権状況を改善することが先決ではないか。
習氏は、習仲勲・元副首相を父とする高級幹部の子弟だ。一昨年秋、2階級特進で、党中央政治局常務委員(9人で構成)に抜てきされ、昨春には国家副主席に選出された。
昨夏の北京五輪では運営の責任者を務めるなど、次期国家主席の最有力候補と見られている。
首相官邸が天皇陛下との会見を特例として実現したり、首相主催の夕食会を開いたりして国家元首級の扱いをしたのも、習氏の立場を重視したためだろう。
中国側も天皇陛下との会見実現を強く求めた。胡錦濤国家主席が副主席だった98年に来日した際に、天皇陛下と会見していたこともあり、習氏に同等の待遇を求めたものと見られる。
中国側は、天皇と会見することが、指導者としての権威付けになると考えたのだろう。
ただ、中国では、引退後も影響力のある江沢民前国家主席を後ろ盾とする習氏と、胡主席が支持する李克強副首相との後継争いはまだ決着していない。
習氏に代表される勢力と、李氏を推す勢力の綱引きが、当面続くと見られている。
92年の天皇陛下の訪中は、天安門事件による国際的孤立からの脱却に効果があった、と中国側は評価している。天皇外遊の政治的側面を示すものだ。
日中関係の重要性からも、今回のようなトラブルはあってはならない。天皇の会見など公的行為にかかわる問題には、日中双方に慎重な対応が求められよう。
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