■ 結城浩 『数学ガール』シリーズ
数学青春小説。「僕」と3人の少女が数学の問題に挑むなかの人間模様を描く。物語として読ませつつ、数式もしっかり使う。しかも書き方が丁寧。ダイナミックな論理展開を追体験し、小説に心打たれる。数学が好きな人も、苦手な人もぜひどうぞ。
○既刊は『数学ガール』『数学ガール/フェルマーの最終定理』。出版社はソフトバンククリエイティブ。『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』が年内刊行予定。
■ 宮腰忠『高校数学+α:基礎と論理の物語』
高校・大学レヴェルの数学を自分で学ぶための本。数学をじっくり勉強したい人におすすめ。
私は中3の冬から高2の夏にかけて読んだ。今はオイラーの公式に辿り着いたところで止まっている。〈証明を読んだらいったん本を閉じ、ノートに内容を再現し、つまずいたらまた本を見直す〉という平凡な方法で勉強(この方法は多くの教科で有効)。一番の収穫は、公理主義を身をもって感じたことだった。指数関数の拡張の際、指数法則が定理から公理・定義に変わることの意味。これに気づいた瞬間は忘れがたい。言葉で理解するのではなく、理解が体の底から襲ってくるというか。現象としての数学から、私たちが作り上げる数学へ。事実とは、意味とは? 私にとって現在進行形の問題。
○共立出版より。続編『高校数学+α:なっとくの線形代数』は別の内容。
■ ポール・グレアム「知っておきたかったこと」
プログラマにしてエッセイストであるグレアムが、「高校生の時に、誰かがこれを教えていてくれたらなあ、と思うこと」を書いたもの。一時期影響を受けた(つもりだった)。ウェブ上で川合史朗さんの日本語訳が読めるので、検索されたし。
■ 授業のノート
多めに書く。黒板の内容を書くだけではなく、先生が口頭で言ったことをノートの余白にメモする。概念や方針の説明や問題提起や、そういったものは文字にしないことが多い。それが板書に価しないからではない。大切な感覚やイメージを伝える時には教師も言葉を選びながら語るのであって、黒板に書きつつ話すわけにはいかないのだ(メールで告白せずに直接会って思いを伝える、というのと似ているか)。
あと、裏紙や反故をふんだんに使った。計算用紙やメモとして殴り書き。小さい頃の落書き帳の延長でもある。友達とホームセンターでコピー用紙を買えば安い。
■ 新古今和歌集
虚実を彷徨う言葉、堕落する寸前の美しさ——しかしそこにある、確かな手応えへのつながり。去年の暮れから岩波文庫で読んでいる。本歌取りとか分からないが味わえる。白洲正子『花にもの思う春』(平凡社ライブラリー)や堀田善衛『定家明月記私抄』(ちくま学芸文庫)の影響も大きい。気分や季節に合わせてどこからでも読め、途中でやめやすいので和歌集はおすすめ。詞書も含めると結構な語彙になるので勉強にもなる。
ちなみに、日文研の和歌データベースがオンラインで使え便利である。最近入手困難な『山家集』もここで読めた。
■ ネット上の英文
インターネットがあれば、英文を浴びることができる。ブログから古典までタダで読むことができ、おしゃべりからニュースまでタダで聴くことができる。問題集の外に広がる「生」の英語に触れるとかなり自信がつく。自分の興味を満たすことができ、かつ英語の練習になる。辞書を片手にたくさん読みたくさん聴けば、単語集なしでも実力がつく。
英語が苦手な人向けには、 Yahoo! Answers (英語版Yahoo! 知恵袋)などに分かりやすい英文が転がっていると思う。適当に "soccer" とかで検索して、質問と回答を読む。好きなアーティストの名前などで調べてもいい。中学生レヴェルの文章でも本物を読むと自信になる。英辞郎や LDOCE など、無料の辞書サイトもあり利用できる。
英語の得意な人は、New York Times などの英字新聞サイトや普通のブログをどんどん読もう。私は気に入ったページを翻訳して自分のブログで公開したりした(著者にメールで許可をとる必要あり)。
ふつうに洋書を読むのも楽しい。Amazon でいろいろ買えるし、著作権切れの古典はProject Gutenberg でタダで読める。私は高3の秋にアダム・スミスをダウンロードして読み始め、大学のレポートでも使った。小説もある(関係ないが、漱石とか芥川龍之介などは青空文庫で読める)。
読むときに全訳とかはしなかった(翻訳する場合は別)。入試を考えても、英語を英語のまま理解することは、和訳の技術より優先順位が上だと思う。
■ ネット上の英語音声
Podcast を聴いた。これはインターネット上のラジオ番組みたいなもので、ダウンロードしてパソコンでいつでも聴けるし、iPodなどのMP3プレーヤでどこでも聴ける。アルク社のサイトには英語学習用の「おすすめポッドキャスト」一覧があり、それを見ていた。以下は私が聴いていたもの。検索して、試しに聴いてみていただきたい。
・ESL Podcast: ゆっくり話す。使う単語も簡単。ダイアログ放送→英語で解説、の順で進む。海外のポッドキャストの入門にいい。1回15-20分の放送。
・Grammar Girl's Quick and Dirty Tips: "Grammar Girl" が文法のコツを教えてくれる。1回約6分。ナチュラルスピードなのに聴きやすい話し方でいい。
