この「西遊記」は、中国だけでなく、世界各国で映像化されています。ハリウッドで映画化された「西遊記」のタイトルは、「Monkey King」。監督は「ランボー3・怒りのアフガン」や「ネバーエンディングストーリー3」で知られるピーター・マクドナルド。現代の中国研究者が孫悟空や猪八戒らとともに、時空を越えて、「西遊記」の作者、呉承恩を妖怪の手から救い出す、というSFX超大作に仕上がっています。 韓国でも1990年、KBSにおいてテレビアニメ化されています。このときの最高視聴率は48%。子どもなら誰でも見ていたほどの一大ブームを巻き起こしました。さらにイギリスでも「西遊記」は大人気。日本で1978年に堺正章、夏目雅子、西田敏行、岸辺シロー出演で作られたドラマがBBCで放送され、以来、あまりの人気から何度も再放送されているほど。ちなみにこのイギリス版では、孫悟空はモンキー、猪八戒はピグシー、沙悟浄はサンディ、三蔵法師はトリピタカと、イギリス人にも親しみやすい名前に変えられているのです。 そして日本。まずは1940年、喜劇王・榎本健一が主役を務めた、映画「エノケンの孫悟空」。この作品はエノケンが歌い踊る、オペレッタ形式で、戦時下とは思えない、徹底した娯楽作品となっています。更に1960年にはあの手塚治虫によってアニメ化もされています。日本アニメーションの原点のひとつとして、いまも高く評価されているこの作品は、 世界数10カ国に輸出され、「西遊記」がアジア以外の世界各国に広く知られるきっかけともなりました。 しかし、そんな中で「西遊記」が全く知られていない地域があります。それが中東。というのもイスラム教にとってブタは不浄の動物。そんな動物…猪八戒が活躍するストーリー、ということ自体、ありえないのです。そして、原作に忠実というわけではありませんが、孫悟空の名を世界中に知らしめた作品といえば、「ドラゴンボール」。なかでも最初のシリーズには、「西遊記」からのエピソードがふんだんに取り入れられていました。この「ドラゴンボール」は原作コミックが世界で3億部以上売られ、アニメも40カ国以上で放送されているのです。