日本人男性として加害直視、元慰安婦の訴え代弁/川崎出身の村山さん
12月14日10時0分配信 カナロコ
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集会で「『慰安婦』問題は性的暴力の問題」と語る村山さん=横浜市南区の県地域労働文化会館 |
「商行為だったとして、慰安婦などいなかったと主張する人がいる。私は反論したい。たとえ金を受け取っていたからといって、女性が受けた被害も、加害の事実も消えることはない」。ハルモニたちと寝食を共にして4年、村山さんの語り口に迷いはない。「慰安したのではない。性的暴力を受けた。『慰安婦』という言葉自体、問題の本質を覆い隠すものだ」
話は高校在学中にさかのぼる。在日コリアン3世の同級生との出会いに、村山さんはある違和感を覚えたという。「在日がなぜ日本で暮らしているのか。その歴史、抱えている悩みが見えていなかった」。大学時代に韓国へ留学。足を運んだナヌムの家で同じ感覚に襲われる。「日本人男性として日本軍による被害者に会うのが怖かった」。内なる「忌避の意識」に気付いた。
知り合ったハルモニの死に直面し、消されゆく歴史の現実を知った。ナヌムの家で暮らすのはいずれも80〜90歳代。2006年に、併設された歴史館の研究員になった。
ナヌムの家には年間5千人が訪れ、半分は日本からやって来る。慰安所を再現した部屋などの展示を解説し、ハルモニの証言を通訳する。それはまた、男性という属性を持つ自分と向き合う日々でもあった。
痴漢行為や買春、援助交際が繰り返される日常に暮らし、ポルノ雑誌は巷(ちまた)にあふれる。「傷つけている認識が持てない社会。恋人、友人など、自分の大切な人にも起こりうる問題ととらえるべきだと思った」
他者の痛みへの想像力を欠く社会の先には何が待っているのか。村山さんがハルモニと日本国内で重ねる証言集会は、過去から未来への投げ掛けでもある。集会では、横浜市の中学校で採用が決まった「新しい歴史教科書をつくる会」主導の教科書への批判にも話が及んだ。
ナヌムの家を訪ね、涙を流して謝罪する人がいる。「あなたが謝って、どうするの」。困ったような表情を浮かべるハルモニ同様、村山さんの心も波立つ。「一方的で一時的な懺悔(ざんげ)からは何も生まれない。ハルモニたちは、自分を直視し、記憶にとどめてほしいと願っている。つらい体験をいまだに証言し続けなければならないことにこそ、思いを巡らすべきだ」
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最終更新:12月14日10時0分
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