回避可能性「記載しない」方針を最終決定―産科医療補償制度
日本医療機能評価機構の産科医療補償制度原因分析委員会(委員長=岡井崇・日本産科婦人科学会常務理事)は12月15日、第10回会合を開いた。これまでの議論で争点となっていた「(脳性まひの)回避可能性」の原因分析報告書への記載については、原則として記載しないことを決定した。ただ、家族からの質問に対する回答として、報告書とは別に「回答書」を作成し、回避可能性について触れざるを得ない事例については記載することになった。
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「回避可能性の記載」や「家族からの質問に対する回答」については、これまで同委員会で議論されてきたものの意見がまとまらず、別途話し合う「打合せ会」が2日に開かれた。話し合いは非公開で行われ、医療者側委員4人と有識者委員3人などが参加した。
事務局によると、2日の話し合いでは岡井委員長が、報告書に回避可能性を記載しないことや、回避可能性について触れざるを得ない事例を含め、家族からの質問については報告書とは別に回答書を作成することなどを提案。これに対し有識者委員は、医学界がやる気を出さないと原因分析は進まないとして、賛同はできないが、最終的には医療側委員の考え方で進めるしかないとの結論に至った。
ただ、岡井委員長の考え方が医学界の総意かどうかについて、公開の場で医療側委員の意見を求めるべきとの提案があったことから、15日の同委員会で方針を決定することになった。
この日の同委員会では、事前に送付された岡井委員長の提案に対する医療側委員11人の回答が示された。
それによると、脳性まひの回避可能性を記載しないことには全員が賛成。また、報告書の本体とは別に、家族の質問への回答書を作成することにも全員が賛成した。一方、家族から回避可能性に関する質問が寄せられ、それに触れざるを得ない事例の場合でも回答書を作成することに対しては、1人が反対、10人が賛成だった。
この日の「回避可能性」の議論では、事前の「打合せ会」で、有識者委員は傍聴のみで一切発言しないことになっていたが、意見を求められた隈本邦彦委員(江戸川大メディアコミュニケーション学部教授)が、「委員長の意見、賛同する意見の中にも、回避可能性を指摘することが訴訟の種になるという表現があるが、わたしはそう思っていない」と表明。「多くの国民は、医者の分析を権威あるものとして見ている。しかし、国民が何かを信頼する時に権威だけでは信頼しない。権威と中立性、公正性というものを感じた時に信頼する。最終的には信頼性の問題。その信頼性に間違ったメッセージを送るのではないかと非常に危惧している」と訴えた。
これに対し岡井委員長は、「国民の皆さんが信頼してくれるかどうかは、実際に出たものを見て、それから判断してほしい」と強調。その上で、「大事なことは、脳性まひを減らしていくために医療界全体が進んでいくこと。きちんとした分析ができて、それで学会や医界が防止に取り組む姿勢を強めていく」と述べ、医療提供者側の協力を得る必要性を訴えた。
これを受け隈本委員は、「正しいことを正確に発言していれば世間は必ず受け入れると思ってはいけない。信頼されるための姿勢を見せなくてはいけない」と強調した。
次回会合は来年1月に開かれ、原因分析報告書作成マニュアルを決定するほか、同委員会の部会と合同で、実際の事例について原因分析を始める予定。
更新:2009/12/15 22:15 キャリアブレイン
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