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大学プロデューサーズ・ノート 【早稲田塾】

「留学生30万人計画」に向け、就職支援を強化

マイスターです。

留学生を30万人に増加させる、という方策を掲げる政府。
その中で、課題として挙げられているのが、留学生の進路です。

当たり前ですが、日本に留学をしたことが大きなメリットにならない限り、留学生は増えません。
それも、「アメリカなどと比べて、日本に留学した方がプラスだ」という状況をつくらなければならないわけですから、ハードルは高いです。

中でも留学生の就職問題は、避けて通れません。
日本で学び、日本の文化を知り、日本語と母国語を操れる留学生達は、本来なら日本にとっても宝物……のはずなのですが、彼らへの就職サポートは不十分ではないかという声もしばしば耳にします。

大学の関係者に聞くと、「受け入れ側の企業が閉鎖的だ」と言いますし、企業の方は「自分たちは留学生にも興味があるのに、大学側が適切な進路指導をしていない」と不満をこぼします。
実態としては、素晴らしいサポートをしている大学もそうでない大学もあるし、留学生の受け入れに積極的な企業も、そうでない企業もある、というところでしょう。

ただ、「留学生30万人」という方針を打ち出した以上、政府も、大学や企業だけにまかせておけないと考えているようです。



【今日の大学関連ニュース】
■「卒業後の就職支援も求める 留学生30万人計画で中教審」(中日新聞)

福田康夫首相が1月の施政方針演説で掲げた「留学生30万人計画」に向け、中教審大学分科会の留学生特別委員会は5日、計画実現のための具体的な方策案を大筋でまとめた。大学への受け入れ策という“入り口”だけでなく、卒業後の就職支援といった“出口”の対策も求めている。一部修正を加えた上で近く正式にまとめ、計画に反映させる考え。

(略)日本企業への就職は、留学生にとって大きな魅力と分析。留学生の6割近くが日本国内の企業への就職を希望しているという調査結果を踏まえ、産学官が連携した就職支援が重要とした。

(上記記事より)

このように、中教審の方策案で、就職支援が重要、と言及されました。
具体的にどのような手を打っていくのかは、これから詰められていくのだと思います。

ちなみに、すでに平成19年から、文部科学省と経済産業省によって「アジア人財資金構想」というプログラムが実施されています。

■「アジア人財資金構想とは?」(アジア人財資金構想)

アジアの相互理解と経済連携の促進に向け、経済産業省と文部科学省は、「アジア人財資金構想」を平成19年から実施しています。

優秀な留学生の日本への招聘、日系企業での活躍の機会を拡大するため、産業界と大学が一体となり、留学生の募集・選抜から専門教育・日本語教育、就職活動支援までの人材育成プログラムを一貫して行います。

日本とアジアの架け橋となる優秀な人材の受入・交流を拡大し、アジア大での人材育成、我が国大学・企業のグローバル化に貢献します。

その優れた知性と能力をアジアの未来のために活かす。これが「アジア人財資金構想」の目標です。

【就職を見据えた一貫したサポート体制】

「アジア人財資金構想」は、就職までの過程を念頭に置いた日本における初めての留学生支援事業です。留学生が日系企業に就職し、活躍する際に壁となってきた「ビジネス日本語」や「日本企業文化」について、学習の機会を提供するとともに、インターンシップの実施、各種就職支援などにより、留学生に対して、就職を見据えた一貫したサポートを行います。

【留学生・企業・大学。三者のWIN-WIN-WIN を実現】

留学生は、日本語や日本企業文化への理解を深め、日系企業への就職のチャンスが増えます。企業は、優秀なグローバル人材である留学生の確保により、ビジネスチャンスが拡大します。大学は、留学生と企業の満足度が高まり、更に優秀な留学生を招聘することができます。「アジア人財資金構想」は、この留学生と企業と大学とのWIN-WIN-WIN の構築を目指します。

(上記記事より)

これを受けて実際に、様々な取り組みが立ち上がっています。
最近のニュースでは、↓例えばこんな事例が見つかりました。

■「平成20年度「アジア人財資金構想」の公募に係る新規事業の採択について」(九州経済産業局 )

■「優秀な人材獲得へ-アジア出身留学生の就職支援」(四国新聞社)

四国で学ぶアジア出身の留学生を対象に四国企業への就職を促す事業を、4県の大学や四国経済産業局が2007年度から実施している。留学生に卒業前の2年間、大学のビジネス教育やインターンシップを提供し、地元企業の特色をアピールしながら就職を指導。アジアの優秀な人材を四国で獲得するとともに、四国企業の今後のアジア展開を促進するのが目的だ。

1日に高松市で08年度開講式がある。四国の大学などには1000人を超える留学生が学び、四国でもアジアへの進出意欲のある企業を中心に留学生の採用に関心が高まっているという。

経済産業省の「アジア人財資金構想」に基づく事業で、四国地域は四国生産性本部に委託し、「四国発グローバル人財創出を目指した留学生支援プログラム」を推進。香川大と高松大のほか、徳島、高知、愛媛、松山、松山東雲女子の計7大学が参画する。

参加する留学生は初年度が20人、08年度は19人で、出身は中国、バングラデシュ、ネパール、タイなど9カ国。成績や日本語能力、奨学金の取得などの条件を満たす優秀な留学生を選抜した。

「優秀な人材獲得へ-アジア出身留学生の就職支援」(四国新聞社)記事より)

■「留学生に製品開発指南 道経産局の「アジア構想」 北大、メーカー協力」(北海道新聞)

