◇-『北朝鮮は金のなる木』を豪語して統一教会の文鮮明と野合するマダム朴・朴敬允の正体を暴く!-噂の真相:1992年11月4日(8/30-03:23)No.4210 ┗オウム真理教殲滅摘発劇に残る謎に満ちた不透明部分を追撃!-噂の真相・1995年7月2日(9/8-17:37)No.4240
4210 | 『北朝鮮は金のなる木』を豪語して統一教会の文鮮明と野合するマダム朴・朴敬允の正体を暴く! | 噂の真相:1992年11月4日 | 8/30-03:23 |
噂の真相:1992年11月4日 「『北朝鮮は金のなる木』を豪語して統一教会の文鮮明と野合するマダム 朴・朴敬允の正体を暴く!」 ――高野孟はこれでもジャーナリストをまだ自称するつもりか!!―― 野田紘一(ジャーナリスト) ● 「インサイダー」と謎の同居 東京の麻布十番には変ったビルがある。オーストリア大使館の向かい側で、 近くには韓国大使館があり、5階だての、見た目はごく当たり前のビルだ が、表通りに掲げた看板には「インサイダー」と小さく書かれている。「国 際ジャーナリスト」高野孟の発行する情報紙の事務所が入っているのだ。し かしビルには、なぜかもう一つ入り口がある。ビル横の駐車スペースを入っ て行くと、入口の上に「金剛山国際観光」と書かれた大きな看板が、表通り からは目立たないところに掲げられている。入ると「インサイダーへおいで の方は、こちらからは入れません」という断り書きが出ている。しかし、入 ってみるとまったく同じフロア。「金剛山国際観光」と「インサイダー」の オフィスは入り口は別に構えているが、実は中でひとつに繋がっている。そ してこの金剛山国際観光こそ高野孟のスポンサーとしてしばしば本誌に登場 する謎の女性「マダム朴」の経営する会社なのである。 金剛山国際グループは、1991年10月に組織されたばかり。5つの会社で 構成される一大事業体である。1988年9月に北朝鮮との間でフィフティ の比率で作った合弁会社「金剛山国際貿易開発会社」。同11月に羊角島ホテ ル建設を目的に成立した「金剛山国際観光会社」。北朝鮮への直行便を飛ば すための「金剛山国際航空」(エア・コリア)。経済・金融の自由化を踏ま えた「金剛山国際株式会社」、そして「高麗商業銀行」である。資本金はそ れぞれの会社が500万ドル。現在、平壌、北京、香港、東京、台湾に事務 所を置いて活動している。 これらグループを構成する企業の業務内容をみると貿易・通商、航空・運 輸、観光・リゾート、建設、不動産、金融・証券ほか、商業のあらゆる範囲 をカバーし、いずれも北朝鮮と密接に関係する。まるで北朝鮮の「仮設通商 代表部」の趣きさえあるのだ。いったいこの金剛山図際グループとは、そし てそのオーナーである「マダム朴」とは何者なのか。「マダム朴」は本名を 朴敬允という在米韓国人女性。北朝鮮ロビーで金日成親子から対日交渉を商 業面で一任され、日本の政治家もかなわぬ政治力で北の利権を一手に掌握す る人物である。彼女の絶大なパワーを示す一例は、北朝鮮へのビザの発給で ある。金剛山国際観光は、なんとビザの発給窓口業務まで行っているのであ る。 今回の北朝鮮と台湾の国交回復も彼女が橋渡し役であり、6月5日北朝鮮の 大物政治家・催鼎根(朝鮮労働党貿易部長)の訪台も彼女のセッティングで ある。北朝鮮との窓口業務は、従来は朝鮮総連だったのだが、マダム朴は 「朝鮮総連など頭の古い連中」と一蹴、相手にもしていない。「いくら社長 がアメリカで財をなした女性だといっても、よほどのスポンサーなしにはこ こまで手広くやっていけない。朴のバックには文鮮明がいると思っていた。 我々は彼女を北の内部撹乱を狙った韓国安全企画部の謀略の手先と考えてい たくらいです」(「朝鮮新報」記者)いずれにせよ朝鮮総連、民団にとって は、朴敬允が非常に面白くない存在であることは間違いないだろう。 ● マダム朴の〃“バツイチ履歴書”二度目の夫は大物経済人 91年9月17日南北朝鮮の国連同時加盟が実現し、アントニオ猪木参院議員ら の日本人有志が超党派で発起人になって「南北国連同時加盟記念祝賀会」が 盛大に挙行された。仕掛人は「コリア・レポート」辺真一編集長である。そ の会場にマダム朴がいた。笑うとアキノ大統領に少し似ている容貌だ。 マダム朴は57歳。1935年韓国忠清北道清州に生まれ、ソウルの首都女子 高を卒業後、在韓米軍関係の事務員になった。表向きの履歴書では梨花女子 大卒業と称しているが、これは虚偽の学歴である。彼女の英語力を磨いたの は女子大ではなくもっぱら米軍将校たちだった。後に米国人の紹介で渡米 し、彼女はオクラホマ州立大で会計学とマーケティングを学ぶ。最初の夫 (韓国人)とはそこでの学生結婚。卒業後ロサンゼルスに移り、夫は弁護士 となり、彼女は不動産の斡旋業者になった。しかし最初の結婚はほどなく失 敗した。1974年、彼女の人生にとって最大の転機が、アメリカに不動産 投資を目的にやってきた朴魯貞(日本名・安田英治)との出会いだ。秘書に なり親密な関係を経て再婚し、マダム朴となった。彼女のビジネスセンスは 夫の影響が強い。安田を知る経済人はこう語った。 「安田英治氏は韓国生まれのビジネスマン。戦時中に日本に渡り財をなし、 戦後の混乱期に東京・銀座にビルをたて、ローヤル・レコードという名のレ コード会社を設立した。成功者として韓国人社会では知る人ぞ知る人物で す。今でも彼の銅像がある八丈島のロイヤル・ホテルも彼の所有だった。熱 海にもホテルを建設し、莫大な財を一代でなした。朴さん(安田氏のこと) は結婚でもマダムと同じバツイチでした。