関西ラウンドアップ前週の関西の動きを振り返り解説
スイーツ人気の陰で淘汰の波2009/12/06配信
菊水総本店は湊川神社正門前の本店のほか、神戸空港店など神戸市内に5店舗を持つが、すべて1月中に閉鎖するという。同社は1872年に考案した「瓦せんべい」が主力。阪神大震災での被害や洋菓子に押されたことなどもあり経営環境が厳しくなり、2006年にUCC上島珈琲の子会社となって再建に取り組んでいた。本店を全面改装し和風のカフェを併設するなど業績のテコ入れを図ったが、好転しなかったという。UCC傘下に入ったのは菊水総本店の菊水章矩社長(当時)がUCCの上島達司社長(同)と同じ大学出身で旧知の仲であることから支援を頼んだためといわれるが、深刻さを増す消費不況に再建の望みを断たれた。 神戸の菓子業界では、ここにきて有名メーカーが相次いで姿を消している。06年にはコスモポリタン製菓が80年の歴史に幕を閉じ、07年にはチョコレート菓子で人気があったスイス菓子ハイジが店を閉めた。今年に入ってもシェ・コパンが破綻している。 港町・神戸の菓子業界は明治・大正期に既存の和菓子店に加えて、モロゾフやゴンチャロフ製菓の前身が創業されるなど、海外から集まった技術者による洋菓子店が相次いで誕生、発展してきた。1960年代後半からは「アンリ・シャルパンティエ」、「フーケ」、「ケーニヒスクローネ」などといった日本生まれの技術者が創業した洋菓子店が次々に登場し、大きく成長。近年でも「御影高杉」といった有力店がオープンしている。そしてここ数年のスイーツ人気は神戸の菓子業界に強い追い風となった。神戸ファッション協会が3月にまとめた07年の神戸を中心とする阪神間の洋菓子業界(売上高1億円程度以上の企業)の売上高は、前回調査の04年より約24%伸びている。 それでは、なぜ淘汰の波が来ているのか。まず神戸の業界内で新興勢力がどんどん台頭する一方、神戸以外での競争相手も増えており、老舗企業といえどもうかうかしてはいられない状況になったことだ。先ほどの神戸ファッション協の調査でも、企業数は04年の34社から07年は42社にまで増えている。京都市、滋賀県などからも有力な洋菓子メーカーが百貨店に進出し「神戸の洋菓子は元気とはいえ、百貨店の売り場の大半を神戸のメーカーが占めていたのは過去のこと」(神戸商工会議所)との声も聞かれる。そのうえ、08年秋以降は景気後退で法人需要・贈答需要が大きく落ち込み、新型インフルエンザの流行で百貨店の生洋菓子の販売もブレーキがかかってきた。 こうした環境変化に、今年創業100年周年を迎えたユーハイムは目新しさを打ち出すためにブランドデザインを一新したり、モロゾフは利益率アップのため生産量をスムーズに調節できる新工場を来年6月稼働予定で建設したりしている。 急成長した市場を狙って、新たな技術や売り物を持った新規参入者により競争が激しくなる一方、ここにきての消費不況が厳しい淘汰の時代をもたらしている。菊水総本店の清算決定は他人事ではない。(小)
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