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「無駄な塁与えぬ」徹底 81年の赤門旋風

2009年10月20日

写真東大OB・大山雄司さん(50)

写真東大・前田善博投手

 ◆東大OB・大山雄司さん

 この年のレギュラー陣のほとんどは下級生のころから神宮を経験。筋力トレーニングを本格的に取り入れ、1年の時からみっちりやっていたので、開会式で他の5大学と並んでいても、圧倒されるということはなくなっていた。

 結構、自信過剰なメンバーがそろっていて、10回やって早稲田なら2、3回、慶応なら半分は勝てるんじゃないか、と思っていた。

 といっても130キロそこそこの投手が、他の5大学に勝つにはどうしたらいいのか。野球は確率のゲーム。ヒットを何本打たれても本塁にかえさなければいいわけで、絶対に無駄な塁を与えないことを考えた。塁に出しても盗塁はさせない、バントで送らせない。だから牽制(けんせい)やバント処理の練習をものすごくやった。

 1死三塁から内野ゴロで1点与えていたのを、ホームで刺したりする。そういうことを繰り返し、何とか試合を作る。中盤まで競っていくと、しめたもの。東大には負けてもともとという余裕がある。相手にしてみれば負けたらどうしようとあせる。精神状態が逆転してくる。それがうまくはまったのが、早稲田を1―0で完封した試合だった。

 慶応戦で注意したのは小林宏(リーグ通算最多の62盗塁)をいかに塁に出さないか。出しても絶対に走らせない、その一点だった。私は4年になってほとんど盗塁を許していない。捕手の坂本二朗が強肩ということもあったが、チーム全体が余計な塁を与えないという意識が高かった。

 早慶を連破して周りは「東大、優勝か」と大騒ぎだったが、一番印象に残っているのは、実は立教の野口裕美(元西武)と延長12回(0―0)を投げ合ったこと。あれほど集中し、自分の力を出し切れた試合はない。

 三菱重工に就職後もしばしば神宮に通っているが、現役の選手たちは我々の時代よりも基本的な能力は勝っていると思う。重ねて言いたい。守備では無駄な塁を与えるな。打撃ではリスクを冒してでも一つのチャンスにかけろ。そして赤門旋風よ再び、と。(聞き手・庄司信明)

 【赤門旋風】 1981年春、東大は大山、国友らの好投手を擁し、史上初めて同一シーズンで早慶から勝ち点を奪った。シーズン新記録の6勝(7敗1分)で4位となり、そのうち大山が5勝をマークした。

    ◇

 今の選手―――大山さんのイチ押し 東大の前田善博投手(3年、栄光学園高)。打者の手元で伸びる切れ味の鋭い、東大らしくない球を投げる投手だ。

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