映画祭
「日本映画に描かれた在日W」

映画、特に商業映画(劇映画)は、しばしば社会のニーズとその時代状況が反映される。
「歌は世につれ、世は歌につれ――」と言われるように、映画もまた社会(世相)と時代を映すカガミである。
三年後の二〇一〇年は、日本による朝鮮植民地支配である一九一〇年の?韓国併合?から百年になる。
この百年の間、日本映画の中に「在日」が登場する作品は決して少なくない。
戦前は、植民地時代を反映して「内鮮一体」
「内鮮一如」を鼓舞する、いわゆる国策映画が数多く制作された。
日本の敗戦、朝鮮の解放を迎えた戦後の日本映画の中の「在日」は「貧困と差別」がテーマとなった。
そして、一方では差別的に描かれ、他方では良心的・友好的に描かれる時代が続いた。
時代が移り、経済成長をとげた豊かな日本社会と「在日」の世代交代によって
「貧困と差別」という主題は過去のものとなってしまった。
それに代わって、自らのアイデンティティーを問う映画が目立つようになった。
戦後六十数年――。
現在も「在日」が登場する映画は制作されている。
この社会に「在日」が存在するかぎり、これからも「在日」は日本映画に描かれつづけるであろう。
何故なら、それは日本が清算しなければならない近・現代史のツケだからである。

●11月23日[金・祝]“終戦”後に描かれた在日day

●にあんちゃん(1959年/101分/35mm/白黒/日活)

監督・脚本:今村昌平
原作:安本末子
脚本:池田一朗
撮影:姫田真佐久
音楽:黛敏郎
出演:長門裕之/松尾嘉代/沖村武/前田暁子/北林谷栄/二谷英明/吉行和子/小沢昭一/殿山泰司/西村晃/芦田伸介/穂積隆信

 ベストセラーとなった10歳の少女・安本末子の日記の映画化。1953年(S.28)の春、不景気に覆われた佐賀県の小さな炭鉱町・大鶴炭鉱を舞台に、父母を亡くした在日の4人兄弟が貧しくとも健気に生きる姿を描いている。今村監督の演出は重厚なリアリズムに貫かれていて、観客の涙を誘うようなセンチメンタルな描写を回避している。現地ロケを活かして、炭鉱に生きる人々の姿を鮮やかに捉えている。子役たちの好演が印象深い。

●あれが港の灯だ(1961年/103分/35mm/白黒/東映)

監督:今井正
原作・脚本:水木洋子
撮影:飯村雅彦
音楽:林光
出演:江原真二郎/岡本四郎/安田千永子/高津佳男/山村聡/長谷裕見子/浪花千栄子/清川虹子/村瀬幸子/岸田今日子

 1952年、韓国側が一方的に引いた李ライン(韓国では平和ライン)を背景に、日本の漁船で操業する在日青年の苦悩を通して民族問題を痛切に訴えた作品。李ラインを越えて操業したために韓国側の銃弾を浴び、長男を奪われた漁師一家が悲しみにくれる。それを見つめる在日青年・木村は出自を隠している。しかし、やがてそれが明らかにされる。国家間の対立がそこに生きる人々の人間関係にまで亀裂を生む不条理を見事に描いている。


●11月24日[土]やくざ映画に描かれた在日day

●やくざの墓場・くちなしの花(1976年/99分/35mm/カラーワイド/東映京都)

監督:深作欣二
脚本:笠原和夫
撮影:中島徹
音楽:津島利章
出演:渡哲也/梅宮辰夫/梶芽衣子/室田日出男/今井健二/金子信雄/佐藤慶/大島渚

 渡哲也演ずるはみだし刑事と梅宮辰夫の朝鮮人ヤクザとの友情関係を描いている。その刑事と梶芽衣子演ずる在日女との恋愛が「くちなしの花」のテーマ曲にそってセンチメンタルに描かれる。最初の深作と渡のコンビによる「仁義の墓場」の硬質さと比較して評価の分かれる作品。深作は云う「渡の演ずる破滅的人間は、しばしば監督である私の思惑を超えていたが、それもまた、落差の上に立つ彼にして初めて可能だったのかもしれない」と。大島渚監督が警察署長役で特別出演している。

