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きょうの社説 2009年12月21日
◎町家再生で連携組織 不動産市場への流通促したい
町家の再生、活用へ向け、金沢市が新たな連携組織を発足させるほか、庁内体制も見直
す方針を打ち出した。国の「歴史都市」認定や市街地の「重要文化的景観」選定、ユネスコの「創造都市」登録など金沢の都市としての評価が高まるなかで、歴史的な景観価値を面的に高めるために町家再生をより重視していくのは当然の流れである。町家は文化財を保護するような取り組みから、店舗や住まいなど不動産としての価値が 見直され、ビジネスの芽も育ってきた。物件が不動産市場に流通してこそ町家の価値も磨かれるだろう。市がつくる新組織は専門家による金澤町家活性化推進協議会を発展させ、不動産、金融業界との連携も視野に入れているが、町家再生という目標を官民が共有し、効果的な流通ネットーワークを構築したい。 町家再生は今月初旬の金沢創造都市会議でも大きなテーマとなり、研究者からは「毎年 300軒ずつ減り、歴史都市の体力が衰えている」との指摘があった。借り手を仲介する組織や、改装する職人の養成、行政の資金援助などの課題が出されたが、金沢ふうのまちづくりを進めるためにはいずれも欠かせぬ視点である。 市の昨年度の実態調査では、市内には1950年以前に建てられた町家が約6700軒 ある。これらの減少に歯止めをかけるには行政の力だけでは限界がある。物件を扱う宅建会社、融資する金融機関なども立場の違いを超え、町家再生の輪に加わる必要がある。 町家の活用では、市が貸し工房を整備し、若手作家の独立を後押しする「職人工房」の 取り組みが動き出した。町家を創作の場にすることは大事な方向性であり、感性豊かな芸術家や若者の視点で新たな価値を引き出すことも期待できよう。外国人が住まいとしての魅力を見いだし、町家暮らしを積極的に発信しているのも心強い動きである。企業のショールームや大学の教室、レンタルハウスなど多様な展開がもっとあっていい。 町家再生は新たな都市文化を創出する側面もあり、金沢の「創造都市」としての評価に もつながる、やりがいのある挑戦といえる。
◎地域主権改革 まず予算面で方向付けを
政府の地域主権戦略会議が始動し、権限移譲の具体策などを盛り込んだ「地域主権戦略
大綱」を来年夏に策定するほか、使途が決められた「ひも付き補助金」の廃止と一括交付金化を2011年度から段階的に実施するなどの工程表案が示された。会議の初会合では、メンバーの知事から工程表の実施期間短縮など改革のスピードアップを求める声が挙がったが、これまでの鳩山政権の取り組みをみれば、絵に描いた通り改革が進むのか、懸念が募るのも無理はないだろう。来年度予算の概算要求では、総務省が金額を明示しない「事項要求」ながら地方交付税 の増額を要求し、原口一博総務相はその額を1・1兆円と表明している。一方、民主党は重点要望のなかで1兆円規模の新交付金の創設を求めた。この制度が地方財源の強化につながるのか政府内では解釈が分かれているが、地方が自由に使えるお金を増やすことは地域主権改革の本筋である。来年以降の工程表実現に弾みをつけるためにも、まず予算のなかで改革の方向性を明確に打ち出してほしい。 地域主権戦略の工程表案には、地方自治法を抜本改正して「地方政府基本法」を制定す ることや、都道府県から市町村への権限移譲、出先機関改革なども盛り込まれた。2013年夏まで2段階に分けた手順が示されている。 会議の初会合では、国が法令で自治体の仕事を縛る「義務付け・枠付け」見直しを盛り 込んだ地方分権改革推進計画案も示された。「義務付け」問題は鳩山政権が改革を進める試金石とされたが、実際には地方側が求めた104項目のうち、分権推進委の勧告通り見直すのは36項目にとどまった。省庁の抵抗に加え、個別分野から手をつけることの難しさも示しており、今後は全体の改革のなかで解決していくしかないだろう。 地方交付税の配分額は今年度が15・8兆円で、小泉政権下の三位一体改革で大幅減額 されたため、改革前の03年度より2・2兆円少ない。財務省は依然として慎重な姿勢だが、増額を実現することが地域主権改革の第一歩である。
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