韓国で最初に結婚したのは17歳。 そのときの子供が朴三圭、日本名・安田銀治という有名な人物です。アメリ カのラスベガスでカジノを買って新聞を賑わせた、今は亡き実業家です」 (前出経済人) つまり、マダム朴は安田銀治の父の後妻、義母に当たるわけである。 ●朴正熙政権に裏切られた「セナラ自動車疑惑事件」 亡夫・朴魯貞のことを「朴先生」と呼ぶマダム朴。夫の影響は大きい。夫が 韓国で受けた仕打ちは今でも忘れないという。1963年ごろに起こった 「セナラ自動車疑惑事件」のことである。 この事件は1961年の朴正熙軍事クーデターの後、韓国経済復興策の一つ として韓国を代表する自動車産業を育成しようという国策から始まった。当 時のKCIA(韓国中央情報部)部長の金鐘泌(現・民自党最高委員)から 協力要請があり、朴魯貞は日本の日産自動車の部品を使ったノックダウン (現地組立て)の自動車会社「セナラ自動車」を設立した。ところが、政治 との癒着を拒絶したために朴魯貞は生命を落とす寸前まで追い込まれた。韓 国の政治経済に詳しい韓国経済紙の記者は、事件とその裏事情をこう振り返 る。 「朴魯貞は新政権の金鐘泌の資金源に利用されて捨てられた。韓国で一番最 初の自動車会社だったセナラ自動車は利権の温床にされかかった。ノックダ ウンの車は生産コストが安いから価格操作しやすい。セナラの車にも金鐘泌 の取り分が上乗せされた。しかし金鐘泌は配分増加や企業献金を強引に要求 し、拒絶すると朴さんのパスポートを取り上げ、拘束し、拷問にかけた。朴 さんは傷だらけで釜山港から漁船に隠れ、密入国で日本へ逃げた」 この事件は企業と政府の癒着疑惑として韓国では社会問題になった。朴正熙 政権と敵対関係にあった北朝鮮の金日成は事件後に韓国入国禁止となった朴 魯貞を覚えており、その妻だったというマダム朴を信頼したのだと韓国経済 紙の記者は言う。「入国禁止が解けて朴さんは韓国で87年に亡くなり、350億 円と言われた遺産のうち安田銀治が300億円を持ってアメリカに行き、残り50 億円をマダムが相続した。銀治の死後は相続で係争中の不動産などもマダム には有利にはたらいた」遺産を受け継いで、彼女が朴魯貞の遺志から南北統 一のためと、意気込んで最初に北朝鮮へ行ったのは88年の7月の末。彼女が 特許を所有していた米糠と米油を分離する機械を売込むためだったという。 そこで金日成親子に会い、金剛山開発の提案を受けた。それ以来、とくに金 正日書記の厚い信頼を得てマダム朴は北朝鮮での活動を展開しているという わけである。 ●国連同時加盟と合わせて北に合弁会社設立 91年4月には名古屋ー平壌行きの民間人初の直行航空便、エア・コリアを在 日朝鮮人実業家や旅行業者を乗せて飛ばし、6月には南北間の直接交易を実 現。韓国からは米10トン、北朝鮮からは無煙炭やセメントを送る合意書を発 表。バーター取引を成功させ反響を呼んだ。北朝鮮への企業進出を研究して いる経済アナリストは言う。 「昨年9月の南北国連同時加盟とほぼ同時に金剛山国際グループの東京事務 所が、韓国大使館近くの現在地に開設。だれでも日朝国交正常化のあかつき には、ここが北朝鮮の貿易代表部の役割を果たすのでは? と思った。現に ビザ発給の代行機関のようですし、一企業の業務の枠を超えている。あの興 銀が融資しているという噂さえある。興銀カリフォルニア支店開設には元K CIAの朴東宣が協力したというが、マダム朴は彼とも会っているんですか ら。また、黒沢洋頭取は個人的にマダムと親しいが、噂では弱みを握られて いて頭が上がらないらしい」 日本企業が外国に進出する際、資金を融資するのが日本興業銀行の役割。そ の点ではマダム朴に融資するのは筋違いである。 「確かにマダム朴は、金丸信の訪朝や現代財閥の鄭周永会長の訪朝をセット し、大字グループの金宇中会長の訪朝にも立ち会った。金正日書記と同じマ ンションに住み、専用のベンツで送迎されているVIPとして北では特別待 遇を受けているし、韓国でも盧泰愚大統領の親戚で体育部長官の朴哲彦の個 人的な相談役。アメリカの市民権をもっている彼女は韓国の反共法などは適 用されない。興銀もそこに注目したらしい」(同) 金丸信はじめ日本の政財界とも注目すべき人脈がある。昨年5月の名古屋ー 平壌直行便には金丸信の長男の信吾、竹下派の野中広務が招待された。 「もちろん自民党では羽田孜、石井一など竹下派が中心。アントニオ猪木と も親しいが、彼女は金丸とは特に親しい。金丸の行く所には必ず彼女がエー ジェントのように先乗りしている。北朝鮮訪問も本当の窓口は社会党ではな く彼女だ。台湾訪問も彼女が先に入っている。今年初め北朝鮮が対台湾の貿 易を開放して以来、台湾と北朝鮮との貿易も彼女の金剛山国際グループが一 手に握っている。豆満江開発にも台湾が国連開発計画(UNDP)を通じて 参加を表明したのも全部彼女の根回しだ。航空ルートも日本ー北朝鮮、台湾 ―北朝鮮、韓国―北朝鮮というルートはエア・コリアが押える。まだ商売は 小さいが政治的には極秘ミッションの派遣など恐るべき影響力があるし、航 空の利権は将来凄い金を生むだろう。金日成と金丸は金泳三を通じてホット ラインをもっているが、北と南と日米を自由に動けるマダム朴と文鮮明に は、金丸は頭があがらない。財界もミッションに参加した大企業は『マダム 詣で』のつもりですよ。西武グループが金剛山開発に乗り気で、ある商社は 20億ドル提示とか、羊角島ホテルのマネージメント権もヒルトンと全日空が 競争したとか聞いているよ」(自民党の若手議員) すべては利権がらみの動き。