19時より高血圧フォーラム2006
~患者満足度を見据えた降圧療法へ~
Opening Remarks
(K医大腎臓内科教授のK先生)
アンケート結果
オルメサルタンは、ARBの中で一番の降圧力
特別講演Ⅰ「日常診療における降圧療法~問題点とその対策について~」(A医科大学循環器内科助教授のM先生)
高血圧治療の問題点
1.ARBの降圧スピードと降圧度
2.早朝高血圧、夜間高血圧
3.仮面高血圧、白衣高血圧
4.治療抵抗性抗血圧
5.ARBに心保護効果
降圧治療の目標
・長期にわたる血圧の低下
・臨床症状の改善
・臓器保護(脳、心、腎)
・全死亡の現象
→臓器保護と厳格な降圧が必要
降圧薬としてのCa拮抗薬とARBの差異
Ca拮抗薬は、血管拡張による臓器保護作用あり。どのタイプの高血圧にも降圧が得られる。
VALUE試験:バルサルタンVSアムロジピン
→アムロジピンが心筋梗塞発症を抑えた。
各種ARBの降圧効果の相違
オルメサルタン(オルメテック)20
ロサルタン(ニューロタン)50
テルミサルタン(ミカルディス)40
バルサルタン(ディオバン)80
カンデサルタン(ブロプレス)8
を、家庭早朝血圧で効果判定
→オルメテックは、他のARBに比べ、きわめて早い時期から下げる。(1週間で効果判定できる。)高齢者、腎機能悪い患者では降圧作用強く出るので、半量から使用。
オルメテックは、持続性もあった。
ARBは、心拍数を上げない。特にオルメテックは、心拍数をむしろ下げる。
目標降圧(130/85)達成率
→18ヶ月投与では、他のARBが37~48%なのに対し、オルメテックは、80%。
オルメテックは、早くから強力に下げ、持続も長い。
1.降圧による予防効果は、脳卒中42%低下、冠動脈疾患14%低下
2.早朝、夜間高血圧の治療
3.家庭血圧、外来血圧の両方をコントロールされているのはわずか14%
早朝高血圧の治療方針
早朝高血圧を呈する2型
・持続型早朝高血圧(夜も朝も高い)
・上昇型早朝高血圧(朝のみ高い)
早朝高血圧に使用できる薬剤は?
・ACE-I:比較的作用時間が短い(16~18時間)
・α1遮断薬:起立性低血圧が懸念される。
・Ca拮抗薬:交感神経を活性、心拍数増加
・β遮断薬:カルベジロール(αβ遮断薬)を除き、早朝高血圧に有効という報告は少ない。)
よって、持続時間の長いARBが最適。
各ARBにおけるM(Morning)/E(Evening)比(=T/P比)
早朝高血圧例を対象にすると、
ミカルディス>オルメテック>ブロプレス>1>ディオバン>ニューロタンの順。よって、1以上の前者3つが有効。
ミカルディス→オルメテック切り替え有効例
(お酒を飲む人は、夜下がり朝上がるので、オルメテック有効)
夜間高血圧の治療:ABPAによると、
心血管イベント多い順に、
riser:夜間睡眠時に血圧が昼間に比べ上昇
extreme-dipper:夜間血圧が昼間に比べ、20%以上下降
non-dipper:夜間血圧が昼間に比べ、10%未満下降
dipper:夜間血圧が昼間に比べ、10%以上下降
夜血圧高い人が心血管イベント多い。
仮面高血圧と白衣高血圧(SHEAF)
①家庭血圧135以上かつ随時血圧140以上:63%
②家庭血圧135以上かつ随時血圧140以下(仮面高血圧):10%
③家庭血圧135以下かつ随時血圧140以上(白衣高血圧):13%
④家庭血圧135以下かつ随時血圧140以下:14%
心血管イベント発症率は、②>①>③>④
白衣高血圧の人は、真の高血圧に移行することが多い。
家庭血圧135/85以上の人は、心血管イベント多い。
治療抵抗性高血圧の定義
米国高血圧学会:利尿剤含む3剤を最大量使って、140/90以下に下がらない。
