2009年12月19日0時4分
本格的な政権交代ということで今はすべてを見直し、新たな始め方をする機会である。しかし、それは何を最も大切にするか、なぜそうかを明確にしてこそ意味がある。
特に今は昨年秋以降の世界同時不況の中で、これまでの経済を牽引(けんいん)してきた市場絶対主義、また利益を最優先して働く人々をその手段とし、コストと割り切り過ぎるアングロサクソン型の経営のひずみがあらわになっている。一方この10年の間に欧州では北欧諸国の福祉と経済の両立に向けての努力が成果をあげてきた。アングロサクソン型経済からの脱却に当たっては、単に北欧型をまねすれば良いわけではない。これを変革のインパクトにしつつも日本としてのアイデンティティーを生かし、日本にとって本当に望ましい経済運営を生み出す必要がある。
そのために政治が果たす役割は大きい。なぜなら政治の本来の働きは、資源の再配分の物差しとなる国民の価値観を預かり、それをより本来化することにあると思うからである。その意味で新しい国づくりのビジョンと、なぜそれを選ぶのかの定見を立て、国民に共感を得、確かなメッセージを早めに送る必要がある。それによって国民としても必要な負担はあえて背負う気持ちになることで始めてバランスはとれる。
地球環境保全のためにCO2の排出を1990年比で25%削減するという宣言も、それが日本が歴史的に積み上げてきたアイデンティティーとどうつながっているかを明確にし、その実現を国づくりの柱とする、というのであれば納得がゆく。これに地球や大自然への恩恵の自覚を軸とした教育改革が加われば、まさに今という時にふさわしい変革が可能となろう。(瞬)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。