日朝国交回復をにらんでの根回しと事前の市場 開拓だが、しかし、北とのつきあいの前提には大変な問題が横たわってい る。 「戦後賠償金の問題。金丸筋に聞いたら『北朝鮮側には200億から300億ドル 要求させるよう、朴さんに伝えてもらう。そうすれば結果が半分でも100億ド ル、3分の1でも60億ドルで手打ちができる。年間8億ドルの経済援助とし て出せば、その見返りだけで数年は安定した収入が見込める。自民党政権の 安泰がかかっている』と平然とリベート期待発言をした」(前出の自民党若 手議員) 簡単に土下座外交をする理由は金だけで、心中では早く謝罪を済ませてしま いたいだけだという。エア・コリア機内のエピソードだが、金日成が金丸信 宛に生きたボラを10匹土産に持たせた。生きたまま届けるという命令を受け て水槽にエアーを送るボラ要員が2人、平壌から3時間つきっきりで面倒を みた。飛行機が名古屋空港について朝鮮側のクルーと別れるやいなや、金丸 の側近はドライアイスを買い、魚を凍らせて発泡スチロールの箱に投げ込ん だ。 「金丸信の腹のうちを象徴する出来事でしたね。北朝鮮には対日請求権の戦 後賠償金として支払い、日本国内には経済援助という名目で送る。どちらに も都合のよい言い訳をするが利権のため。心ない友情、うわべだけの友好で すよ。10匹のボラのことはマダム朴も知っているし、彼女もまったく同じで す。知らないのは金日成と北朝鮮の人間だけですよ」(ミッション同行者) マダム朴自身も北朝鮮のことを平然と「金のなる木」と言い切る。そこだけ は亡き夫とは違うと韓国関係の企業家は指摘する。 「彼女のセリフでは、『北は天然資源の楽園で金のなる木。韓国がこれを利 用しない法はない。そのためには統一するのが一番てっとり早い』。乱暴な 考え方だと思いますが、彼の取り巻き連中の影響もある」(金剛山国際グル ープの関係者) ●マダム朴の取巻き連中にはウサン臭い面々がいっぱい 金剛山国際グループの土地・建物の登記、会社登記を見ると、ユニークな人 物たちが、マダム朴のまわりを固めているのが分る。 「ビルのオーナー会社の役員は、金剛山グループの会社役員にも名を連ねて いて問題の多い人物たち。なかでも中心人物は、西田憲正、関口勉という役 員です。関口は金剛山国際グループの役員をいくつも兼任しているが、最近 までアイ・ティ・エスという海外旅行代理店の会社を経営していた。この会 社は、あの『幸福の科学』の出身母体として有名なGLAという宗教団体の 『フィリピン・心霊治療ツアー』を扱い、高橋信次教祖と親交をもつなど、 やたらと宗教がかった人物です。マダム朴のような資産家や高橋信次のよう な宗教家に近づく、詐欺師的な人間で、彼はフィリピンの心霊治療ツアーで 知り合ったアメリカ人から、『日本人のすごい霊能者がいる』と紹介され た。それが今、TV等で話題の霊能士・美穂希夕月なんです。関口は彼女を 利用して金もうけをしようと目論み、深いつきあいになったが、逆にアイ・ ティ・エスを売却した5億円のうち1億円を彼女に捧げるハメになった。一 時にせよ美穂さんも『関口は私のカレシなの』と紹介していたほどです。役 員の五十嵐啓子は、関口の愛人という噂がたっている。誰が見ても経営者の 器ではないからでしょう。アイ・ティ・エスのツアーコンダクターだった彼 女が、金剛山国際観光の代表取締役に就任しているんですから。関口はマダ ム朴をスポンサーにして金剛山国際グループで大儲けしようと思ってマダム に近づいたんです。役員の西田憲正は大手町のビル貸し業や鉄鋼の会社をも っていたんですが、バブル経済の破綻で大手町のビルを手放した。こちらも スポンサーが欲しくてマダムに近づいた人間です」(金剛山国際グループ関 係者) 証券相場の予想から運勢占いに凝り始め、神頼みが昂じて「新興宗教」や 「霊の世界」に走るビジネスマンの話なら腐るほどある。しかし、金剛山国 際グループが企業ぐるみで現在もっとも「お付き合い」を深めているのが、 統一教会と聞いたら、もはや「笑い話」では済まないはずだ。 「金剛山グループが統一教会と手を結んだのは、文鮮明とマダム朴の利害関 係が完全に一致したんです。今、五十嵐社長や関口社長が一番の上得意にし ているのが統一教会とその関連会社である世一観光。朴敬允社長が、文鮮明 の北朝鮮訪問を直接つないだことは事実ですし、統一教会側も世界平和教授 アカデミーの福田信之の本『文鮮明師と金日成主席』の中でマダム朴の仲介 があったことを認め、彼女のことを『金正日のアンテナ』と褒め称えてい る。マダム朴はまぎれもなく統一教会に協力的な企業家です」(統一教会ウ ォッチヤー) マダム朴は2年ほど前、中国で・朴普熙を広東省知事から紹介された。朴普 熙は広東省の恵州で統一教会が失敗した自動車会社・パンダモーターの社長 であり、統一教会ナンバ―2の男である。しかし、マダム朴と文鮮明とのつ きあいは同じ在米韓国人同士の社会では、コリアゲートより前からのつきあ いであると、在米韓国人ジャーナリストの一人は断定する。 ●いまや北朝鮮に「聖地」を求める統一教会 文鮮明とも一体化作戦 しかし、クリスチャンであるマダム朴が企業人としてあからさまに統一教会 及び統一グループとっさあい始めたのはここ2年ほどのことである。金剛山 国際グループの朴鐘根・金剛山国際貿易開発社長(北側の代表)をはさんで 朴普熙と北朝鮮対外経済担当の金達玄が極秘のうちに話を進めた結果、91年 11月30日、反共の雄、文鮮明の北京経由での訪朝が実現した。北朝鮮ロビー に直接、文鮮明を紹介したのはあきらかにマダム朴である。 