2009年12月10日0時46分
消費者金融大手アイフルに続き、武富士も9日、借金を約束通り返せない「債務不履行」の状態に入った。いずれも存亡を懸けた資金繰り対策の結果だが、収益源の貸し付けも大幅に絞っているため、今後も規模縮小が続きそうだ。業界全体でも貸付金は減りつつある。
武富士は昨年、転換社債700億円を発行したが、株価低迷で来年6月に全額繰り上げ返済を求められるのは必至だ。このため先月、返済を減額・猶予してもらう組み替えを投資家に提案。9日に結果を発表した。250億円分について、現金116億円を現時点で支払う代わりに、33億円分を減額、101億円分を2011年4月までの分割返済に振り替えた。
武富士は「資金繰りの安定に大きく寄与する」としている。しかし市場では、こうした手法は部分的な「債務不履行」とみなされる。
アイフルは9月に、債務の返済猶予を求め、私的整理の一種「事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)」に入っており、同様に評価されている。消費者金融大手4社のうち2社が借金返済に窮するという異常事態だ。
各社の資金繰りを追い詰めているのは、利息制限法の上限を超える「グレーゾーン金利」で取っていた過払い利息の返還だ。支払いが続くため、手元資金の確保が生死を分ける。独立系の武富士、アイフルは大手銀行の後ろ盾がないため厳しい。
武富士は貸し付けをほとんど停止。債務の組み替えに加え、保有不動産を担保にした資金調達を急いでいる。
アイフルは今月24日にADR成立を目指す。取引金融機関すべての賛成が必要だが、関係者によると、米ゴールドマン・サックスがアイフルに債権買い取りを要求。成立はズレ込む気配だ。仮に不成立の場合は、大手では初の法的整理につながりかねない。
■規制強化、貸付金額が縮小
武富士の09年3月期の事業規模は8年前から半減。アイフルも7割程度に減った。両社は生き残りのため、当面、縮小均衡への動きを続ける見通しだ。銀行系のプロミスとアコムも独立系ほどではないものの、事業規模を縮小中。業界全体でも、最近1年間の月間の貸付金額は前年比20%程度のペースで減っている。
背景にあるのは、来年6月までに予定される改正貸金業法の完全施行だ。個人向け貸し付けの総量が規制されるほか、各社は金利を新しい規制水準に前倒しで下げており、貸し倒れリスクの高い人には貸さなくなってきている。
消費者金融の縮小は、多重債務対策として期待された効果が、想定通り表れてきた結果ともいえる。だが、業界は「市場縮小で借りられなくなる人が出たり、ヤミ金融に流れたりする」と主張する。自主規制機関の日本貸金業協会に4〜10月に寄せられた苦情・相談は計約3万件。借り入れを求める相談は約13%にとどまるが、08年度の約6%より割合が増えた。また、今夏の調査では規制強化の認知率は3割超しかなく、周知が遅れているという。
一方、日本弁護士連合会は、業界の規模縮小について「多重債務者への過剰な貸し付けが減りつつある過程」と評価。貸し渋りの苦情は少なく、借りられない人の多くは支出を抑えるなど合理的に行動しているといい、予定通りの完全施行を求めている。