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きょうの社説 2009年12月18日
◎コマツ跡に研修施設 今度は地元が知恵を出す番
コマツが、来年3月に閉鎖する小松工場跡地に大規模な研修・教育センターなどを整備
する計画を発表したことにより、小松駅に隣接する一等地に東京ドーム約3個分もの「空洞」が残るという最悪の事態は、回避できる見通しとなった。場所が場所だけに、工場跡地が埋まらない状態が長く続けば、地元には大打撃となったに違いない。同社は、早めに「跡地問題」にめどをつけ、これまでともに歩んできた地元に誠意を示したと言えよう。小松駅周辺では、コマツに続いて大和も撤退を決めており、一帯の「地盤沈下」に歯止 めをかけることは、小松市の最重要課題の一つである。そんな中で、コマツが自らの責任で工場跡地を活用する計画をまとめた意味は大きい。今度は、地元関係者がそれに応えて知恵を出す番である。 コマツは、国内各地で分散実施している幹部社員や新人の研修などを、新たに整備する 研修・教育センターに集約するプランを練っている。年間約2万人と見込まれるセンターの利用者は、飲食や宿泊、土産品購入といった新たな需要をもたらすだろう。市や周辺商店街などは、同社とも緊密に連携し、経済効果を最大限に引き出すための準備を急いでほしい。センターを利用する外国人への配慮も忘れてはならない。 計画には、工場跡地にコマツの歴史を紹介する記念館を建設する構想も盛り込まれてい る。市には、これを産業観光の拠点の一つとして生かし、交流人口のさらなる拡大につなげる方策を検討することも求めておきたい。 県内では、今年3月に金沢市のJT金沢工場が閉鎖され、来年8月には白山市のキリン ビール北陸工場も閉鎖されることが決まっている。不況が長引けば、経営再建に伴う工場再編が今後も続くかもしれないが、地元に後始末を「丸投げ」するのは酷だろう。自治体などにとっては雇用の確保だけでも大変な課題であり、工場跡地まで背負い込む余力は乏しい。企業側も、倒産など切迫した状況でない限りは、コマツのように当事者意識を持って「跡地問題」にかかわってもらいたい。
◎COP15首脳級会合 「大盤振る舞い」は困る
首脳級会合の討議が行われる気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で
、鳩山由紀夫首相に望みたいのは、前のめりになり過ぎず、国益を重視した交渉に撤することである。日本が不利な削減義務を負わされた京都議定書の二の舞は、何としても避けねばならない。鳩山首相の出席に先立って、小沢鋭仁環境相が発展途上国に対し、2012年末までの 3年間で、150億ドル(約1兆3400億円)を提供するなどの「鳩山イニシアチブ」を発表した。この額は、先進国全体が短期の途上国向け支援として準備する総額300億ドルの半分に相当する。 温暖化問題は、地球全体を見渡す広い視野で議論を深める必要があり、日本も応分の負 担をすべきとは思うが、既に拠出を約束している90億ドルを大幅に積み増す理由が分からない。「事業仕分け」で日本の経済成長に欠かせない学術・科学技術関連予算などを削る一方、そうした削減努力がむなしくなるほどの「大盤振る舞い」は避けて欲しかった。 鳩山首相は「日本だけが(新たな歳出削減の)義務を負って帰ってくるつもりはない」 と述べたが、京都議定書の延長論が強まるなかで、不利な条件を押し付けられる懸念は消えない。 京都議定書で削減義務を負っていない米国や中国の目標は、日本の90年比25%削減 に比べて削減率、負担とも格段に低い。米国の目標は、90年比に換算すると3〜4%にとどまる。中国は経済成長が続けば排出量が増える仕組みで、しかも国際的な義務は負わないというムシの良いものだ。 日本の高い目標や巨額の途上国向け支援が他国の削減努力を引き出す原動力になると考 えるのは楽観的過ぎる。多くの国が国益を優先し、削減努力を小出しにするなかで、既に高い数字を掲げてしまった日本は、これ以上前向きな姿勢をアピールする材料がない。もし米国や中国が不十分であっても、何らかのかたちで譲歩に応じるなどした場合、日本は努力不足を理由に25%削減の明記を拒否できるのか、はなはだ疑問である。
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