きょうの社説 2009年12月10日

◎GDP下方修正 追加対策の迅速な実行を
 7〜9月期の国内総生産(GDP)が大幅に下方修正されたのは、今月初旬に公表され た法人企業統計の落ち込みで予想されていたとはいえ、民間調査機関の推計値を大きく超えており、「二番底」に陥る懸念がさらに現実味を帯びる状況になってきた。

 政府は財政規模7・2兆円の追加経済対策をまとめた。年明けの通常国会に今年度2次 補正予算案として出されるが、景気の減速傾向が鮮明になったことで、来年度予算が動くまでの景気テコ入れ策として2次補正の実効性はますます重要になってきた。景気対策の空白期間を延ばさないためにも早期成立が不可欠である。迅速な執行に備え、新設される「住宅版エコポイント」などの制度設計を急いでほしい。景気の動向次第では新たな追加策も求められよう。

 11月公表の7〜9月期GDP速報値は前期比1・2%増、年率換算4・8%増と市場 の予想を上回ったが、改定値は0・3%増、年率1・3%増と大きく下がった。設備投資が前期比1・6%増から2・8%減に転じた影響が大きく、企業が景気の先行きやデフレ進行などを懸念し、投資に慎重になっている姿勢がうかがえる。

 GDPは政府の経済対策の前提となる重要な指標であり、改定値でこれほどずれるのは 問題である。統計の信頼確保へ向け、速報、改定値で基礎データの取り方が妥当か検討の余地がある。

 改定値で目立つのは、公共投資や政府支出などの公的需要が前期比0・1%増から0・ 4%減になった点である。公共投資の減少幅拡大も景気減速の一因とみられる。鳩山政権の決まり文句は「コンクリートから人へ」だが、経済の非常事態では公共事業の即効性というプラスの側面にも目を向ける必要がある。

 追加経済対策では電線地中化や橋の老朽化対策なども盛り込まれた。とりわけ電線地中 化のように都市の美観や災害対策、歩行者の安全など多様な目的に沿うインフラ整備は来年度予算でも積極的に対応してよいのではないか。追加経済対策の迷走ぶりをみれば、今後の対策も後手に回る懸念がぬぐえないが、来年度予算編成でも求められるのはスピード感である。

◎小松基地F15事故 ミスの誘因掘り下げて
 航空自衛隊小松基地のF15戦闘機が着陸に失敗した事故は、パイロットの人為的ミス の可能性が大きいという。幸い爆発炎上といった大事には至らなかったが、いわゆるヒューマンエラーの怖さをあらためて思い知らせる事故である。個人的な過誤、失敗として当人を責め、組織の安全指導を徹底するだけでなく、そうしたヒューマンエラーがなぜ起きたのか、それを誘発した要因はなにかを徹底的に調査、分析することが重要である。

 航空自衛隊のこれまでの調査では、機体の車輪が出ていないのにパイロットは「車輪を 下ろす操作をしたものと思って着陸した」という。ベテランでも勘違いや思い込みによってミスを招くことはあり得るが、車輪が出ていないことを知らせる警告音も聞こえなかったのはどうしたことか。

 また、着陸を監視すべき航空管制官が車輪の状態について記憶がなく、地上の隊員は指 示、助言の間がなかったという。複合的なミスが事故につながった可能性もあり、パイロットの操縦上の問題点にとどまらず、地上の管制、監視業務も含めて原因を深く掘り下げてもらいたい。

 航空自衛隊が保有する約200機のF15は、日本の主力戦闘機である。退役する予定 の旧世代戦闘機・F4ファントムに代わる次期主力戦闘機の選定作業が遅れており、F15が空の守りの要である時代は当分続く。ところが、このところ築城基地と千歳基地所属のF15が尾翼や部品の落下事故を相次いで起こし、住民の不安を招いているのは残念である。

 次期主力戦闘機の導入の遅れもあり、防衛省は配備開始から30年近いF15の近代化 改修に力を入れている。改修による防空能力の強化と、それに応じた機体整備の技量向上は当然ながら、そうしたことが整備員のストレスになり、ミス誘発の一因になる恐れも否定できない。航空自衛隊は、ヒューマンエラーによる事故防止のため、整備員の教育訓練はむろん作業の品質管理体制の強化を進めているが、そうした取り組みを一層充実させてもらいたい。