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きょうの社説 2009年12月13日
◎「八田宿舎」へ家具を 友好の思いを寄せたい
台湾で復元整備が進む、金沢出身の八田與一(よいち)技師の宿舎へ家具を贈るキャン
ペーンは、八田技師のふるさと金沢、石川からの友好の思いを現地に届ける取り組みといえる。すでに八田技師の金沢の生家や東京に住む遺族が協力を申し出ており、県民のより広い参加を期待したい。八田技師一家が暮らした宿舎は、建設に尽力した烏山頭(うさんとう)ダム湖畔で復元 が進められ、県民から寄せられる戦前の古い家具や調度品が宿舎内に配置される。これまでの地道な民間交流によって金沢と台湾のきずなが深められてきた。今回の宿舎復元も八田技師を描いたアニメ映画「パッテンライ!!」に続く交流促進の取り組みである。完成すれば日台の懸け橋となった八田技師の暮らしぶりが身近に感じられ、本人の足跡や功績により理解を深めることになるだろう。 宿舎のある一帯は2011(平成23)年に八田技師の記念公園として一般公開される 予定である。台湾の人々が日本の文化に関心を持つきっかけにもなり、現地を訪れる日本人にも当時の歴史を記憶にとどめる貴重な体験となるはずである。 ダムを管理する嘉南農田水利会からも協力要請が届いており、実行委員会は「“パッテ ンライ”の家に家具を贈ろうキャンペーン」と銘打って、今月16日から一般募集を開始し、来年秋ごろに現地へ送ることにしている。 多くの県民にあらためて身の回りを見わたしてもらって、当時の品物の有無を確認して もらいたい。その際に、家族で戦前、戦中当時の様子を話し合い、子どもたちに語り伝えるのも意義のあることだろう。 台湾では「パッテンライ!!」が全土で上映され、八田技師への関心と共感が一気に広 がってきた。若い世代にも八田技師を通じたきずなが深まっている。金沢学院東高2年生は11月に台湾への修学旅行でダムを見学し、現地の高校生らと交流した。泉丘高も来年度、台湾を訪れ、ダムにも足を運ぶ。事前学習の一環として1年生が「パッテンライ!!」を観賞した。次世代の交流を育てる八田技師ゆかりの地に、石川からの友好の品々を数多く届けたいものである。
◎地域医療再生計画 2大学もつ強み生かして
国の交付金に基づく地域医療再生計画で、石川県は「医師確保調整会議」(仮称)を新
たに設け、金大と金沢医科大から「能登北部」「南加賀」の公立病院に医師を派遣する仕組みをつくることになった。今年度第1次補正予算に盛り込まれた交付金制度は、地域の実情に即した計画の策定を求めており、県が医師確保策で地域の強みを生かすとすれば、医学系をもつ2大学の機能を最大限に引き出すことが求められる。県と金大が昨年7月に設けた県地域医療支援センターでは、医師不足が深刻化する能登 北部の公立病院に専門医を派遣しており、それに加えて金沢医科大との連携を強化すれば、よりバランスの取れた医師の配置も可能になろう。金大、金沢医科大はそれぞれ病院との独自のパイプをもっているが、意思疎通を図り、相互に補完し合う仕組みづくりを考えてほしい。 国の地域医療再生臨時特例交付金は都道府県の2次医療圏の2カ所が対象で、石川県は 「能登北部」と「南加賀」を選んだ。計画期間は2013年度までで、国から交付される25億円ずつで基金を造成し、事業を実施する。 大学にかかわる事業では、一定期間の県内勤務が条件となる金大医学類の特別枠を10 年度から5人増やし、10人とするほか、金大附属病院には手術などが体験できる医療シミュレーションセンターが整備され、研修医や一般の医師にも開放される。金大、金沢医科大には「寄付講座」も設置される。 能登北部の公立4病院では共通の電子カルテ導入なども計画に盛り込まれたが、こうし た病院間の連携とともに重要なのは、人材供給源である大学の継続的なバックアップ体制である。今回の地域医療再生計画で大学の役割が一層明確に位置づけられたことで、大学を基軸とした人的ネットワークを県内全域に張り巡らせてほしい。 10月に公表された来年度の臨床研修医の充足率は、金大が81・6%、金沢医科大が 56・3%となっている。人材供給の司令塔としての機能を高めるには、大学側も充足率を高める一層の努力が必要である。
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