「しかし、金剛山の観光開発や豆満江の開発、南海や木浦にいくら開発の可 能性があるといっても、北朝鮮の経済的困窮はかなり進んでいる。いまから 開発して完成を待っていられない。北朝鮮にはもっと速効性のある外貨獲得 方法が必要だ。そこで文鮮明が信者に彼の生家を訪ねさせ、金日成に援助を 申し出た。合同結婚の延長で考えれば韓国にきた信者の何人かを送り込めば いいわけですから」(統一教会ウオッチャー) 確かに文鮮明の生家観光は、まったく資本投下の必要もないし、いくらでも 上乗せが可能な「錬金術観光」である。文鮮明の生家は平安北道定州にあ り、彼の義理の姉・池治淑や親戚が住んでいる。統一教会の信者は、高級ホ テルを望むでもなく、豪華な食事を要求することもなく、不平ひとつ漏らさ ずに、そこを訪ねるだけで満足してくれる客である。背に腹はかえられない ところまで追い詰められている金日成にとって文鮮明しか残されていないの である。マダム朴にとっても、自分が最初に連れて行った韓国の財閥・現代 グループは金剛山開発の共同声明まで出したのに結局はカラ手形に終わっ た。大宇グループは南浦の視察までやっておきながらこれもホゴになった。 「彼女はカチンときたはず。だから次にやってきた統一グループの文鮮明が 故郷をキーワードに聖地礼拝という形で、世界中の信者に観光させドルをお とさせると見込んで、積極的に提携した。タイミング的にもまだ北側の観光 施設や受入体制が出釆ておらず、JTBや近畿日本ツーリスト、総連系の中 外旅行社等がいくらツアーを募集しても集まらない。文鮮明の目的が『世界 言論人大会』等を平壌で開催するという功名心しかなくとも、マダム側から 見れば、又はアメリカの共和党にも威力を持っており、彼女の対米工作にも 役立つ。対韓国強硬派を抑え、資本投下も期待できる。一方、恩恵問題や核 査察問題で日朝交渉が怪しくなり、結果的に北のイメージがますます悪くな った。しかもホテルはよくないし、食事も御馳走と呼ぶにはかなりの無理が ある。それに異様に高額で、30万円から50万円で値ぎめしているというか ら、上乗せがすぐバレてしまう。その証拠にエア・コリアの第2便、第3便 には飛ばせるだけの人数があつまらなかったはずです」(前出・統一教会ウ オッチャー) そこで急速集めたのが統一教会の関係者たちだった。航空局の調査資料に記 載された名前には、7月の23日から27日のツアーを組んだエア・コリア第3 便では4つのグループの内の4班が「定州・感興視察団」となっており、参 加者は次のようになっている。 宮下昭彦(世一観光社長)・今村政純(世一観光中国室係長)・可知雅之 (世界基督教統一神霊協会教育部教育資料室長)・竹内清治(正心社編集部 論説委員)・竹谷文男(世界日報社編集局編集委員)・小林久人(世界日報 社販売局次長)・福良義昭(ハッピーワールド海外統括室長)・小林登一郎 (丸興 代表取締役)・幸本京子(世一観光中国室社員)・川元謙一(世一 観光高崎営業所所長)・戸丸廣安(ワシントンタイムズ東京支局記者)…と 列記された名前はいずれも統一教会に縁の深い人間ばかり。名だたる「霊感 商法」の販社の名前も一つではない。 しかも斑専属のツアーコンダクターまでつけている。このメンバーの中で も、霊感商法販社と言われる(株)美友(呉服販売)の元社長でもある今村 政純の肩書は今、統一教会の関連会社である世一観光の中国室係長だが、関 連会社のある常務はこういう。 「合同結婚式のツアーをやってる会社が、北朝鮮ツアーもやってると聞いた ので、ビックリしたよ。調べてみたら世一観光の池袋にある中国室の中に今 年になって北朝鮮室ができて、今村が担当係になっている。金剛山国際観光 の専門の担当窓口は彼と幸本だ。金剛山国際観光に電話すると逆に世一の彼 らを紹介してくれる。完全な提携関係だね」 ●いきづまるマダム朴戦略と高野孟「インサイダー」の立場 金剛山観光も節操がないと、業界人は眉をひそめることになる。 「北朝鮮側も観光客の彼らを受け入れるハード面は未整備だが、革命の聖地 白頭山とともに、文鮮明の生誕地・定州を共産主義という国是を曲げてまで 『宗教的聖地』と定めた。これは、合法的に統一教会を北側が認めたという ことです。朝鮮戦争中脱走した痴漢を金ほしさから神聖視するとは、とんで もないことです。マダム朴は、父祖の地を汚す気ですか」(民団関係者) おまけに今回の国際合同結婚式の後、小山田秀生の率いる219人の「三万 双(組)国際合同結婚式聖地訪問団」が定州の文鮮明の生家を訪れ、文の 妻・韓鶴子の生まれた平安南道安州、平壌・万景台にある金日成の生家も訪 ねている。9月4日の「世界日報」はその時の記事で、「私たちは南北統 一、世界平和実現を全面的に支持し、その決意を固めるために来ました」と いう小山田団長の言葉を紹介しているがソウルで脱会した元信者はこう語 る。 「韓国人と日本人の祝福子女(カップル)は中国・ロシアにいく。日本人同 士のなかから700人を選び、北朝鮮にプレゼントを持って入るようにする と言われました」 金を運ぶのは合同結婚式の延長線が延びただけのことなのだ。もちろん霊感 商法や偽募金で集めた金であり、マダム朴のエア・コリアはその金運びの信 者たちで成り立つというわけである。 「マダムは『夫・朴先生は祖国統一のために生き、そして死にました』と亡 き夫について常に朴氏の祖国愛を引き合いに出しますが、ご自身は統一教会 から金をもらい金日成に金を運ぶ仲介屋として会社経営を繋いでいる。亡き 夫、朴魯貞が生きていたら、この妻をどう思うでしょうか。私だったら許し ません」(朝鮮総連関係者) バブルが弾けて苦境に陥ったのか、いまや文鮮明と組まずにはいられない状 況に追い込まれたマダム朴。修羅場をくぐり抜けても祖国統一の夢は捨てな かった夫・朴魯貞なら、この苦境を果たしてどう切り抜けるか、一番聞きた いのは、ほかならぬマダム朴自身かもしれない。 そしてこのマダム朴から西麻布の超豪華事務所の“便宜供与”を受けておい て、素知らぬ顔で国際ジャーナリストとしてブラウン管に登場する「インサ イダー」の高野孟にも、ジャーナリストの立場とは何かをいま一度キチンと 問うてみたいものである。 <敬称略> |
