詐欺女の絶品(?)レシピ。左から「フレンチトースト@ホテルオークラ東京風」、「漁師直伝生筋子のほぐし方・いくら醤油漬け」、「スライスじゃがバター重ね焼き」。下は「ビストロ風☆ビーフシチュー」 [ 拡大 ]
周辺の男性6人が不審死している東京都豊島区の無職女(34)は、得意の料理で結婚詐欺の被害者たちに良妻賢母ぶりをアピールしていた。女は有名料理サイトに約80ものレシピを投稿、中には30人以上のサイト会員が「おいしすぎる」と感嘆の声を寄せたメニューもあった。そこで夕刊フジは、“魔性のレシピ”をもとに料理を忠実に再現してみた。本当に結婚したくなるほど、うまいのか−。
女は昨年3月、大手料理サイトに登録。高級レストランで食事をした“セレブ日記”をブログにつづっていたほか、「かなえキッチン」と題して独自のレシピを82品目も公開。写真を交えながら、手順を1つ1つわかりやすく説明していた。
女のページはすでに削除されているが、ネット上の履歴などを見ると、女のレシピは「ぬか床」検索部門で1位を獲得するなど、中高年が喜びそうなメニューがずらり。さらに、「キャラメル&塩生クリームサンドイッチ」といった甘ったるいデザート系やイタリアン系のレシピが多かった。
中でも会員から人気が高かったのが「漁師直伝生筋子のほぐし方・いくら醤油漬け」、「スライスじゃがバター重ね焼き♪」、「フレンチトースト@ホテルオークラ東京風」の3品だった。
また、女は今年8月5日、他の会員の「ビストロ風☆ビーフシチュー」レシピページに、まねて作ったとの報告を写真付きで投稿していた。この翌朝、女と交際していた東京都千代田区の会社員、大出嘉之さん(41)がレンタカー内で遺体で発見され、胃からビーフシチューが検出された。埼玉県警はシチューに睡眠薬が混ぜられていたとみている。
そこで、この4品を同サイト常連の「料理が趣味」という都内の主婦(31)に再現してもらった。食材は女が出入りした高級スーパー「S」と同じチェーン店で仕入れてもらったが、主婦は女のレシピについて「全体的に手間がかかって、油っぽい。道楽ならいいが、コストも高く、庶民の台所にはふさわしくない。特にフレンチトーストに卵を3個も使うのは信じられない」と切って捨てた。ちなみに材料費は4品で4541円だった。
では、味はどうか? まずは問題のビーフシチュー。一口すすると、味は極めて濃い。1杯で「もう、いいや」という気分。これを大出さんは頑張って食べたのだろうか?
「いくら醤油漬け」は筋子を餅網に通してほぐす。女は「餅網がなければテニスやバドミントンのラケットが最適」と記載していたので、ラケットでやったが「よく、ほぐれた」と主婦も感心。知能犯らしくアイデアに富んでいる。
フレンチトーストも味が濃厚。高級感はあるものの、甘すぎ感は否めない。「じゃがバター」は手軽で風味はまずまず。主婦は「唯一、実用性のあるレシピ」と評価した。ただ、同席した主婦の長男(5)は脂っこい食事に慣れていないためか「母ちゃん、腹痛い」とトイレに駆け込んだ。
食品メーカーで商品開発の経験もある管理栄養士の酒井美貴さんは「レシピに載っている食材や道具はどこの家庭にもあり、『手軽に作れる感』はあるが、あくまで素人の領域で、商売にはなりません」と断言。そのうえで「いずれも“お楽しみ的”な料理で、こうした料理を毎日食べていると生活習慣病を招く。バターや卵の減りも早いでしょう」と指摘した。