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5人死亡のパチンコ店放火、高見容疑者を起訴 大阪地検

2009年12月4日

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 大阪市此花区のパチンコ店で7月、客と従業員5人が死亡した火災で、大阪地検は3日、無職の高見素直(すなお)容疑者(41)を殺人と殺人未遂、現住建造物等放火の罪で起訴した。高見容疑者は約4カ月間の精神鑑定で統合失調症と診断されている。地検は刑事責任を問うことについて、「本人の供述などを総合的に判断した結果」と説明している。

 起訴状によると、高見容疑者は7月5日午後4時15分ごろ、此花区四貫島(しかんじま)1丁目のパチンコ店「cross(クロス)―ニコニコ」内にガソリンをまいて放火し、5人を死亡させ、10人に重軽傷を負わせたとされる。大阪府警などによると、火災で18人が重軽傷を負ったとされる。地検は、診断書の提出の有無や症状の重さなどをもとに、このうちの10人を殺人未遂罪の被害者とした。

 府警によると、高見容疑者は逮捕直後、「人生に嫌気がさし、誰でもいいから殺したいと思った」などと供述。動機と結果の重大性に飛躍があることなどから、地検は7月24日〜11月30日、精神鑑定のために留置し、統合失調症と診断された。

 統合失調症は考えがまとまりにくくなり、幻覚や妄想などが出る症状。薬による治療が効果的とされる。

     ◇

 府警や地検は、これまでの捜査から事件は次のような経緯だとしている。

 高見容疑者は広島県の工業高校で危険物取扱者の資格を取得。1986年に卒業後、県内や九州の運送会社などに勤めたが、勤務先の倒産などもあり職を転々とした。

 2007年春に大阪に出てきたが、今年4月に物流会社をやめた後は、親族や消費者金融から借金をしたり、ゲーム機などを売り払ったりして生活費に充てていた。事件当時の借金は200万円を超えていた。「思うような仕事に就けない。なぜまじめにやっているのに報われないのか」と不満を募らせ、一時は自殺も考えたが、「どうせ死ぬなら誰でもいいから巻き添えにしてやろう」と思い立った。

 事件当日にホームセンターで買ったタンクにガソリン10リットルを入れ、パチンコ店に向かった。ガソリンをバケツに移し替え、店にまき散らしてマッチで火をつけた――。

 高見容疑者は逮捕後、「ガソリンなら火力が強く、無差別にやるのによいと思った」と供述したという。

 事件翌日、山口県警岩国署に出頭し、逮捕された。府警の調べに「死刑を覚悟して自首した。被害者の方々には申し訳ないという気持ちです」と話したという。

     ◇

 犠牲者の遺族や友人らの悲しみは癒えないままだ。

 店で勤務中に犠牲になった延原麻衣さん(当時20)の祖母、美恵子さん(82)=兵庫県上郡町=によると、麻衣さんは、美恵子さんがつくる梅入りのおにぎりが大好きだった。「おばあちゃんのおいしいね」と言ってくれた笑顔が何度も思い浮かぶ。

 麻衣さんは働きながら、ツアーガイドを目指して専門学校に通っていた。事件後、親族の一人が現場に居合わせた人を探し、麻衣さんが亡くなった利用客のそばで倒れていたと聞いた。「お客さんを助けようとして逃げ遅れたのだろう」と美恵子さんは思う。高見容疑者に尋ねたい。「友達が多くて、本当に面白い子だった。どんな女性になっていたんだろうと、家族は一生涯考えてしまうでしょう。そういう者がここにおるけど、どう思いますか」

 事件の約1カ月後に亡くなった森下幸司さん(当時50)=兵庫県尼崎市=は、地元のソフトボールチームの仲間と一緒によく同店に通っていた。「この台、絶対出るから」と仲間に席を譲ることもよくあったという。友人の中司修さん(48)は「高見容疑者にどんな理由があっても、自分は許せない」と話した。

 現場は10月31日、店名を変えて再開。規制よりも通路を広くし、避難しやすいようにしたという。

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