北海道経済産業局は二十六日、アジア諸国からの留学生を応援する「アジア人財資金構想」の二〇〇八年度事業として、北大と道内外のメーカーが協力する留学生育成事業「国際競争力あるものづくり産業をになう人材育成」を採択したと発表した。トヨタ自動車北海道(苫小牧)などが協力し、生産作業の「カイゼン」など日本が誇るノウハウを指導。海外向け製品の開発能力の育成を支援する。

(略) 一〇年度までの三カ年、北大に所属する留学生を毎年十人程度選考し、奨学金やインターンシップなど人材育成から日系企業への就職支援まで幅広く応援する。

(上記記事より)

このように、少しずつ、留学生と企業とを結ぶ場は生まれつつあります。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、過去3年間に留学生を採用した企業が、1割にのぼるそうです。

■「企業の約1割が留学生を社員に・労働政策研調べ」(NIKKEI NET)

過去3年間に外国人留学生を卒業後にフルタイムの社員として採用した実績がある企業が9.6%だったことが、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査でわかった。従業員300人以上の企業では36.3%と3社に1社が採用した。

採用の理由は「国籍に関係なく優秀な人材を確保」との答えが52.2%と最も多かった。次いで「職務上の外国語の必要性」(38.8%)や「事業の国際化のため」(32.4%)となった。グローバル化に対応するため留学生を採用する企業も多い。一方で留学生の採用実績のない企業に理由を聞いたところ「受け入れ態勢が整っていない」「外国人の採用自体に消極的」との回答がともに4割強あった。

業種別の実績を見ると情報通信産業が26.5%と突出。IT(情報技術)に強いといわれるインド人の採用が盛んなことなどが影響していそうだ。調査は全国の3244社から回答を得た。

(上記記事より)

「従業員300人以上の企業では36.3%」というのも、興味深いです。
ただ、実際には、ちゃんと卒業して、ちゃんとした企業に就職している学生も(当然ながら)少なくないのですが、メディアはどちらかというと「海外からの留学生が、安い労働力として働かされている」という事例の方をよく取り上げますので、そういう印象が強く残っている方も少なくないのではないでしょうか。

「受け入れ態勢が整っていない」「外国人の採用自体に消極的」という理由で採用を行っていない企業の声は、非常に気になりますね。
具体的に、どういう体勢が必要だと考えているのか、なぜ消極的なのか、聞いてみたいところです。

ほか、留学生に対応する就職サービスを打ち出す企業も現れ始めました。

■「外国人雇用を促進 人材ビジネス業界 情報提供に工夫」(FujiSankei Business i.)

人材派遣や人材紹介など人材ビジネス業界で、日本企業に外国人雇用を促す動きが顕著になってきた。政府が医療、教育、IT(情報技術)など専門的技術を持つ外国人雇用の拡大に向けた具体策を検討しており、専門技能を持つ外国人の雇用促進は、人材ビジネス各社にとって大きなビジネスチャンス。さまざまな工夫を凝らして事業拡大を競い始めた。 (略)人材派遣大手のパソナグループは、2月に日本の大学に留学している外国人専用の就職支援サイト「グローバルルーキー2009」を開設し、留学生の日本企業への就職支援に乗り出した。

(上記記事より)

■GLOBAL ROOKIE2009:外国人留学生の就職情報

↑こんなサイトも立ち上がっています。
……が、登録企業が非常に少ないですね……。

上記の「GLOBAL ROOKIE」がどうなのかは存じ上げませんが、こういうとき往々にして就職ビジネスを立ち上げる側は、日本人学生向けのサイトと、留学生向けのサイト、別々に企業に売り込んで、それぞれでお金を取るんですよね。
それですと、「じゃあ、とりあえず日本人学生だけでいいや」となってしまうのですが……。
まだまだ課題は多そうです。

個人的には、「留学生だけのサービス」ではなく、既存のサービスを、留学生も100%活用でき、日本人学生と同様にチャンスを活かせるようにすることの方が大事かなと思います。

■「第二新卒者も就職面接会OK」(中国新聞)

広島県や広島労働局などは、毎年開いている学生の合同就職面接会の対象を拡大し、新卒からおおむね3年以内に離職した「第二新卒者」や、外国人留学生にも初めて参加を呼び掛ける。若者の転職の増加や、団塊世代の大量退職に伴う企業の人材確保競争に対応する。 (略)また、外国人留学生にも門戸を拡大。参加企業のうち外国人採用に積極姿勢を示している20社が、ブースに「留学生積極採用」のマークを掲示してアピールする。 (上記記事より)

↑こんな記事もありましたが、「外国人留学生にも初めて参加を呼び掛ける」とあります。
これまでは、留学生には呼びかけていなかったということなのかな? と、ちょっと気になりました。


……と、結論も何もないのですが、あれこれと、留学生の就職に関するニュースをご紹介しました。

「30万人という数字を達成するためには、現状では不十分だ」というのが、政府の考え。
これから、どのような施策が打ち出されていくのか、気になりますね。

ところで個人的には、大学こそ、留学生を採用してはどうかと思います。

国をあげて留学生を増やすのなら、その彼らを適切にサポートする人材が必要でしょう。
国際交流でも、教務でも、就職でも、海外から留学し、日本で学んだ経験を持つスタッフがいたら、大学にとっても留学生にとっても、心強いはずです。
留学生の有力な就職受け入れ先になると同時に、より多くの留学生を呼び寄せ、送り出すことにもつながるという、プラスのサイクルになるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

以上、マイスターでした。

著者紹介

【倉部史記(マイスター)】

大学院修了後、Webプロデューサー、大学職員を経て現在、早稲田塾SOHKEN(総合研究所)・主任研究員。

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