民主党の小沢一郎幹事長は16日、首相官邸に鳩山由紀夫首相を訪ね、来年度予算と税制に関する要望書を渡した。ガソリン税などの暫定税率分の維持と子ども手当への所得制限導入は、8月の総選挙で掲げた党の政権公約(マニフェスト)の根幹部分を変更する内容だが、鳩山内閣は予算編成にそのまま反映する方針。小沢氏主導のマニフェスト改変で、政権の信頼性は大きく損なわれた。
小沢氏は会談冒頭、「政治主導でこうした要望について実現するよう最大限の努力をしてもらいたい」と要請。首相は「党というより国民の思い。感謝したい」と応じた。この後、平野博文官房長官は記者団に「この要望を予算編成に政府が責任を持って最大限(生かすよう)努力する」と述べた。
党の「重点要望」は、11月以降に自治体や業界団体などから寄せられた約2800件の陳情も踏まえ、計18項目。
マニフェストで「子ども一人ひとりの育ちを社会全体で応援する」としていた子ども手当には、所得制限導入を求めた。限度額は政府・与党の今後の調整に委ねた。来年度からの廃止を約束していたガソリンなどの暫定税率は、石油価格安定を理由に、「現在の租税水準を維持」とした。
公約変更の背景には、来年夏の参院選対策がある。地方からの要望の多かった高速道路や整備新幹線の整備も明記された。マニフェストで掲げた「コンクリートから人へ」の政策理念とも整合性を欠く内容だ。自民党の支持基盤だった土地改良事業の予算を半減し、農家戸別補償制度の財源に充てた。
税収減などで財政難の内閣の来年度予算編成を支える狙いもある。暫定税率維持などにより、来年度の公約実現の所要額は7.1兆円から3分の1以上減る。内閣が掲げた新規国債の発行額44兆円という目標も達成のハードルが下がる。