4240 | オウム真理教殲滅摘発劇に残る謎に満ちた不透明部分を追撃! | 噂の真相・1995年7月2日 | 9/8-17:37 |
記事番号4210へのコメント 95年7月2日 オウム真理教殲滅摘発劇に残る謎に満ちた不透明部分を追撃! 捜査情報を一切公開しない公安当局は一体何を秘匿しているのか……。 ●本誌特別取材班 麻原彰晃教祖の逮捕でオウム捜査もマスコミの大騒ぎも一応終結の方向に向 かったかに見える。「いろいろ言われましたが結局、麻原彰晃というとんでも ない人物が率いる妄想集団が単独で犯した犯行、という結論に落ち着きそうで す」(警視庁担当記者) しかし、この事件はそんなに単純に割切れる事件なのか。ひとつの教団の枠 組みをはみ出る部分は全くないのか。疑問や謎は残る。 資金源ひとつ取っても注目に値する。資産1000億円がブラフであるとしても 教団資産と、強引なお布施の額面をどう足しても、帳尻が合わない。資金ルー トだけ見ても明らかに教団の枠を超える。ならばこの事件も、一旦、オウムと いう枠を離れて再考する必要があるのではないか。 すでになされた報道でも背後関係らしきものの影は、いくつか挙がってい る。 オウムが深く関係してきたロシア・東欧。勧誘マニュアルがほぼそのままオ ウムで使われている統一教会。北朝鮮や他の宗教団体。さらに三重県の病院乗 っ取り劇、没落公家や政財界の闇の紳士等々だ。 背後に潜む影にもさまざま なラインが出ているが、中でも特に、クロウト筋の注目を集めているのが統一 教会との関係である。 ●統一教会とオウムの接点 すでに一部の週刊誌でも報じられたが、草創期の「オウム神仙の会」はA・R なる女性を介して統一教会と接点があった。 A・Rは統一教会で霊能士として霊感商法に関わり、やがて渡辺美智雄議員の 秘書となり、80年代の後半に大阪3区から立候補した人物。「彼女は慶応大学に 在学中、統一教会に入り、その後、スパイとして阿含宗に入り込んだことがあ る。彼女は桐山靖雄・阿含宗管長に非常に可愛いがられていたが、阿含宗のビ デオを作る際に、その中で統一教会に都合のよい内容を言わせようとしたこと が露見して教団を追われた。そのとき、同時に阿含宗を出たのが麻原彰晃一派 だった。よく知った仲だったようです。一緒にやめた人間は何人もいると言わ れていますが、この中にA・Rも含まれているかもしれません。麻原彰晃は『オ ウム神仙の会』を設立したが、A・Rは統一教会に戻ったのです」(オウム神仙の 会元会員) さらにオウム神仙の会の本部が最初に置かれた事務所は4年前に統 一教会が入っていた、という話もある。 また、今回の強制捜査でも統一教会との接点を物語る情報が流れている。滋 賀県の検問で車中から押収の光ディスクに「オウム真理教と統一教会の合致信 者名簿」があったことから、両者の通底関係が一部で報じられた。「16人のリ スト中11人が統一教会の信者と同姓同名といわれているが、私の方ではリスト に23人分記載と聞いている。また、90年の選挙後、統一教会からきた信者は、 大半が辞めており、この人達は、統一教会系と言われる『京都プリンスホテ ル』に入り浸りだったという早川紀代秀が連れてきたと言われている」(警察庁 詰め記者) また、この名簿中の統一教会信者達の中にもA・Rと同姓同名の名前 があったと報道されている。 統一教会の元信者は言う。「統一教会は色々な組織に人を入れて乗っ取って ダミー化する。国会議員秘書や自衛隊員の数はオウム以上。KGBとの接点もあ る。一例に、世界日報社長の國時昭彦の例を見ると、彼は社会党左派活動家の 家に生まれ、統一教会には高校3年のとき入った。高卒後の9月には、社会党党 本部の推薦と日ソ協会の推薦、渋谷の対外文化協会等の推薦を取り付け、5年間 も旧ソ連の革命輸出学校として知られるモスクワ郊外のパトリス・ルムンバ大 学に留学した。ここは革命戦士養成目的以外の科目はないんです。また、赤軍 にまで統一教会は入れている。不思議なもので統一教会は宗教界全体を教団防 衛ラインにし、阿部との関係もあってか、坂本弁護士拉致誘拐事件後に『信教 の自由を守る会』という団体を信者でつくり、オウム擁護のビラを撒いた」 (777組合同結婚式に参加した元信者) 若い元信者は、オウムと統一教会の人脈がつながっているとすれば、現在は まったく別のライン、だと推測する。「若者にとっての宗教認識自体が時代と ともに変貌した。60年代〜70年代に学生が原理研に入った時代とは異なる。統 一教会の信者の中身も一変している。新新宗教のニューエイジ世代、オウムも これに含まれるんです。日本の若者が走るニューエイジ世代の、近代意識の裏 面の流れへの関心と似ているのが、文化的素地にキリスト教ヒエラルヒーがな い旧共産圏の人々、彼らは新新宗教を受け入れやすい。旧共産圏の人たちが異 宗教間をとりもっているはず。例えばロシアのニューエイジの化身と言えばゴ ルバチャt。彼は1989年12月に開催された宗教・政治の世界指導者による地球 会議≠ノ出席。