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<COP15>「G2」動かず…実質合意見送り

12月18日23時43分配信 毎日新聞

 温室効果ガスの削減の具体策など懸案を先送りする国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)は、米中2カ国が動かなければ、どんな問題も解決しない現実を見せつけ、両国が世界を主導する「G2」時代の到来を改めて予感させた。また、多数の国が一堂に会し温暖化対策を話し合う“国連総会”型の協議方式が機能不全に陥っている実情も浮き彫りにした。【コペンハーゲン会川晴之、福島良典、北京・浦松丈二】

 ◇米大統領…合意を要求 中国首相…努力を強調

 オバマ米大統領は18日の首脳会合演説で、温室効果ガスの排出量を05年比で2020年までに17%、50年までに80%以上を削減する米国の温暖化対策を強調。途上国の排出抑制計画への監視・検証の徹底を求め、短期・長期支援は途上国の取り組みが前提条件との考えを示した。「(国際合意を)不完全な枠組みと見なす国もあるだろうが、行動に移る時だ」と中印などを念頭に合意を促した。

 一方、中国の温家宝首相は自国の削減努力を強調した上で、「会議の結果は京都議定書の原則に沿ったものでなければならない」と述べ、先進国が削減義務を負う京都議定書の原則尊重を求めた。

 表向きは対立しているかのように見えた米中だが、COP15の場では直接協議を重ねた。中国の交渉筋はロイター通信に「米国の懸念に応えるよう努力している」と話す。

 背景には2国間の協力で温暖化問題の解決をはかりたいとの米側の意向がある。米中は再生可能エネルギー開発などで着実に協力を重ねている。

 米中間の親密さとは対照的に中国はCOP15の表の場では「途上国の代表」として、あらゆる場面で先進国側と対立した。

 「われわれは同じ発展途上国だ。同じような歴史の悲劇と貧困解決という切迫した課題に直面している」。温首相は17日、スーダンなど途上国5カ国代表と会談し、連携を呼びかけた。

 中国は途上国の「グループ77(G77)」で活動し、排出量世界一にもかかわらず「途上国VS先進国」の構図を作り出した。「中国がアフリカや議長国に圧力をかけている」「これは中国問題だ」と日本外交筋が語る。

 温首相は首脳級の非公式協議には出ず、次官級を派遣した。「中国の消極姿勢が合意に至らなかった最大の原因」(国際機関首脳)と交渉筋は一致する。

 中国がこれほどの抵抗を見せるのは、温暖化対策の義務化が経済成長の妨げになる、との懸念が強くあるからだ。2011年から始まる第12次5カ年計画の策定を来年に控え、長期的な交渉を実施するのが国内的にも難しいとの指摘もある。

 今回は、削減義務を負うことは回避できたが、会議で幅広い合意が形成できなかった「責任」を先進国側から問われるのは必至で、中国は今後、対中批判の高まりを警戒していくことになる。

 ◇「全会一致」限界を露呈

 「ごちゃごちゃ言うので、それではダメだ。早く(政治合意の)案を出しなさいとなり、ようやく受け入れた」。鳩山由紀夫首相によると17日深夜の非公式首脳会合で政治合意案をまとめるのをためらう議長国デンマークのラスムセン首相を各国が説得したという。

 デンマークは今回、各国の意見をねばり強く聞き、小国も無視しない手法を取った。

 デンマークは92年に欧州連合(EU)が東方拡大を決めた際に、EUの議長国を務めた。ねばり強い交渉をこなした実績があるだけに「オネストブローカー(正直な仲介者)」としての自負も強かった。その際は10カ国程度の利害を調整すればよかったが今回は193カ国・地域という世界が相手で、丹念に意見を聞き続ける手法は、時間の制限もあり、不発に終わった。

 「天から降ってきた文書だ」。本来の方式を変え、議長権限で妥協案を取りまとめようとしたデンマークは中国などから批判され議長案を断念した。

 こうした問題は、全会一致方式をとる国連の意思決定方式に由来する。「すべての国が拒否権を持つ」(交渉筋)システムのため、非効率な部分も多い。今回の実質合意先送りは、国連に対する信認の低下にもつながりかねず、今後、国連方式が継続するかは議論を呼びそうだ。

 ◇政治合意案の要旨

 COP15の政治合意案の要旨は次の通り。

一、(産業革命以前からの地球の気温上昇を)2度以内に抑えるべきだとの科学的見解を確認する。

二、地球全体と国ごとの温室効果ガス排出量が可能な限り早くピークを迎えるよう、各国は協力する。途上国で社会・経済発展と貧困解消が最優先されることも認める。

三、予測・継続可能かつ十分な資金、技術、能力開発協力を、先進国が途上国に提供する。

四、先進国は、個別または共同で、20年の温室効果ガス排出量を(数値は空欄の)別表のとおり設定する。

五、先進国以外の国は持続的な開発に向けた温暖化対策を取る。(対策の内容は)2年ごとに報告する。対策は各国内で監査や査定を受ける。さらに国際的にも審査される。

六、途上国は、森林伐採や森林破壊による温室効果ガスの排出を減らす。

七、国際社会は、費用対効果を高めつつ温暖化対策を図るため、市場の活用を含む多様な手法を追求する。

八、森林減少・劣化対策や技術開発など途上国の温暖化対策を支援するため十分な資金を途上国に提供する。300億ドルを10〜12年までに提供すると確約した。また20年時点で年間1000億ドルを支援する目標を支持する。

九、ハイレベル委員会をつくり、(温暖化対策のための)財源の見積もりを行う。

十、途上国の温暖化対策を支援するため「コペンハーゲン気候基金」を設立する。

十一、温暖化対策の技術開発や途上国への技術移転を強化する技術機構を設立する。

十二、合意内容とその履行状況について16年に見直しをする。

十三、京都議定書と長期協力行動に関する特別作業部会での交渉は継続、COP16(10年)までに一つ以上の法的文書を採択する。

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最終更新:12月18日23時43分

毎日新聞

 

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