きょうの社説 2009年12月12日

◎金沢が「重文景観」に 「城下町」の面的評価に意義
 金沢市街地の一定範囲が国の重要文化的景観(重文景観)に選定されたことは、城下町 の面的な景観価値が文化財保護法の枠組みのなかで初めて明確に認められた点で大きな意義がある。

 奈良や京都、鎌倉などは古都保存法で特別な位置づけがなされる一方、近世城下町につ いては総体的な評価手法がなかった。文化審議会は金沢について「わが国における城下町発展の各段階を投影した都市構造を現在まで継承し、街路網や用水路などの諸要素が現在の都市景観に反映されている」と評価した。時代の連続性や重層性は非戦災都市でもある金沢の個性であり、今回の指摘は城下町の価値判断の物差しを示したといえる。市街地が面的に文化財と評価されたことを弾みに、個々の建造物や史跡の文化財指定も加速させたい。

 重文景観は文化財保護法改正に伴い2005年度から選定が始まり、今回の4件を含め 計19件となった。制度の趣旨で自然との共生が重視されたため、当初は開発によって保護が急がれる農林水産業にかかわる景観が中心となり、農山村や水郷、棚田などが選ばれてきた。その後、歴史まちづくり法で歴史的な建造物と周辺市街地が一体化した「歴史的風致」の概念が打ち出され、「歴史都市」などの評価が課題になっていた。

 重文景観は主として第一次産業関連の保存から始まったため、城下町もその基準を応用 する形で価値づけがなされている。今後は古都保存法のように城下町の価値を別立てで評価できる仕組みが考えられないか検討してほしい。

 金沢は江戸期の城下町建設で都市の骨格が固まり、それを下敷きにまちづくりが進めら れてきた。今回の選定理由が示すように江戸期の絵図と現在の街路網はほぼ一致し、当時つくられた用水に沿って道路も整備されている。寺院群や茶屋街などを含め、江戸期の都市計画がこれほど分かりやすく残っている大規模城下町は全国でも金沢ぐらいである。

 金沢市街地では惣構堀の復元や町家の保存なども進んでいる。これら点の保存活動を広 げ、面的な景観価値をさらに高めたい。

◎二階選対局長の続投 処分なしの理由分からぬ
 西松建設の違法献金問題で、政策秘書が略式起訴された二階俊博前経済産業相が何の処 分もなく、自民党選対局長の役職にとどまる理由が解せない。秘書は、西松建設が2006年から3年間、社員ら60人の名義を勝手に使って同支部に献金していた計900万円を、名前を記載する必要のない5万円以下の個人献金を装って収支報告書に記載したことを認め、罰金を払ったのである。二階氏は「(企業献金とは)まったく聞いていない」と述べていたが、真相はどうだったのか、今こそ国民に明らかにすべきだろう。

 自民党は「鳩山総理巨額脱税追及チーム」を設置し、国会閉会中も鳩山由紀夫首相の政 治とカネの問題を追及していく構えだが、党執行部は、二階氏秘書の事件について、鳩山首相などのケースとは「悪質性が違う」として、処分なしの姿勢を変える様子はない。本来なら谷垣禎一総裁が指導力を発揮し、説明責任を果たすよう二階氏に求めるのが筋だろう。

 身内に甘く、他人に厳しくでは、国民の納得は得られない。既に党の役職辞任を執行部 に申し入れた鳩山邦夫元総務相ともども詳細な調査を行い、しかるべき説明と処分を行う必要がある。そうでなければ、鳩山首相や小沢一郎幹事長らの政治とカネの問題に切れ味鋭く切り込めるはずがない。

 自民党の中堅・若手議員22人は、二階氏はけじめをつけ、執行部は適切な措置を講じ るよう求めた要望書を、谷垣総裁らに提出した。自ら襟を正すべきとの主張は当然である。野党暮らしで影が薄いのに、こんな体たらくでは、国民から完全に見放されてしまうという危機感をもっと深刻に受け止めるべきではないか。

 今回の事件は、年間5万円以下の小口献金について、寄付者名を政治資金収支報告書に 記載する必要がないとした法の抜け穴が悪用されたという点で、鳩山首相の偽装献金問題と同じ構図である。野党がスネに傷を持つ身で与党を追い込めるとは思えない。まず身内を手加減せずに徹底的に追及し、全容を公開してはどうか。自民党を見る国民の目が変わるはずだ。