クレムリンで参加者とともに仏教系団体の聖音『オーム』を叫 んだと資料にある」(92年の合同結婚式参加の元信者) 旧共産圏における新新宗教浸透の過程で、オウムと統一教会という普通なら 相容れない二つの異宗教が接近したのではないか、とこの元信者はいうのだ。 ●ウクライナの武器商人マセンコ そういえば、ここにきて統一教会とオウムの関係を物語る新しい疑惑が浮上 している。その謎を解く鍵は、ウクライナにある。すでに報じられたことでも 明らかなように、武器買いつけに早川紀代秀はウクライナに数回入っている。 ウクライナには統一教会とオウム双方に関わり、両者の接点として鍵を握る 人物がいたのだ。 それは、旧ソ連崩壊後、ロシア通商代表部に所属しながら密かにウクライナ 通商代表部を名乗ってウクライナの利権話を持ち歩いた自称KGBのウクライナ 人、ヴィタリー・H・マセンコである。 91年当時、外務省外郭の財団法人の専務理事で、政府がらみのイベント企画 等を手掛けているT氏は、マセンコにウクライナ通商代表部・協会開設を相談さ れたという。「旧ソ連崩壊の1月ほど前から水面下で協会設立の話を持ちかけて きた。ソ連が12カ国時、彼はロシア通商代表部にぶら下がって給料を貰ってい たのだが、一方でウクライナ通商代表部の設立パーティーをホテルオークラで やって認知を得ようとしていたんだ。これは本国の反対で潰れたんだが、彼は 92年1月に日本側に薬品がほしいと要請。その見返りとして彼がもってきたの が、軍事技術、巡洋艦ミンスクはじめ旧ソ連の武器、核技術者・化学者のリス ト、核弾頭などの単価表つきリストなどだった。当時、ロシアがアメリカに気 兼ねして兵器の単価を上げて、第三国、特に北朝鮮に買われないよう歯止めを かけていたのに対し、ウクライナはその10分の1の値段で売却する途を模索して いた」(某財団法人専務理事) 兵器から潜水艦、核弾頭など、民生技術に転化 できるのか、首を捻るようなものさえ、単価表つきで何でもリストアップされ ていたという。同専務理車はさらにこう語る。「巡洋艦ミンスクを3隻くらいま とめて洋上宿泊施設として購入できないか、と考えたんですが、軍事用の規格 ですから、鋼板が厚すぎて民生利用できないことが分かったので、実現しなか った」 しかも、リストの中には北朝鮮が欲しがっていたロケットの発射技術、軌道 コントロール技術が入っていたという。それは、核弾頭搭載も可能な大陸間弾 道ミサイルの発射技術にも応用できる技術だったのである。 それに目を付けた企業があった。統一教会系企業・ワコムである。この電子 機器メーカー・ヮコムが1993年5月に発行した同社企業広報「ワコムニュース」 にはこう書いてある。「旧ソ連ウクライナ共和国、軍事技術を民需転換。材料 技術を日本に紹介」。つまりロケット、人工衛星技術で軍事目的に開発された 技術に、91年ころから注目してきた、と「ワコムニュース」には、そう記載さ れているのだ。「93年5月の幕張メッセのワコムの展示が出た『93新素材展』の ブースには東京担当者としてマセンコ自身が出ていた。あちこち渡り歩いた が、利権話は大きかった。特に軍事兵器の類が多く、マセンコ自身、武器商人 クルップを気取っていたフシもあったくらい入れ込んでいた」(前出・財団専務 理事) その後、マセンコは政界のパーティー等を手配する叶S話会につなが り、渡辺美智雄の多田秘書、中曾根康弘の新田秘書、小沢一郎の故・中條秘書 と紹介され、秘書を通じウクライナ大使館を持たせてほしいと申し入れたとい う。 この会の会員に統一教会の777組合同結婚式を挙げた阿部博行が入っており、 現在の会長は、信者ではないが文鮮明教祖礼賛本の出版元、善本社で本を出し ている。 また、心話会社長は、小沢はマセンコと会っていない、と完全否定 するが、マセンコは「小沢一郎を励ますという会」というパーティーでも目撃 されているという。 そして、このマセンコがオウム真理教の裏をすべて統轄していた早川に、何 度も接触し、武器を売り込んでいたという話があるのだ。だとすれば、仲介し たのは統一教会系人脈ということになるのではないか。 ●統一教会もサリン事件を予言? また、統一教会系企業として有名な芝興産とオウム真理教との関係も、いろ いろ噂されている。「芝興産とオウムも間接的に関係があると聞いている。第6 サティアンに米があったとされているが、オウムは中国の大連から大理石の粉 粒と偽って米を入れ、密売をやっていた。米の関税を払わずに輸入して利ざや を稼いでいたようなんです」(オウムに詳しいジャーナリスト) 未確認だが、 実はこの大連では芝興産が輸出用の米を作っていたという話があるのだ。 4月22日の読売新聞夕刊に「中国米を数十万トン?密輸 キロ7円で国産米にま ぜ暴利 都内の貿易会社摘発」という記事が載った。同紙によると、都内の貿 易会社が中国米を密輸し、卸業者約10社に不正に販売していたとしている。 押収量は363トンだったが、関係業者によれば、1キロ7円で購入した米を1キロ 278円で売っており、横浜税関の調べでは昨年春からコンテナで10コずつ入って おり、トータルでは数十万トンに上ると見られるが国内米と混ぜてスーパー等 で売られていたと見られている。 この貿易会社とオウム・統一教会との関係は今のところ不明だが、この時期 に摘発を受けるというのは、あまりにタイミングがよすぎはしないだろうか。 モスクワに長く在住した長銀のロシア関係経済アナリストは言う。 「オウムは各地で売れる商品や技術を探していたようですね。モスクワではウ クライナ利権もそうですが、兵器や軍事物資の密売は日常的にある。