１月２４日（水） 午後６時半〜
フォーラム神保町・勉強会
講 演：山口二郎（北海道大学教授）「政治とメディア」
対 談：山口二郎VS佐藤 優（起訴休職外務事務官）
に参加してみました。
ビルはすぐに分かる神保町交差点の細い雑居ビル（稲垣ビル）
稲垣ビルの看板と最上階に「解放出版」の看板が見えました。
エレベーター脇６Ｆの表示に「神保町フォーラム」と書いてあります。
10〜15分くらい前に入室したのですが、まだガランとしていて、関係者らしい若い人数人に混じり写真で見知った宮崎学氏がおられました。
受け付けの若い男性に名前を名乗ると、参加者リスト（パソコン打ちの氏名だけの簡単なもの）にはe-mailで2日前に連絡したはずの私の名前がなし。あ、結構ですと最下段に手書きで名前を加えていました。
会社名、会社住所、電話など全く関係なし。いわんや名刺も受けている風もない。この人に色々聞いても仕方なさそうなのでそのまま席に。
（受付に関しては既報のとおりいろいろ問題がありそうなので、追って必ず明確にしようと思います）
部屋は長方形ではなく対辺がふくらんだ？角部屋。奥の白板前に演壇テーブルを置き、そこに向って折りたたみイス（小机付き）を６脚横×４列置き、あとは小机なしのイスを部屋の横幅が狭くなるのに合わせ５脚、４脚とおいて計３３でほぼ一杯。
あとは入り口近くの応接ソファー、パソコン2台などがある空間の隙間に無理やり詰め込んでどのくらい入るだろうか？５０人はちょっときついのでは？というのが印象です。
ところで窓際には本棚があり、月刊現代、週刊現代、ＳＡＰＩＯ、一冊の本、週刊新潮、文藝春秋、政論、諸君、世界、中央公論、その他実用本などがきれいに並んでいました。
はじめの5種のバックナンバーが一番充実していたようです。佐藤さんが持ち込んだのでしょうか？
６：３０定刻には17人くらい。
魚住昭さんがニット帽子、ジャンパーというラフないでたちで入室。
６：４０佐藤優さんが4人ほどの方と入室。
佐藤） 山口さんが見えるまで、前座を務めます。今日は山口氏をどうとらえるかという切り口で、５つの柱をたてます。
（今日はとりわけ早口でメモ難しいが後で振り返って自分で意味の分かる内容に要約しています。しゃべったことはこの3倍くらいはあるでしょう）
�� 現役時代、山口さんを知ったのは鈴木さん経由。その後野中さんからも。
�� 社会民主主義
�� 変化の途上にある山口氏
�� イギリス政治、とりわけ労働党、スコットランド政治の専門家。
�� ファシズム論：反ファシズム統一戦線――国体護持の側から共闘できると思う。
魚住＝司会者という立場で仕切り）
山口さんは本日北海道から羽田に来るのですが、遅れていて8時くらいになりそう。着いたら山口さんの講演と休憩をはさんで佐藤さんとの対論の予定。終わりは9時半くらいになるかも。
佐藤） 第一点：現役時代、山口さんを知ったのは鈴木さん経由。その後野中さんからも。
朝日新聞社から出た『代議士とカネ』という本に鈴木宗男の章があった。これを書いたのが山口さん。
「派閥の領袖でもないものが、5億円くらい集めている。広く薄くのその集め方が権力強化につながり、大きな声でカネを集めてはばら撒く。田中型の政治が日本を腐らせた」
「鈴木は脱皮しつつある。ロシアのエネルギーに対する関心で北方領土をやっているのだろう」
「側近型政治家では納まりきれない。近未来に、、？民主党から出る？頭がいいから」＝意味不明。
この本が出たことによって、野中氏が鈴木宗男は他の議員から嫉妬を買うと。
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＜筆者：このあたりの事情の一端は下記参照＞
（１００％ムネオマガジン、Ｐ．118〜119）
――山口先生はかって、鈴木さんを評価していませんでした。
山口 あれこそ悪の元凶だと思っていましたね。
――今はどう変わりましたか？
山口 そうですね……。
私は以前、批評を書いているのですが、『代議士とカネ』という本。「ネオ・ニューリーダーをねらう土着政治家、鈴木宗男」というね。
これは鈴木さんも「的確だ」と高く評価されているそうです。
真のリーダーになるにはいくつもの難問がある。ひとつは政治戦術、選挙の関連で本拠地がないということ。これはもう政治家の本質とは関係ない。もうひとつ、もっと根本的な問題は利益誘導型政治を卒業できるかということ。
