2009年12月14日
「カールじいさんの空飛ぶ家」のピート・ドクター監督「マイマイ新子と千年の魔法」から(C)高樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」の古代進は38歳(C)2009 ヤマトスタジオ/「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」製作委員会「ヤマト」の西崎義展プロデューサー
昨年に続き冬休みアニメ(特撮も)をまとめて紹介しようか、とリストに書き出してみたら何じゃこりゃ。尋常ではない多さです。
公開中は「カールじいさんの空飛ぶ家」「ONE PIECE FILM STRONG WORLD」「仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイドMOVIE大戦2010」「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」「アフロサムライ:レザレクション」「人間失格 ディレクターズカット版」「戦場でワルツを」「東のエデン劇場版1 The King of Eden」「マイマイ新子と千年の魔法」「劇場版マクロスF〜イツワリノウタヒメ〜」「DISNEY’S クリスマス・キャロル」「こまねこのクリスマス〜迷子になったプレゼント〜」、そして19日公開が「レイトン教授と永遠の歌姫」「バッタ君町に行く」、23日公開が「よなよなペンギン」「ティンカー・ベルと月の石」。
わお、ぜんぶ見てる! 道理で実写映画を見るヒマがないわけです。それにしてもライダーとウルトラとヤマトとマクロスが並んでるって、いつの時代の話?
とりあえず思いつくままに書いていくことにしましょう。「カールじいさん」は何というか、亡妻を思う老人の哀感が「カールじいさんのつみきのいえ」みたいで、妻と過ごした数十年を一気に見せる冒頭の感動シーンは「カールじいさんのオトナ帝国」みたいで、腰の曲がった老人がいつの間にか元気に活劇までこなしちゃうのは「カールの動く城」というか「カールの浮かぶ家」? カールじいさんたちが南米に到着した後のドタバタ展開はちょっと平凡ですが、冒頭の20分は奇跡のように冴えまくっています。上昇する幾百幾千のカラフルな風船が窓の外を通過していく時、子供部屋に虹色の光を注ぎ込みます。「忘れがたい美しい場面でした」と、インタビューの折にピート・ドクター監督に言うと、「膨大な数の風船が重なり合っているから、本当は光を通さない。つまりウソなんだけど、映画にはウソも大切なんだ」と話してくれました。
「マイマイ新子」はパッと見が地味ですが堂々たる骨格の、正統派児童文学的作品です。「死」という形で突然に降りかかる過酷な現実に子供たちが負けないのは、真っ赤なほっぺと腹から出すでっかい声と大地を踏みしめる足があるからです。「みんな『いい子』『いい人』過ぎないか?」と思わないでもありませんが、映画に刻み込まれた生命力はそんなひねくれ者のつぶやきを吹き飛ばしてしまいます。興行的に苦戦らしいですが頑張ってほしいものです。
「ワンピース」は、巨大生物の豪快な暴れっぷりと、ナミを奪い返しにルフィたちがスペシャルコスチュームに身を包んで雪の夜に殴り込むカッコよさが見どころ。ナミが仲間に残したメッセージがオチになるのですが、そこにヒネリがなかったのが残念。「マクロスF」はおなじみの歌におなじみのメカにおなじみの三角関係と、お約束通りのサービス満載。でもこんなおなじみばかりでいいのかしら? 個人的な不満は、私が見た映画館の音が小さかったこと。好きな歌手のコンサートに行く気分で見る映画なのですから、ボリュームをガンガン上げてくれないとテンションが上がりません。
「東のエデン1」は、話の核心を先送りしてほとんどの謎を来年3月公開の「東のエデン2 Paradise Lost」に持ち越した感があります。それというのも、テレビシリーズのラストで日本を救うために「僕をこの国の王様にしてよ」って万能携帯電話にお願いした主人公の滝沢君が、自らの記憶を消去してニューヨークでプラプラしてたから。問題は「王様」になることではなく「王様」になって何をするかだと思うのですが、そんな他人任せで日本を救えるのかしら?
そこへいくと古代君は偉いです。ヤマトが沈んじゃった後は宇宙のトラック野郎になって放浪して妻の雪とも円満とは言えなかったようですが、いざ地球と人類の存亡の危機となるや、復活なったヤマトを駆って異星人連合の巨大艦隊に立ち向かい、ビームやミサイルを雨あられと浴びながら、渾身の波動砲をぶっ放します。ヤマトばかりがむやみと強いのはこれまたおなじみのお約束で毎度のことですが、「復活篇」のヤマトは一段と強いです(CGで作ったのがよかったんでしょうか?)。
冬休み映画の紹介はこのへんで一休みして、先日紙面に掲載した「ヤマト」西崎義展プロデューサーのインタビューのこぼれ話などを一つ。
私「今回のヤマトは強すぎる気がするんです。ガンガン弾が当たってもキズがつかないですよね」
西崎PD「テレビシリーズではボロボロになっても次の週には真田さんが直してくれるけどね。今回、ボロボロになったヤマトを出そうかどうしようか、論議になったんだけど、ボロボロにするのは最後にして、それまではキレイにしておこうってことにしたんだ。ボロボロのヤマトなんて見たくないでしょ」
私「いや、結構好きだったりするんです。第3艦橋がボロッと落ちたり脇腹にドッカーンと大穴があいたりとか。イメージとしては、チャンバラ映画の侍があちこち斬られ髪もザンバラになって、それでも力を振り絞って最後にエイヤッ!とやっつける、そんな感じがして」
西崎PD「それ気がつかなかったなあ。そういうの見たかったですか」
ちなみに、6連発波動砲(今回の新設定)を6発いっぺんに撃つという無茶な攻撃を古代が命じたら、クルーも知らない全弾発射システムが作動を始めるというシーンがあるのですが、あれは真田さんが「こんなこともあろうかと」用意してくれたんでしょうね、きっと。
1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。09年4月から編集局文化グループ記者。