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衝撃!阪神・赤星が現役引退「命の危険…」 (2/2ページ)

2009.12.10 05:06
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衝撃!阪神・赤星が現役引退「命の危険…」
引退を発表した赤星。命の危険…。衝撃の事実を明らかにした(撮影・森田達也)【フォト】

 唐突に、静かに、赤星が駆け抜けた9年間に幕を下ろした。涙はこらえた。全力で戦い続けた誇りと、完全燃焼できなかった無念の思い−。様々な感情が交錯した。

 「僕は気持ちで負けないと、気持ちで乗り越えてきましたが…。今回のけがは気持ちでカバーできる部分じゃなかった。引退するとはまったく考えていなかったんで、現実を受け止めるのに時間がかかりましたし、今も実感はありません」

 9月12日、横浜戦(甲子園)。右中間への打球にダイブし、そのまま立てなくなった。背負われたまま後にした甲子園。それが、レッドスター最後の雄姿となった。

 重症だった。自らの意志で足を動かすことも出来なかった。右腕もしびれ、ハシすら自由に触れない日々。「腕を取り外してくれ」と何度も心の中で叫んだ。先の見えないリハビリ。それでも気持ちはなえなかった。必ず復活する−。しかし現実は、残酷だった。

 頸椎(けいつい)ヘルニアの悪化に加え『中心性脊髄(せきずい)損傷』と診断された。日常生活には問題なくともアスリートとしては絶望的。会見では決断に至った衝撃的な事実も明かした。

 「(医師から)今後、悪化させれば不随になる可能性もかなりあると。最悪、命の危険もあると言われて。万が一ですが…。今のまま現役を続けることはかなり危険、と言われた」

 生命の危険…。球団からは今後の人生を考えて10月末に引退を勧告された。「1年様子をみてください」と、現役へこだわったが…。11月28日に南球団社長と話し合い、12月3日に正式に引退の決意を伝えた。

 「グラウンドで死ねたら本望かと聞かれれば、本望といえない自分もいた。恐怖心もあった」

 悩み抜いた1カ月間を振り返った。まだ出来るという未練と重い現実との葛藤。『9年間よくがんばった。もういいよ』。決断したのは心配する両親のこの言葉。そして自らのプライドだった。

 「僕は100%の力を毎試合出せなければ他の選手に勝つことはできないと思ってやってきた。どこかでセーブしなければいけないという恐怖感もある。やはりプロとして、身を引くべきじゃないかと」

 入団から9年。プロでは通用しないと言われた小さい体にファンの夢を乗せ、全力で走ってきた。1年目から5年連続の盗塁王、6度のゴールデングラブ…。しかしダメージは周囲の想像を絶するものだった。かつて冗談混じりに「35歳で引退する」と話した。「周りが100%なら僕は120%でやっと太刀打ちできる」。これが口グセ。来年34歳。無理を重ね続けた体は限界に達した。

 今季、歩く姿はまるでロボットのようだった。何か一つ歯車が狂えば、すべて崩れる。そんな繊細な状態。それでも、引退の引き金となったダイブにも「今も夢に出てくるが、野球人の本能で動いたこと。後悔はしていない」と胸を張った。

 「けがさえなければ…。完全燃焼できたかと言われたら出来ていない」。潔い決断とともに、無念の思いは仲間に託した。日本一の夢を−。はかなく、せつな的な野球人生を象徴するエンディング。赤星が聖地を去った。(堀 啓介)




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