きょうの社説 2009年12月17日

◎整備新幹線で新方針 「延伸」「在来線」予断許さず
 整備新幹線建設の新たな方針案で、長野−金沢など既着工区間について「予定通りの完 成・開業を目指し着実に整備」と明記され、未着工区間に優先して工事費増額分の不足財源確保が盛り込まれたことは、2014年度の北陸新幹線金沢開業へ国が強い意思を示したと受け止めてよいだろう。開業遅れの懸念が生じていた新潟県の負担金支払い拒否問題では、同県と国土交通省が信頼を再構築することで一致をみており、双方には問題解決へ向けた一層の歩み寄りを求めたい。

 未着工区間に関しては、政権交代後の白紙状態から優先順位をつけるという一定の見通 しが示されたことで「一歩前進」との受け止め方が広がっているが、安定的な財源など着工条件は依然厳しく、予断は許されない。新幹線開業後に経営分離される並行在来線にしてもJRに支援を求めた点は評価できるとしても、その中身は今後の協議に委ねられている。沿線県は「新潟問題」の打開とともに、国やJRとの本格協議に備えて入念に準備を整えてほしい。

 北陸、北海道、長崎の未着工3区間については、安定的な財源確保や収支採算性、投資 効果など従来の着工条件を踏襲し、来年夏までに優先順位を決めることになった。建設費用として民間資金の活用も示されたが、これは国の負担軽減の意図もあるのだろう。福井延伸に関しては新幹線対応の福井駅もすでに完成している。そうした「優位性」を説得力ある形で訴えていきたい。

 一方、並行在来線は「地域の力で維持することが基本」としながら「JRにもできる限 りの協力と支援が求められる」と新方針に明記された。この点は沿線自治体の思いが反映されたとはいえ、在来線経営にJRがどのように関与するのか具体的には示されていない。JR側の反発も予想され、交渉は決して容易でないだろう。

 新方針案は与党の意見聴取を経て来週にも決定され、それをもとに年明けから国と自治 体、JRの協議が始まる見通しである。福井延伸や並行在来線問題は今からが正念場であり、沿線県が腰を据えて協議に臨むためにも「新潟問題」の一刻も早い解決が望まれる。

◎第2就職氷河期 北陸で目立つ製造業不振
 来春卒業予定で就職を希望する高校生のうち、石川県ではおよそ3人に1人、富山県で は4人に1人の就職先が決まっていない。将来設計もできぬまま年末年始を迎える高校生、そして家族の心境はいかばかりか。就職事情の厳しさは大学生、短大生、専門学校生も同じであり、このまま就職できない若者を大量に生み出すことにでもなれば、地方はますます活力を失う。2000年前後に次ぐ「第2就職氷河期」の到来とも言われる状況に官民がもっと危機感を持って取り組みたい。

 北陸の場合、高卒予定者の就職難は、製造業の採用抑制が大きく影響している。石川労 働局の調査では、製造業からの求人数が前年の58・8%減と大幅に落ち込んだ。高岡市で富山労働局などが行った富山県西部の合同面接会でも、製造業は、わずか4社しか参加しなかった。外需の不振に、急激な円高が拍車をかけ、業績が低迷している。就職希望者に最も人気がある業種だけに、就職戦線への影響は大きい。

 文部科学省の調査では、全国すべての高校の就職希望者を対象に調査した10月末現在 の就職内定率は55・2%だった。石川県の65・3%、富山県の73・4%は全国平均よりかなり高い。それでも大幅に減った建設業の求人は回復が見込めそうもなく、製造業の求人数回復が頼みの綱である。

 石川労働局と県は今月から、県内の経済関連7団体に対し、来春の高校卒業予定者の求 人拡大を求める要請行脚を開始したが、企業の投資マインドは冷え切っており、内定率の引き上げは容易ではない。企業側からすれば、売り上げが落ちているときに、新規雇用どころではないのだろう。高卒者より、パートやアルバイトの方が即戦力になり、コスト削減になるという計算が働くのも分かる。

 しかし、若者が職を求めて都会へ出て行く状況は、地域経済をしぼませ、回り回って自 分たちにもマイナスに働く。企業は地域の支えがなければ存立できない。地域に貢献し、社会的責任を果たすという使命感を持って一人でも多く若者たちを迎え入れてほしい。