・Business English Pod: 中上級レベルのスピードと単語。ダイアログ放送→英語で解説→重要表現を使った練習問題、の順。練習問題は結構難しい。ビジネス表現が豊富(入試にもOK)。1回約20分。
・Just Vocalubulary: 4分で単語2個を紹介。例文→意味(英英)→類義語、の順で説明。ゆっくりで聞き取りやすい。単語は受験レベルを少し超えているかも。
・Podictionary -- for word lovers: おすすめ番外編その1。語源好きのおじさんが語源についてアツく語る。個人的にはまった。1回4分前後。ナチュラルスピード(ネイティブ同士の会話くらいの速さ)。
・Philosophy Bites: 哲学者の対談。1回20分前後。ナチュラルスピード。
さて、入試のレヴェルは ESL と BEP(か GG)の間くらいで、「ネイティブが外国人に丁寧に説明するときの速度・難度」という感じである。聴いていてなんとなく話題が分かる程度で満足し、たくさん聴いていた。分からなくても雰囲気や知っている単語から推測して聴きつなぐのがコツ。
入試用問題集よりもこういうものの方が飽きないと思う。問題演習も大事だけど。あと、目や耳にした表現が英文を書く際の種になるので、英作文の準備にもなる。
■ 英英辞典を使う
日本語を介さずに読む上で大切だった。英語に触れる量が増えるし、例文も英和辞典より面白い。ちなみに今年のセンター試験では英英辞典に関する長文が出た。これは高校生にも英英を勧めるメッセージだと思う。
高校生向けの電子辞書にはたいてい英英が入っている。これから買う人には Longman Dicitionary of Contemporary English を勧める。単語の意味の説明が分かりやすい。あと、新たに電子辞書を買う人は、大学生モデル・英語学習モデルと銘打っているものがいいと思う。LDoCE か Oxford Advanced Learner's Dictionary あたりが入っているはず。高校生モデルの年号暗記機能などはあまり使わない。
Amazonで買う時は検索範囲を「洋書」にするといい。「和書」だと日本の出版社が間に入るので高くつくことがある。
最初のうちは英和辞典と併用した。いきなり英英だけだと挫折しやすい。〈知らない語が出てくる→文脈で意味を推測→英英を見て意味を考える→英和を見て確認〉という流れで読み進める。電子辞書だとボタン一つで英和と英英を切り替えられて便利。英英が何冊も入っている機種の場合、それらを見比べるのも勉強になる。
慣れてきたら、英和を見ずに英英だけで読解を進めるようにする。初めは単語の意味を誤解して覚えてしまわないか不安だが、しばらくすると英英辞典だけでも問題ないことが分かる。日本語を介さずに勉強できるようになる。大きな進歩だ。英英に慣れると、英和辞典に辞書制作者の苦悩を読み取れるようになるだろう(これはやりすぎ)。
■ 単語の身につけ方
訳語を覚えるのではなく、単語の雰囲気を掴む。辞書を見ると単語一つにたくさんの意味が載っているが、根本は一つ。その根本イメージを感じ取る。自分なりのイメージで構わない。日本語でも、単語の意味を厳密に説明できなくてもなんとなく使えているのだから、大丈夫。
前置詞などの基本単語に関しては、特に雰囲気・イメージが重要。大西泰斗先生の本が分かりやすくておすすめ。
また、電子辞書では例文検索機能が使える。特定の単語を含む例文を列挙することができる。例文から単語の使われ方を理解する。英作文の際に検索してヒット件数の多い方の表現を採用する、という使い方もした。
長文を読み、番組を聴き、わからない単語があったら英英で調べる。「この単語、前に見たけど何だっけ」と言いながらまた英英をひく。この繰り返しだった。私は単語集は使わなかった。単語集のよりも辞書の方が内容が豊富だし、根性で覚えてもすぐに忘れてしまったもので。
■ 語源を知る
international が inter(間)+ nation(国)+ al だとか、ラテン語の接頭辞を使ってobject, reject, inject をまとめて理解するとか。それほど重要ではないが、単語のイメージを構築する上で役に立つ。語源は一部の英和・英英辞典に書いてある。
電子辞書の場合、"*ject" でひくと ject で終わる単語を検索できる(ワイルドカード)ので便利である。ちなみに、リスニングで単語の一部しか聞き取れなかった時も、こうすると調べられる。
高3の頃、私は語源にはまった。英語の語源を理解しようとすることは、印欧語族の精神史——ブリテン島からインド亜大陸に至る歴史——を追うことにつながる。綴りを見て語源を当てたり、図書館にあるオックスフォード大辞典で古英語に溺れたりした。現実逃避であり、やりすぎである。
■ D. R. ホフスタッター『ゲーデル、エッシャー、バッハ』
最後に今読んでいる本から一冊。数学、論理学、人工生命、音楽、絵画……と話題は多岐にわたり、それらを自己言及を軸に語る。知的にくすぐられる。著者が面白がって書いていることがよく分かる。ついでにバッハの「フーガの技法」を聴いていただけると嬉しい。
○白揚社より。
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