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アトピーはリノール酸の過剰摂取 07.31.2002 add 08.03 |
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週刊朝日の8月9日号 笠本進一記者による記事 40年前にはほとんど問題にならなかったアレルギー過敏症の患者が、とりわけ若年層に激増していて、アトピー性皮膚炎などと診断される小学生は、いまや25〜33%に及ぶ。 アトピー性皮膚炎が多くなった原因としては、生活環境の激変が挙げられている。住環境の変化によるカビやダニ、車の排ガスの増加など、アレルギーを誘導する物質(抗原)に触れる機会が増加したことが大きな原因と考えられている。 しかし、名古屋市立大学薬学部生物薬品化学講座の奥山治美教授は、こうした考え方がそもそも「古い」という。「アトピー性皮膚炎と同じようなメカニズムで起こるアレルギー疾患を考えると、抗原に触れる機会が増えたということだけで、アトピー性皮膚炎の異常な増加を説明するには無理があります。例えば、コメを食べる量が減っているのに、コメアレルギーの患者は増えています。つまり、抗原との接触ではなく、何らかの理由で現代人はアレルギー過敏症になり、それがアトピー皮膚炎の急増につながっていると理解した方がよい」 その理由は、1950年代半ばから始まった食生活の激変である。55年には、脂質割合は約9%だったのが、最近では、25%に急増、その分、炭水化物が78%から60%にに激減している。 脂質は、バターやラードなどに多い動物性脂肪類、コーン脂などの多くの植物油に含まれるリノール酸系、魚油やシソ油に多いα−リノレン酸系の3種類に分けることができる。 日本人は、リノール酸摂取量が40年間で2.5倍になっている。摂取した脂肪酸中の割合は世界一の25%にもなっている。 マーガリン、ドレッシング、マヨネーズ、スナック菓子などを食べるようになり、鶏卵を毎日口にしているためと見られる。 母乳中の脂肪酸のリノール酸の割合は米国なみの15%前後で、ヨーロッパの10%よりもかなり多い。粉ミルクにも15〜20%のリノール酸が含まれており、どの赤ちゃんも「リノール酸漬け」状態。 リノール酸は、その代謝過程で、アラキドン酸という物質が作られ、このアラキドン酸から複雑な化学反応を経て、炎症を長引かせたり、増強させる物質を作り出す。 このようなリノール酸だが、その摂取の増加には、「動物性脂肪はコレステロール値を上げ、リノール酸はコレステロール値を下げ、心臓病を予防する」という考え方が70年代から広く行き渡り、「バターよりもマーガリン」が常識になった。 91年に発行された日本医師会編集の「高脂血症診療のてびき」でも、「バター、ラード、牛脂をリノール酸の多いマーガリンや植物油に切り替える必要がある」としているが、奥山教授曰く「リノール酸に変えると、かえって心臓死が増えることが科学的に証明されている。リノール酸が善玉というのは間違いです」。 しかも、魚を食べなくなったことが、リノール酸の過剰摂取の影響を増幅している。魚油のエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)にはリノール酸の働きを抑える作用があるからだ。 「油脂をリノール酸の少ないバターに変えると、母乳中のリノール酸の割合はすぐに減って、一週間で10%を切ります」。 このような研究成果を治療に取り入れて成果を上げているのが、下関市中央病院。食事内容は、主食がコメと小麦、副食は魚介類、豆類、副菜が緑黄色野菜、根菜、きのこ類、海藻類。 リノール酸がアレルギー体質を作るという説は、ほぼ認められてきていて、9月に開催される脂質栄養学会では、「リノール酸のとりすぎに注意して、健康によい食習慣を確立するように」との提言を行う方向で動いている。
