きょうのコラム「時鐘」 2009年12月13日

 米国で心臓の移植手術を希望する6歳の池田悠里ちゃん(富山市)を支援する募金額が、1億4千万円の目標を達成できることになった。暗い世相ばかりに目が向くが、うれしいことに、人の情けはそう簡単に廃れはしない

近くの飲食店にも募金箱が置いてあり、ビールを余分に飲んだつもりで、と紙幣を出す人がいた。「つもり預金」ならぬ「つもり寄付」である。大口の寄付もあったそうだが、小さな善意が大きな実りになることを、あらためて知る

ビール1杯分でも寄付に回せば、少女の力になれる。が、それを「つもり預金」に回してしまうと、消費がさらに冷え込むことになる。節約は美徳、という教えが染み付いた人には、実にややこしい時代になった

悠里ちゃんが直面する臓器移植も、世を覆う不況風も、難題である。お上は懸命に取り組むというが、腰のふらつきばかり目立つ。だから、「つもり寄付」の輪が生まれた

それにならい、「節約したつもりで奮発」と、頭を切り替えたい。「つもり奮発」が集まれば、不況風と勝負できる。多難な一年を節約漬けで終えるのは、いささかさみしい。