先生の考え:降圧薬3剤で、140/90以下に下がらない。
以下の条件みたしても140/90以下に下がらないのが治療抵抗性高血圧
1.生活習慣改善
2.3種類以上の降圧薬
3.適正な用量
4.服薬コンプライアンス良好
5.効果発現の期間が十分に経過
真の治療抵抗性抗血圧:56,1%
白衣性高血圧:43,7%
治療抵抗性抗血圧の特徴
・臓器障害
・脈圧大
・夜間の降圧度が少ない
・心拍数多い(先生の考え)
スコア化
取り組み
1.主治医の取り組み
2.生活習慣
3.降圧効果に影響を与える薬剤に注意
NSAID、アスピリン、甘草(グリチルリチン)、ステロイド、コレスチラミン、交感神経刺激薬
4.二次性高血圧ではないか
原発性アルドステロン症、腎血管性高血圧、腎不全、SAS、甲状腺疾患、大動脈縮窄症、褐色細胞腫他
5.降圧効果の妥当性の検討
6.服薬コンプライアンス
ARBと心保護効果
ARBは、左室肥大を改善
高血圧患者を左室肥大にしないことが重要
左室肥大は、突然死の単独の危険因子
左室肥大の改善が生命予後を規定
最初から左室肥大ある患者でも、しっかり降圧すればいい。
オルメテック投与後6ヶ月で、左室肥大、リモデリングを改善
(ニューロタンは、6ヶ月で、改善しない。)
ディオバンは、左室肥大のみ改善
オルメテックは、早期から強力に下げ、心保護効果もあり
オルメテックは、交感神経抑制し、QTdを改善
オルメテック
1.他のARBより降圧効果は強力
2.降圧は急速、1週間後に改善
3.早朝夜間高血圧に有効
4.心保護
5.次世代のサルタン
最後のスライド
Time is never return.(Sumio Goto)
違いがわかる男のCMに出演していた。
ARBの違いがわかるようになろう。
特別講演Ⅱ「心不全の新しい治療」
(C大学大学院循環病態医科学教授のK先生)
米国では、心不全患者が経年的に増加。現在、500万人が心不全。アメリカの医療費の1/4が心不全治療に。
癌はこわいと言うが、累積死亡率は、慢性心不全も同様。
21世紀は、治療から予防へシフト。
(ACC/AHA心不全治療ガイドライン2005)
StageA~Dに分け、
A:高リスク群
B:無症状、予備軍
C:有症状
D:治療
A,B:心不全のハイリスク患者→予防
C,D:心不全→治療
高血圧は心不全ハイリスク
降圧療法により、心不全の発症は減少する(半分になる)
高血圧から心不全へ。
高血圧→左室肥大→拡張機能障害→心不全→死亡
高血圧→心筋梗塞→収縮機能障害→心不全→死亡
左室リモデリング 左室機能障害 明らかな心不全 死亡
ーーーーーーー数10年ーーーーー→ーー数ヶ月ーー→
AT1は、伸展による肥大形成に必要
心肥大抑制効果は、ARBが一番
LIFE:ARBは、β遮断薬と比較して、有意に心肥大を退縮させた。
考察:何が新しいか?
(1)心臓局所にRASが存在する
(2)心筋細胞にAT1受容体が存在する
(3)心肥大形成にAT1受容体が重要である。
伸展によりどのような機序で、AT1受容体が活性化されるのか?
AT1欠失マウスでは、心筋梗塞後のリモデリングが起こらない。
ディオバンは、生命予後を改善した。
アンジオテンシンⅡは、血管老化を促進する。
21世紀は、治療から予防へシフト
どのステージでも、RAS抑制が必要
ARB、ACE-Iを使用
最後に、心臓再生の方法について説明された。
Closing Remarks
(O大学大学院医歯薬学総合研究科胃・免疫・内分泌代謝内科学教授のM先生)
糖尿病腎症について
終了が21時40分となり、福山に帰ったのが、22時45分となりましたが、有意義な講演でした。
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