マセンコ とオウム真理教の実力者、早川紀代秀は、2年前ですがモスクワで接触し商談し ていた。マセンコは評判の悪い男でしたが、日本のウクライナ通商代表部とい うことで日本人はかなり会っている」(長銀ロシア関係経済アナリスト) マセンコはモスクワでも最近は行方が分からないという。しかし、新橋に昨 年9月にウクライナ大使館ができた。「ウクライナ大使館のバックは芝興産です が、250億円と言われる資金の出所は不明です。早川はモスクワやユジノサハリ ンスクから北朝鮮の平壌や、韓国のソウルに数回行っているとされている。ロ シアやウクライナの利権は半島で高く売れる。武器売買のルートとして成り立 つ」(前出アナリスト) もっともこれはあくまで、点と点を結ぶ関係であり、統一教会がサリン事件 にまで関与していたというわけではない。 しかしその一方ではこんな不審な動きもある。オウム真理教が疑惑を持たれ たきっかけに、松本サリン事件の前に教祖がサリンや化学兵器のことを公の席 で口にしていたことが挙げられる。 しかし、統一教会も何と94年6月27日の松本サリン事件の一週間前、同年6月 20日に「生物化学兵器」の話をしている大幹部がいるのだ。 教団ナンバー2の元韓国陸軍情報部CICの将校で現在、日本の最高責任者であ る朴普煕は漢南洞公館で報告された「カーター元大統領の訪朝の背景」の中で こう語る。「(前略)ところで、貧しい国の核爆弾というのは、生物化学兵器の ことです。生物化学兵器の『化』は化学兵器で、毒ガスのことです。また、 『生』とは細菌兵器のことです。これを北韓は、二〇〇〇トンも所有していま す。これは韓国政府もよく知っていることで、全然秘密の話ではありません。 その二〇〇〇トンの生物化学兵器なら、韓国の人口を三回も消してしまうこと ができるといわれています。これは、ソウルが一晩で、何の声も出さず、砲弾 の音が聞こえることもなく、一二〇〇万人が、いっぺんに消えてしまう可能性 がある、ということです。生物化学兵器は、音がしないように風船で浮かべる ことができます。ですから、このような事実を前にした今日、人類はこれから 絶対戦争をしてはいけないのです。」(「ファミリー」94年10月号掲載) 朴晋煕の発言もオウムが作っていたとされる化学生物兵器を事前に語ってい るではないか。しかも内容は「生物化学兵器は音がしないように風船で浮かべ ることができます」という、実に具体的で生々しい現実的表現が使われてい る。 それも「このような事実を前にして」とはどんな事実を前提にして話してい るのか。前後関係からは判断できないが……。 ●長官狙撃の銃弾は朴大統領暗殺と同種 さらにこの統一教会の背後には北朝鮮が存在するのではないかとの情報もあ る。 統一教会は、文鮮明がもともと北朝鮮の平壌出身であり、金日成と文鮮明が 友好関係を持ち、豆満江開発などの利権を金丸信経由で日本の財界に結び付け た。また、金正日との間には「マダム朴」と呼ばれる本誌でもかつて報じた女 性実業家がおり、香港・台湾が北朝鮮と国交を開いてからは、北朝鮮の経済ル ートのつなぎ役とも伝えられる。そういう意味では北朝鮮との接点は十分、考 えられる。 しかもここで注目されるのはオウムの早川紀代秀がモスクワから平壌に行っ ていたとの説である。 既に報じられたが、オウムの武器密輸ルートはウクライナまで達していた。 20回ものモスクワ入りの際、早川はマセンコらしき人物とともにウクライナ、 北カフカス等にも入っているという。そして、サハリンやウラジオストックな ど旧ソ連の軍事基地のある極東地区から北朝鮮の平壌に行き、ウラジオストッ クから帰ってきていたのではないかというのだ。 また、村井秀夫殺害犯の徐容疑者が経歴に全く所在不明の一年間があり、捜 査関係者は北朝鮮に行っていたものと見ているという。 また、國松長官狙撃事件でも、北朝鮮のバッジが現場に落ちていたことの他 にも、こういう説もある。「國松狙撃の銃弾はアジアで初めて使われたと言わ れていますが、実は過去に一度使われているらしい。38口径でフォローポイン トのダムダム弾。これは韓国の朴大統領射殺に使われたものと同じものだとい う」(警察庁関係者) 朴大統領射殺に使われた銃は西ドイツ製7連発とアメリカ製S&W、2丁とも38口 径である。 國松長官と同じマンションに旧KGBトップのボリソフが居住してい ることは報道されたが、報道されなかった事実の中には反日、反皇室といった 側面もほのかに見えるようだ。 皇太子妃の実家・小和田邸の前にも、國松狙撃事件前日にマンション前にい た二人組と同一と思しき、不審なアベックが目撃されたという。赤坂御所の周 辺でもこのアベックが目撃されているという説もある。 また、民間から2代続けて妃を迎えた天皇家の婚姻について麻原彰晃が「ヴァ ジラヤーナ・サッチャ」の中でも異議を唱え皇室批判したことなど、麻原彰晃 自身の考えとは思えず、誰かに背後で操られた可能性も否定できない。他にも 「北」との関係を示唆する情報は数多いが、だからといって、そのまま鵜呑み にするわけにはいかないだろう。「北に関する情報は、公安による情報操作の 可能性も高い。公安は北の恐怖を煽ることで予算や権限を拡大することに躍起 になっていますからね。慎重を期すべきですよ」(警察庁担当記者) ●日本の国家権力も介在か そもそも一方では、他国でなく日本の国家権力そ のものが介入していたという説もあるのだ。特に公安警察の動きについては検 証しなければならない。 その代表的なものが立花隆も言っている「公安のS (スパイ)が入っていた」という説だろう。 