自らへの忠誠の度合いに応じた「恩賞」として公共事業を配分するというのは間違っている、と私は考えていました。これはさっき話した、中央集権官僚支配で、官僚の裁量で予算、補助金をつけてやるということ。そういう日本の行財政、中央集権構造に食い込んでいって、カネを引っ張り出すという意味で力を持った政治家だと。鈴木さんを見ていて、そういう政治こそが、結局日本の政治を駄目にしている、もっと根本的な中央集権や官僚支配の仕組みそのものを変えるような政治的構想力がいま必要なのだから、鈴木のような政治家は早く淘汰されてほしいと思っていました。
そういう評価は今も変わっていないのですが、彼が汚職で捕まり、裁判にかかったことで状況ががらりと変わり、彼も変わったわけです。それは与党にはもういられないということ。彼自身もそこははっきり見切って、自分の残された政治家人生で、自分を切り捨てた従来の官僚支配構造やそれと結びついた小泉政治を批判し、その欺瞞性を訴えていこうというふうに、自らの役割を新しく見つけたと私は思っている。その限りにおいては私も大いに協力をしたい、ということです。いままで「族議員中の族議員」として予算配分に精通し、ある程度、官僚機構を操ってきた鈴木さん。それだけに今度はその仕組みを批判する側に回り、実力者時代に得たさまざまな経験を活用してもらいたいし、桐喝とか言われた政治的才能を大いに活用してほしいと思いますね。
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佐藤） 第2点：社会民主主義について
戦前のマルクス主義の歴史は日本資本主義論争（労農派、講座派）の内ゲバの歴史。
戦後、山川均：ソ連侵略を阻止するために非武装中立論。先坂逸郎：レーニン主義・ブレジネフ型マルクス主義支持。
新しい社会党：土井たか子→福島
社会党を支えた山口理論＝フェビアン主義（フェビアン協会）＝イギリス労働党の理論＝経験主義＝懐疑主義＋プラグマティズムの側面。
強力な党ではなく共同体＝サンディカリズム、アナーキズムともつながる。
日本では例外的に労農派マルクス主義の影響を受けている。
佐藤） 第三点：変化の途上にある山口氏
社会党のイデオローグとしての立場
２大政党制で社会党は英労働党になる。小選挙区制と親和的。
佐藤は２大政党制になっても利権と人脈で別れると見ている。
新自由主義傾向＝前原、岡田もそう。小沢は新保守主義。自民党も小泉から加藤紘一までいろいろ。
山口は社民党に近づいている（最近の社民党は別物）
岩波から出た和田春樹の本に、「言論の世界では強い左翼の存在が中道を担保する」
社民党は圧倒的少数。保守勢力＝草の根保守との同盟が必要。
最近出た岩波の対論集「『強者の政治』に対抗する!」では鈴木宗男とたいへんかみ合っている。
佐藤）第四点：イギリス政治、とりわけ労働党、スコットランド政治の専門家。
日本は旧帝大を通し異常にマルクス主義の影響の強い国。
エンゲルスの反デューリング論の影響を強く受けた？フェビアン主義は理論的に取るに足らないものと切り捨てられた。
イギリス労働党、ドイツ社民党などはあたかも反共政党であるかのように描かれ、実情は日本に伝わらなかった。
イギリスはグレートブリテン及び北アイルランド連合王国（The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland）が正式名である。
グレートブリテンもイングランド、スコットランド、ウェールズに分かれ、スコットランドなどは、スコットランド銀行発行のポンド紙幣。
この分野の実証的研究の第一人者。
北海道、沖縄、あるいは長野あたり地方分権につながる。
（このあたりで山口氏到着）
佐藤） 第五点：ファシズム論：反ファシズム統一戦線――国体護持の側から統一できると思う。
壬申の乱以前の近江朝のような時代がいい。
うまいパートナーがなかなかいない。
今の社民党は新自由主義に近いような人だ。お金儲けのうまい弁護士さんだとか、警察にすぐ謝ってしまう人とか、、。
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19：10〜20：15
山口二郎氏講演
参考１．山口二郎
参考２．YamaguchiJiro com.
