【ワシントン=勝田敏彦】気象研究で有名な英イーストアングリア大のコンピューターにハッカーが侵入し、研究者が地球温暖化を誇張したとも解釈できる電子メールなどが盗み出された。12月の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を控えた陰謀との見方もあり、英米メディアはウォーターゲート事件をまねて「クライメート(気候)ゲート事件」と呼んで報じている。
メールには、国際的に著名な気象研究者同士のやりとりが含まれ、イーストアングリア大のフィル・ジョーンズ教授が米国の古気候学者らに出した「気温の低下を隠す策略(trick)を終えたところだ」などと書かれたものもあった。
この記述に対し、地球温暖化やその人為影響に懐疑的な人たちが飛びつき、ネットなどで批判が相次いだ。ジョーンズ教授は声明で自分が書いたことを認める一方、「誤った文脈で引用されている」などと反論。木の年輪のデータから推定されるが信頼できない気温のデータを使わなかっただけで、科学的に間違ったことはしていないと主張している。
公開を前提にしない私信とはいえ、ほかのメールで懐疑派を「間抜けども」などと呼ぶなど研究者の態度にも関心が集まっている。
米国の保守派シンクタンク、企業競争研究所(CEI)は20日、「『世界一流』とされる研究者が、科学研究より政治的主張の流布に集中していることは明らか」とする声明を発表。23日には、急速な温暖化対策に批判的な米上院のインホフ議員(共和党)が「(感謝祭の議会休会が終わる)来週までに真相が明らかにならなければ、調査を要求する。この問題は重大だからだ」と述べ、「事件」が議会で問題にされる可能性も出てきた。