●新・仁義なき戦い。(2000年/109分/35mm/カラー/東映京都)

監督:阪本順治
原作:飯干晃一
脚本:高田宏治
撮影:笠松則通
音楽:布袋寅泰
出演:豊川悦司/布袋寅泰/佐藤浩市/岸部一徳/哀川翔/織本順吉/曽根晴美/志賀勝/佐川満男/早乙女愛/余貴美子

日本最大の暴力団、佐橋組の三代目が急死する。跡目は若頭補佐の粟野が有力視されるが、若手実力派の中平が猛反撃に出てくる。主人公の一人である門谷甲子男は粟野組の幹部として何とか粟野を四代目にしようと奔走する。一方、門谷の幼なじみの在日コリアンの実業家、栃野昌龍の商売の腕と資金に目をつけた中平は接近を図るが、ヤクザ嫌いの栃野は突っぱねる。そして…。音楽監督も務めた布袋のテーマ曲のアレンジ版が良い。


●11月25日[日]井筒和幸の描く在日day

●ガキ帝国(1981年/115分/カラービスタサイズ/プレイガイドジャーナル社=ATG)

監督・原作:井筒和幸
脚本:西岡琢也
撮影:牧逸朗
音楽:山本公成
出演:島田紳介/松本竜介/紗貴めぐみ/趙方豪/國村隼

 1967年、万博を3年後に控えた大阪を舞台に、喧嘩と遊びに明け暮れる少年たちの青春を鮮烈に描いた作品。少年院帰りのリュウは仲間のケン、チャボとともに大阪を取り仕切るキタの北紳同盟とミナミのホープ会の抗争の間で、徒党を組まない事をモットーにつっぱって暮らしていく。しかし壊滅状態に陥ったホープ会から頭になってくれと頼まれたリュウとチャボは、その話を引き受けてしまう。ケンは二人のもとを離れていく…。作品は井筒和幸監督の名を知らしめた代表作となった。

 

 

 

●パッチギ!(2004年/119分/35mm/カラー/シネカノン)

監督・脚本:井筒和幸
脚本:羽原大介
撮影:山本英夫
音楽:加藤和彦
出演:塩谷瞬/高岡蒼祐/沢尻エリカ/楊原京子/笹野高史/光石研/余貴美子/前田吟/オダギリジョー/大友康平

 1960年代の京都を舞台に若者たちの成長を描いた青春群像劇である。日本人と在日朝鮮人の高校生が巻き起こす事件を中心に、若者の普遍的純情さや、恋愛、葛藤をダイナミックに描いた感動作である。さまざまなエピソードとシンクロする音楽の使い方も印象的だ。1968年、京都、高校2年生の康介は親友の紀男と一緒に、敵対する朝鮮高校への親善サッカー試合を申し込みに出かけるのだが…。

 


●入場料
1日券:前売1,000円 当日1,300円
3日通し券:2,700円(前売のみ)
※前売・予約開始 11月1日(木)より

●映画券の購入方法
 民団中央本部文教局で直接購入できます。(平日10:00〜17:00) 予約:電話(03-3454-4615民団中央文教局)または、e-mail(bunkyo@mindan.org)でお名前、電話番号、希望日(1日券か3日間 通し券か)をお知らせ下さい。送金は郵便振替で、00100-1-445736 「韓国民団文教局」宛にお願いします(送金手数料はご負担下さい)。

 チケットのお渡しは、前日までは民団中央本部文教局、当日は上映 前に8F会場入口にてお渡しいたします。

  当日券は、毎日上映前に8F会場入口にて販売いたします。 チケットを購入された方は、パンフレット(300円)を無料で差し 上げます。