B君:油脂とアレルギーとか、油脂と発がんといった健康関連の件をインターネットで検索してみると、結構多数見つかる。例えば、 A君:リノール酸が発がんに関連するなどということになったら、アレルギー・アトピーどころではないですね。 B君:そうなる。アトピーについては、嫌な噂がいくつかあるが、その一つに、http://www.onfield.net/column/010201/shuzai.html A君:しかし、まずは、脂肪とは何かから行かないと駄目ではないでしょうか。 B君:そうだろう。脂肪とは、脂肪酸というものとグリセリンとが作っている化合物。分子の形にすると、次のようなもの。 B君:そこに二重結合というものがあって、炭素と炭素の間に結合が二本あると、分子は途中でちょっと折れ曲がることになる。このオレイン酸というものは、二重結合が1個あって、そこでちょっと曲がっている。 A君:曲がっていないものを示しましょうか。ステアリン酸という飽和脂肪酸の絵ですが、こんな格好で、まあ棒のように硬いという訳では無いのですが、真っ直ぐと考えても良いのです。
B君:このステアリン酸は、融点が70℃ぐらいの固体になる。それは、このような分子であれば、隣の分子とお行儀良く整列できるから、分子と分子の間の結合も強くなる。 A君:そして、本命のリノール酸ですが、こんな格好です。二重結合が、赤い球の反対側から数えて、6個目と9個目にあって、そのために、ちょっとひん曲がっている形になります。 C先生:最近の知識によれば、リノール酸が体に良いなどといった結論が結果的には間違っていたことになる。 A君:リノール酸というものは、体内では徐々に変化を受けて、二重結合の数を増やしながらアラキドン酸というものになります。これは、 こんな格好をしていまして、二重結合が四つもあるもので、曲がりがきついです。二重結合ができるところは、決まっていて、最初からある6個目の結合と9個目の結合は残って、次に12個目、15個目にできるのです。 B君:そして、これが分解されていく過程で、トロンボキサン A2 という物質になるが、これが、強力な生理活性を示して、血栓症、狭心症、ロイコトリエンなる物質もできて、気管支喘息などの原因の一つらしい。 と書いていたら、新潟女子短期大学の本間先生が、次の図をご提供くださった。ありがとうございました。 次のロイコトリエンB4の分子図も、同じく、本間先生にご提供いただきました。 B君:アレルギーの原因ということで、このトロンボキサンA2を作らないようにしようとする。それにはアラキドン酸を少なくすれば良い。しかし、アラキドン酸自体がどうも必須脂肪酸らしいので、これを減らすわけにはいかない。困った。しかし、上手い関係があって、α−リノレン酸という脂肪酸の摂取量を多くすると、この脂肪酸からは、魚が含む健康によい脂肪酸として有名な、EPA、DHAというものが代謝過程で生成して、なかでも、EPAは、アラキドン酸からトロンボキサンA2が作られるのを防ぐ効果がある。 B君:ぐちゃぐちゃした分子だな。 A君:別の向きから見ると、球形の分子のようで、この形が利いているのかもしれません。 A君:インターネットを見ながら、分子モデルを動かしているのを見たことがあります。ちょっと探してみましょうか。 A君:リノール酸:α−リノレン酸の比を4:1にするのが理想的とか。 B君:それには、しそ油、なたね油という2種類の油を適切に取る必要がある。なぜならば、リノール酸:α−リノレン酸比が2:1以下の油は、この2種類しかないからだ。 A君:なたね油と大豆油を同じ量だけ混ぜたようなものがバランス上良いようです。 B君:そんなことを言うと、また「あるある大事典」あたりが取り上げそうだ。 A君:これは別の話になりますが、植物油は健康に良いか、と言われると、植物油を長時間加熱しつづけるという行為、例えば、てんぷらを揚げるといった行為は、不飽和脂肪酸の酸化が急速に信仰して過酸化物が生じるので、健康には極めて悪いと言われています。むしろ、動物性油は飽和脂肪酸を半分程度含みます。不飽和脂肪酸としては不飽和度の低いオレイン酸が主成分ですから、ラード、ヘットを使った揚げ物の方が、過酸化物の面からは良いことになりそうです。 A君:まだまだ色々ありますね。知らないことが。 C先生:リノール酸信仰は、完全に破れたと言える。色々な食材をバランス良く取ることが、いかなる場合でも良さそうだ。 付録:
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