参考３．『「強者の政治」に対抗する！』（岩波書店, 2006年12月）
これは世界2006.2〜8月号の対談をまとめたもの（ただし小池晃は本人意向で未収録）
鈴木宗男、加藤紘一、亀井静香、高樹のぶ子
平岡秀夫、辻本清美、片山善博、目取真俊
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「フォーラム神保町で配布された山口二郎氏のレジュメ」
安倍政治にどう対決するか 2007.1.24
赤字は私が山口氏の発言をメモしたものです。
はじめに 戦後民主主義の黄昏
• 新たな国内植民主義 自己責任で納得する弱者
沖縄：高市発言＝出来高払い発言、しかし追い風にならず。夕張市：三井、三菱が石炭を掘るだけ掘って放り出したことに遠因。これらはイジメ。それにきちんと反撃しない。何となく自己責任として納得してしまう。
• 戦後民主主義的クリーシエ（cliché）の無効化
１ 戦後民主主義体制はいかにして壊されたか その１ 内政面
（１）戦後民主主義の再分配政策
• 成功した社会民主主義の虚実
裁量政策と官僚支配、族議員政治、囲い込み社会とリスクからの保護、結果としての総中流社会
• 貧弱な福祉国家
きわめて少ない教育・医療予算、税に対する認識のゆがみ 特に左翼の側
• 代償としての政治、行政のひずみ
田中・竹下政治と腐敗、官･僚支配と市民社会の未成熟
（２）新自由主義の政治戦略
• デモクラシーに対する深い諦観
圧力政治と既得権の駿雇、公共領域に対するニヒリズム、民主的改革に対する諦め
官から民へ
談合＝日本的パターナリズムの聖域に公取と検察が手を突っ込んだ
• 市民から消費者へ
数値目標による問題の単純化、選択の自由の強調、参加から離脱による淘汰へ、例：足による投票、デフレ時代の公共サービス
質の切り捨て、教育バウチャー、フジヤ
（３）小泉人気の構図――弱者はなぜ「小さな政府」を支持するのか
• 否定的イメージとしての再分配政治
非効率性と大都市の不満、自民党の停滞と機能不全、官僚の硬直化と予算の無駄遣い、「囲い込み社会」崩壊の爽快感
山口二郎のＨＰに詳しい世論調査を載せてあるので参照方
• 大きな不平等と小さな不平等
グローバル資本主義が生み出す大きな不平等、公共セクターが生み出すプチ不平等、プチ不平等を怨む人々の正義感と平等意識
マスコミのある種のセンセーショナリズムもあって、、
• リスク社会化システムの機能不全
搾取としての社会保険システム、リスクに対する共感、連帯の欠如、小さな政府がもたらす平等という錯覚、下に向かっての平等
低所得層、若年層には社会保険負担が搾取になっている（払えない、もらえない）
２ 戦後民主主義体制はいかにして壊されたか その２ 憲法と安全保障
（１）戦後憲法体制における３つの勢力
• 反動的国家主義
正しい戦争という総括、屈辱としての戦後憲法体制、自衛力への要求
• 戦後憲法ファンダメンタリズム
９条の忠実な解釈、非武装中立という理想、「３分の１」での満足＝改憲阻止が最大目標
ファンダメンタリズムとは否定的な意味で使っていませんから
• 合理主義的な開明保守
９条効用論、アジアへの視線と対米協調、経済中心の国家運営
テクノクラート大平、宮澤系、加藤紘一
（２）「９条＝安保体制」の構図
• 1960年以後の保守の変質
安保闘争の教訓と戦後憲法体制の安定化、高度経済成長と利益配分政治、紛争ただ乗りによる経済繁栄
５５年体制＝１＋1/2（一価二分の一体制）
• 憲法政治の変容
解釈改憲と専守防衛路線、最小限度の自衛力と日米安保の接合、９条＝海外で軍事力を使わないという戒律
ありがたいお守り
（３）ポスト冷戦時代における「９条＝安保」体制の崩壊
• アメリカの変化
資本主義陣営の悩める盟主から世界唯一の超大国へ
−極主義路線と日米安保の意味変化
• 自ら縊路にはまった日本
戦後世代の退場