例の怪文書の作成者もさることな がら、最大の疑問は假谷さん拉致犯とされた松本剛の掌紋がライトバンに残さ れていたこと。犯罪容疑で指紋を登録するさい、全ての指紋を回転式で確実に 登録するが、掌紋登録など聞いたことがない。 ライトバンに残されていたとしても、どうやって松本剛自身の掌紋と比較・ 同定できたのか、という捜査上の謎が残る。どう考えても、あらかじめSを潜伏 させていたとしか思えないのである。 松本サリンの後にある程度容疑事実を 固めた段階で介入していれば、地下鉄サリン事件は未然防止できた。それをあ えてやらずに、内偵するだけでみすみす見逃したのは、内部的に煽ってやらせ たということではないか。 内部にいて「見ていただけ」なら公安も加害者側にいたことになる。 結果、地下鉄サリン事件は防げずに12人もの死者を出した。このこと自体へ の反省もなければ内部潜入Sの処分も出さない。 御用ジャーナリスト達は誰も公安のSの問題を取り上げない。 立花隆だけがあえて恥をかくことを恐れずに「松本サリン事件に関する一考 祭」なる怪文書を取り上げ、公安の内部スパイの存在に目を向けさせた。「松 本サリン事件以来、オウムに目を付けた警視庁公安部は、上九一色村の内偵に 94年9月から入っている。公安調査庁も94年末には入っている。松本以来関心を 持っているCIA、自衛隊調査隊との連携で合同捜査体制を敷いた。後にFBI長官 とCIA長官の兼務からFBIが加わったという情報もある」(TV局報道部キャップ) 新聞紙上でも何の前置きもなく、第七サティアンにFBIの専門家が入り、鑑定 したという報道が出ている。だれがいつ呼んだのかさえ不明なままだが、未然 防止できたはずの地下鉄サリン事件に、調べて叩くことを優先する警察の力が 入ったことを感じさせた。 ●自衛隊クーデター期待組のオウム入信問題 この地下鉄サリン事件自体を予測できたのは果して公安だけだったのだろう か。 自衛隊の化学防護隊の現役幹部がオウムに入信していたことからも、自 衛隊の内部に戦後ずっとくすぶり続けるクーデターグループがいて、日本の軍 事大国化を狙ってオウムを利用したという見方もある。 自衛隊には、さらに重大な疑問がある。 松本サリン事件、地下鉄サリン事件を予期していた者がいたのではないかと いう疑惑だ。例えば、毒ガス用ガスマスクの製造会社は日本のシェアをみると 80%以上が興研と重松製作所の2社に集中する。この2社の株が松本サリン事件の 前、そして地下鉄サリン事件の前1週間に店頭で異常に売れている。これらの銘 柄は店頭株では一日l000株も出ればいいのに、20万〜1OO万株も買われること自 体、異様なことだ。 オウム真理教が買っていたなら単純すぎるミスを犯したことになる。そして 事件の翌日に両株式ともストップ高となっている。 特に注目したいのは、重松製作所は自衛隊御用達の会社といっても差し支え ないほどの仕入れ先である。オウムが自衛隊に入っていたという情報をさかさ まに読めば、オウムから自衛隊にサリン情報が漏れたとしか思えない。オウム 信者以外にも「知っていた」人間が存在したはずである。 また、統一教会だけでなく、他の宗教団体の名前もでてくる。 創価学会が この件に関して調査していること、目黒公証役場の假谷さん拉致誘拐犯人と運 転免許証を偽造された人物が創価学会の会員であるとオウム側に言われたから か、青山弁譲士の後を公安そこのけに追跡し、学会本部近くの新宿区内のビル に入るや四谷警察署に通報するなど、敵意を剥き出しにしている。 また、幸福の科学の名前も出ている。同教団はオウム、創価学会、統一教 会、コスモメイト等に対して「邪教だ」として敵意を露にしているが、假谷さ ん拉致誘拐の4日後に全国に100万枚のビラを撒き、オウムを名指しで攻撃した こと、幸福の科学が事前にオウムへSを入れていたという説まで流れている。 「オウムの信者まで知らない麻原彰晃のスケジュールを、幸福の科学は把握し ているらしい。麻原彰晃のプライベートな遊園地での一コマが撮影されて彼ら の本に載っていたんですから」(公安関係者) 宗教団体には調査費がうなるほどあるらしい、と嘆息する。 また、三重県榊原みのり会病院乗っ取りに動いたグループや、エメラルド教 団と名乗る謎の宗教団体、天地正教などの名前も飛び交っている。他宗教団体 でオウムの幹部を匿ったとの容疑で強制捜査を受けた教団もあり、事件の真相 の背後にある闇はまだまだ深い。 やくざとの覚醒剤関係説もある。「麻原彰 晃と早川紀代秀以外は青山まで皆、党醒剤をやっているようだ。とにかく寝て いないようだった」(オウム関係者) また、金丸信の金塊と同じく無刻印の金塊が出てきたこと等、検証すること は山積している。 しかしこうした事実について警察は捜査する気持ちがなく、冒頭にも書いた が公安の御用ジャーナリストたちは立花論文等を批判し、公安サイドの情報を 垂れ流すだけだ。 また、オウムに関しては終息する気配だが、統一教会につ いては捜査すらしないだろうとの見方が強い。「統一教会はやれない。なぜな ら教団に関係して公安、警察のOB、官僚OB、政治家の名前が次々と出てくるか らです」(公安担当記者) また、北朝鮮の問題についても、いい加減なデマはしきりに流して煽るもの の、真実は国民に知らせず、もし、決定的なことを掴んでも、それは外交カー ドとして取っておいて使うのだという。国民には相変わらず深い闇だけが目の 前に広がり、こうしてこの事件の深層は戦後の下山事件などと同じように、闇 に葬られることになるのだろうか。〈敬称略〉 |