静岡空港需要予測問題点整理集
2004.11.25UP 2005.4.3更新
静岡空港はついに強制収用の過程(事業認定申請)に突入した。石川知事はその直前に自民党県議の議員総会や推進団体との席上で、「(国交省)航空局は腹をくくってくれたが、審議会事務局の総合政策局の説得も必要」「審議会のメンバーの中には静岡空港に冷淡な人間がおり、説得しなければならない」などと社会資本整備審議会などへの根回しの事実を明らかにしたが、第一義的に静岡空港の是非を判断することになる重責を担うこととなるのが、(国土交通省の事業認定を左右する)社会資本整備審議会なのである。その歴史的役割を担うこととなる委員は以下のとおりである。
社会資本整備審議会公共用地分科会委員
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氏名(敬称略、50音順)
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現役職
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公的役職等履歴
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いそべ ちから
磯部 力
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東京都立大学名誉教授
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地方制度調査会委員
神奈川県情報公開運営審議会委員
(仮称)横浜環状北西線有識者委員会委員長(需要予測責任者屋井鉄雄氏も委員)
自然環境保全審議会野生生物部会委員
(仮称)恩田元石川線に関する研究会委員
財団法人 計量計画研究所役員など
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いわさ ひろみち
岩沙 弘道
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三井不動産(株)代表取締役社長
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日本経団連国土・都市政策委員会共同委員長
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おかじま しげゆき
岡島 成行
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(社)日本環境教育フォーラム理事長
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読売新聞社解説部次長
林政審議会委員
社会資本整備審議会河川分科会委員(石川嘉延知事も委員)
自然環境保全審議会野生生物部会委員など
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こばやし しげのり
小林 重敬
(会長代理)
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横浜国立大学教授
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都市計画中央審議会基本政策部会委員
国土庁土地政策審議会委員
経済審議会地域経済・社会資本部会委員(石川嘉延知事も委員)
神奈川県総合計画審議会委員
東京都住宅政策審議会部会長
被災者の住宅再建支援の在り方に関する検討委員会委員(石川嘉延知事も委員)
(仮称)恩田元石川線に関する研究会委員
など公職多数
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ひらい よしお
平井 宜雄(会長)
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専修大学教授
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国土交通省中央建設業審議会会長
土地鑑定委員会委員
法制審議会委員
工業所有権審議会企画小委員会など
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もり ゆうこ
森 有子
(臨時委員)
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弁護士
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東京都収用委員会委員
建設省公共用地審議会委員
国土庁土地政策審議会委員など
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もりの よしのり
森野 美徳
(臨時委員)
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都市ジャーナリスト
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日本経済新聞編集委員
国土審議会専門委員
中央建設業審議会設置「入札契約の適正化に関する検討委員会」委員
21世紀の国土・地域・社会と道路政策検討小委員会委員(屋井鉄雄氏も委員)
財団法人 計量計画研究所役員など
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そして、事業認定是非の審議の焦点となるものが需要予測ということになる。
静岡空港の最新の需要予測は平成15年4月、財団法人運輸政策研究機構によりまとめられた。静岡県が財団法人運輸政策研究機構に委託し、専門家の監修の下、「静岡空港の需要等再試算調査報告書」として取りまとめられたのである。
これは、前回平成12年7月の需要予測が近隣空港との便数格差の考慮がなされていない、実勢運賃を反映していない、などの批判を受けたのと、平成12年11月30日、会計検査院による検査報告の「地方公共団体が管理する空港の整備・運営状況について」(全文)及び平成13年5月24日、総務省行政評価「空港の整備等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」(全文、概要と国交省回答)などと、相次いで地方空港の需要予測の過大が指摘され、国土交通省から改善(概要と国交省回答参照)が示されたことにより需要予測を再試算することになったものである。
では、その最新の需要予測(開港年)を見てみよう。
路 線
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最新需要予測
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前回需要予測
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千歳便
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50万人
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50万人
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福岡便
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24万人
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25万人
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鹿児島便
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17万人
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17万人
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那覇便
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15万人
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15万人
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その他(長崎、熊本)
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なし
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長崎10万人、熊本7万人
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計
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106万人
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121万人
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うち、対象4路線計
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106万人
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107万人
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結果は見てのとおり、近隣空港の便数や実勢運賃を考慮しても実質1万人しか減っていないのである。
最新の需要予測では空港整備による交通量の増加、すなわち誘発需要を見込んでおり、これは関係道県間(開港年交通量)で以下のとおりとなっている。
道県間
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空港整備による交通量増加率
(誘発需要分)
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静岡県 ⇔ 北海道
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27%増
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静岡県 ⇔ 福岡県
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9%増
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静岡県 ⇔ 鹿児島県
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28%増
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静岡県 ⇔ 沖縄県
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33%増
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これも、下記に示す「需要予測の問題点」と併せ、過大といわれた前回需要予測が下がらない一大要因である。しかもこれは従業人口を説明変数として算出されており、その算出に用いた式は本社機能の集中している東京などの大都市も含めた47都道府県のデータで構築されており、筆者考察の県勢と需要同様大きなデータに傾向が引っ張られている可能性が高く、信頼性には疑問がある。
なお、需要予測と空港事業評価の関係であるが、「費用対効果分析は、公共事業の総合的・体系的評価を行う上でのひとつの重要な要素で、事業に必要な建設費等の費用に対する便益等効果を社会経済的効率性の観点から分析するものである」(「静岡空港の需要等再試算調査報告書」より)と記されているように、費用対効果分析が静岡空港の公益性を判断する上で重要な客観的資料であることに鑑みれば、需要予測がその基となっていることから重要な意味を持つものである。県は事業再評価の過程でこの費用対効果が1.0に相当する需要が86万人であることを明らかにしており、これを下回る需要予測となれば、離島の生活に必需なインフラ(空港)と異なり、公益性に疑問が生じることになるのである。
次に各路線の機材と便数を見てみよう。
開港年
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札幌便
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福岡便
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鹿児島便
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那覇便
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合計
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便数
(国交省の機材投入基準に基づき県が設定)
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大型機1日1便
中型機1日2便
小型機1日2便
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小型機1日4便
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小型機1日3便
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小型機1日2便
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大型機1日1便
中型機1日2便
小型機1日11便
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需要予測
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50万人
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24万人
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17万人
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15万人
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106万人
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大型機、中型機を必要とするのは札幌便だけということがわかる。なお、大型機の投入基準は50万人以上であるのでこれを割り込めば大型機の想定はなくなり2500m×60mの滑走路の空港整備(収用対象)に疑問が出てくることになる。(ちなみに中型機の投入は30万人以上の路線である。)
なお、これら最新の需要予測を監修した専門家(静岡空港需要予測等検討委員会委員)は以下のとおりである。
そして、この需要予測の問題点を整理すればおおむね次のとおりである。
(なお、静岡空港は第三種空港であり、入管、税関、検疫等、国の予算や両国航空当局間の協議などが絡む国際便、及び、収支・旅客数にあまり影響のないリージョナル便については空港設置許可及び国土交通省による事業再評価の直接の対象ともなっていない県の参考値にすぎないことからこのページでの整理から割愛した。)
以上