現実感覚なき右派の台頭→すぐに武器を持ちたがる
アジアでの孤立と対米従属の連結
• 護憲派の衰弱
軍事力をどのように位置づけるか
「９条を守ること」をどのように定義するか
今更自衛隊＝違憲はない。護憲の再定義がうまくいかなかった。自社さ政権、あれこそ護憲派だった。「攻められた時にどうするか」の答えを出さないと信用されない。
３ 日本の現状と誤った処方箋
（１）社会経済状況：リスクの普遍化
• 日本的セーフティネットの崩壊
企業 雇用構造
地域社会 公共事業
• 民のモラルハザードがもたらすリスク
粉飾 耐震偽装＝生命、財産への脅威
安全投資の手抜き
• 自然災害と環境リスク
過疎と高齢化→地域における危機管理能力の低下
• 生活に関わるリスクの増加
医療、介護の不備→高齢者の犯罪増
吹世代育成のリスク→少子化、家族の疲弊
（２）安倍政治の矛盾
• 新自由主義とナショナリズムは両立するか（変に手を組んでいる）
リスクの個人化とパターナリズムの結合
個人のダプルバインド状況
強者によるいいとこ取り
経済界へ従属する保守政治
日本の法人税が上がったら海外へ逃げるぞという経済人が愛国を説く
• 軍事面での積極化を担う実力はあるのか
イラク戦争の総括とリーダーの質
防衛省は何をするのか
日本版ＮＣ Ｓは何ができるのか
小泉とオーストラリアのハワードだけが無傷
（３）これから何をなすべきか
• メディアの責任
２つの座標軸でものを考える
うまい話に気をつける 「納豆ダイエット」の教訓
悪者捜しに荷担しない
誰に対しても同じ態度でものをいう
経団連に対する新聞報道の偏り。
岩波の「世論」（ウォルター・リップマン）を呼んで欲しい。
検察の裁量権の問題性、恐ろしさ。
• 個人の責任
人間の尊厳を守る
権利を堂々と主張する
• 政治の再編成
新しい社会民主主義的連合
新しい護憲の戦列
佐藤さんの言う、一歩踏み出す、リスクをとる。加藤紘一など自民党に見切りをつけるべき。リスクの社会化とパターナリズムでない個人の主体化。
図１ 政策分類と政治勢力の位置付け
リスクの社会化
↓
伝統的自民党 西欧福祉国家
日本版第三の道
裁量的政策←---→普遍的政策
小泉改革�供� アメ リカ型競争社会
小泉改革 Ｉ
↓
リスクの個人化
図２ 日指すべき社会モデル
リスクの社会化
↓
伝統的共同体
日本的雇用 市民社会民主主義
央地方関係 etc
パターナリズム←----→自立
不平等な管理社会 愛国心の強制 アメリカ型市場社会
共謀罪
監視社会 etc
↓
リスクの個人化
資料１ 日本経団連 「希望の国、日本（いわゆる御手洗ビジョン)」〈2007.1.1)より
「希望の国を実現していくには、経済・社会に加え、教育や政治・憲法などをイノベートしていくことも欠かせない。 （中略） 学校や家庭での教育を通じ、歴史的に形成されてきた国民、国土、文化、伝統からなる共同体としての日本を愛する心と、その一員としての誇りと責任感を培っていくことが求められる。美しい薔薇が健やかな枝に咲くように、美徳や公徳心は愛国心という肥沃な大地から萌え出る｡」
資料２ 奥谷禮子（ザアール社長）の発言
「(ホワイトカラー・エグゼンプションが）過労死を招くという反発がありますが、大体経営者は、過労死するまで働けなんと言いませんからね。過労死を含めて、これは自己管理だと私は思います。（中略）自分でつらいなら、休みたいと自己主張すればいいのに、そんなことは言えない、とヘンな自己規制をしてしまって、周囲に促されないと休みも取れない。揚げ句、会社が悪い、上司が悪いと他人のせい。（中略）「残業が多すぎる、不当だ」と思えば、労,働者が訴えれば民法ですむことばないですか｡」（『週刊東洋経済』２００７年１月１３日号）
つづく
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