松井エンゼルス移籍の真実　ヤンキースＧＭに“プチ切れ”

(夕刊フジ)

　エンゼルスとの契約に基本合意した松井秀喜外野手（３５）が１５日、ロサンゼルス市内の病院でチームドクターの身体検査を受けた。結果に問題がなく、松井が契約書にサインすれば数日中に入団が発表される。ワールドシリーズＭＶＰという最高の活躍をしながら、エンゼルスとは、ヤンキース時代の半額以下の年俸６５０万ドルの１年契約。外野守備に就くチャンスは増えるものの、決していい条件とは言い切れない移籍に踏み切ったゴジラの決断の真実とは−。

【ヤンキースに対する不信感】

　１年６５０万ドルならば、ヤンキースからも同程度の契約を得る可能性は十分にあったはず。だがヤンキースは交渉が高飛車だった。

　外野守備にも就きたいという松井の希望を最初からはねつけ、ＤＨ専任と決めつけたキャッシュマンＧＭは強硬な姿勢を貫いた。在籍７年間の貢献や、ワールドシリーズＭＶＰという実績を考慮に入れる素振りで、安い条件提示のアリバイだけをつくり、事実上はやっかい払いに追い込もうとした。キャッシュマンＧＭの態度に、温厚な松井は“プチ切れ”た。

【出場機会の確保】

　主砲、ゲレロの代わりの主力打者として獲得に動いたエンゼルスに松井の気持ちは大きく揺らいだ。悪球打ちの名人、右打者ゲレロは、ア・リーグ西地区で屈指の強打者だ。

　それでもシーズンを通してのフル出場がチームからも期待されている。堅実なプレーヤーを好む知将ソーシア監督は、以前から松井を高く評価。松井の希望を聞いて外野守備とＤＨの併用を今オフ早い時期から検討した。ヤンキースに厳しい仕打ちを受けた松井には心温まる対応だった。

【豊富な日本食と温暖な気候】

　両ひざに故障を抱えている松井にとって、夏の短いニューヨークと、年間を通じて温暖なカリフォルニア州アナハイムでは選手寿命にかかわるほどの差がある。アナハイムはアジア系の人口も多く食事や生活も楽だ。松井は好き嫌いはないが、渡米７年が経過しても基本的に和食主義。日本食レストランが多い街でないと生活はしづらい。獲得に名乗りを上げていたホワイトソックスのあるシカゴも日系人が多いが、寒すぎて故障を抱えている松井には向かなかった。

【王道を歩むプライド】

　温厚な性格の松井だが、野球に関しては太い信念を持っている。所属チームは、優勝が狙える名門チームであることを最も大事にしている。

　オリオールズが複数年契約など最も好条件で松井獲得を狙ったとされるが、優勝する可能性のない弱小だけに、いくら金を積まれても松井の気持ちは動かなかった。エンゼルスはプレーオフ進出常連の西の王者。巨人−ヤンキースと王道を歩み続けてきた松井のプライドは、エンゼルスなら保てる。また、同じア・リーグのヤンキースにリベンジする機会もある。

【私生活のガード】

　松井は、妻のプライバシー管理には神経質ともいえるほど厳格な対応を取っており、一昨年の結婚後一度もマスコミに登場させていない。あまり人気のない地方都市では日本人は目立つ。

　しかし、ニューヨークを上回る全米ナンバーワンの人口を誇る大都市ロサンゼルスの郊外なら好都合。日系人も多く、夫人に好奇なまなざしが注がれることもなく、プレーに専念できる。