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強まる小沢氏主導 空文化する「政府一元化」
「財務省は予算編成を『急げ、急げ』と言っているが、国民の声をちゃんと聞いてやってくれ」
首相官邸に民主党の小沢一郎幹事長の声が響いた瞬間、陳情とりまとめにすぎなかった文書が、来年度の予算編成の方向性を決める「最終判断の文書」に格上げされた。
首相官邸の大ホール。小沢氏ら24人を待っていたのは鳩山由紀夫首相、菅直人副総理・国家戦略担当相、藤井裕久財務相ら政府側12人。冒頭こそ和やかなムードだったが、小沢氏の怒りはすぐに明らかになった。
小沢氏は、財務省主導で税制改正や予算編成が進められている現状に何度も強い懸念を表明。そのけんまくに政府側12人全員から笑顔が消えていた。
重点要望の最大の特徴は「子ども手当」への所得制限導入など、マニフェストで国民に約束した内容と反する部分がある点だ。
重点要望は「歳出削減に動く財務省にくさびを打ち込む」(周辺)ことが狙いだった。だが14日の党役員会で小沢氏は語った。
「財源を示さないとあまりにも無責任ではないか」。重点要望は歳入面にも言及することになり、文書は、予算要望ではなく「小沢版」の予算基本方針へと変質した。
小沢氏をイライラさせているのは、来年度予算概算要求が過去最高の95兆円超に膨らんでいるにもかかわらず、鳩山首相が歳出削減や歳入確保で、なんら英断を下していないことだ。
気配を感じとった平野博文官房長官は16日、「これは党の要望というより国民の要望だ」と述べ、小沢氏に屈服し、全面的に受け入れる考えを示した。
地方で要望の強い整備新幹線や高速道路整備が盛り込まれるなど「小沢氏が来年の参院選を考慮して政治判断した」(党幹部)内容になっているのも特徴だ。小沢氏本人もこの日、「選挙に勝ったから内閣が組織できているんだ」と、首相らに激しく迫った。
民主党は政策決定の「政府への一元化」を掲げてきたが、今回の重点要望の提出で、こうした理念が空文化している現実が改めて浮き彫りになった。小沢氏の政府に対する影響力はますます強まりそうだ。
小沢氏は16日午前、新潟県柏崎市にある田中角栄元首相の墓参りをしていた。この日は元首相の十七回忌。墓参後に小沢氏は記者団に語った。
「先生に負けない政治家になるよう頑張りたい」
(坂井広志)