公共事業を問う
公共事業はどうあるべきか。ダムの地元で翻弄される人々の心を追った
【暮らし】<味ある記>鴨ネギ鍋(埼玉県越谷市) ブランドつくり まちづくり2009年12月5日
「うわぁー、大きい」 特産ネギ三千本が入った直径二メートルの「鴨(かも)ネギ大鍋」を、子どもがのぞき込む。 埼玉県越谷市で十一月下旬に開かれた「こしがや産業フェスタ」。親子連れら約三百メートルの行列ができた鴨ネギ大鍋は二〇〇五年、同フェスタでデビューした。「越谷には、名物がない。地元ならではのものをつくろう」。同フェスタのイベントを担当する市商工会青年部の入浴施設業中島高明さん(42)らを中心に立ち上がったのがきっかけ。 着目したのが「ネギ」と「鴨」。同市は高級料亭で長年使われている、高品質のネギの産地。さらに市内に明治時代末期から皇室がカモ猟をする「埼玉鴨場」がある、歴史・文化があったからだ。 同フェスタを冬に開催する関係で、鴨とネギを使った鍋をつくることに。農業後継者グループ「グリーンクラブ」の協力で大根やシイタケなどの具材も手に入り、地元産品を使った五千人分の大鍋は来場者に大好評だった。 その勢いに乗って同県和光市で翌〇六年一月に開催された「彩の国鍋合戦」に参加。しょうゆ味のスープに、甘味が出る焼いたネギが特徴の鴨ネギ鍋は優勝を勝ち取った。 「優勝して騒がれ、越谷を動かすのはおれたちじゃねぇ、ぐらいの話になった」。中島さんたちは宇都宮のギョーザなどの視察を皮切りに、地域ブランド化に本腰を入れ始めた。市民の有志を募って大鍋用のネギを栽培。グリーンクラブの仲間と一緒に稲の合鴨(あいがも)農法にも取り組む。 鴨ネギ鍋は〇八年から小中学校の給食にも登場。市商工会のサポートを受け、市外にPRするため東京都内の食品関係の催しなどで出前販売にも精を出す。活動資金には行政の助成制度などを活用する。 鴨肉を扱う市内のそば店主から「一緒にできないか」と声がかかり、〇七年冬から鴨ネギ鍋を楽しめるキャンペーンを二十一店でスタート。今年は二十八店に増えた。 〇八年十一月には、「鴨ネギ鍋」ギフトセットを商品化するため「こしがやまちづくり合同会社」を設立し、今冬発売した。同社トップで、当初から中島さんと活動する鈴木勝己さん(43)は「鴨ネギ鍋を切り口の一つにして、越谷の名前を広めたい」と力を込める。 商工会青年部の催しとして始まった試み。社名に掲げたように、中島さんたちの目的は「まちづくり」。「できすぎの面もあるが、ぼくたちに刺激されて、何かやろうという動きが越谷で広がればいい」 (飯田克志) 開催中の「こしがや鴨ネギ鍋」キャンペーンは来年2月末まで。1人前1000円台から。提供店舗など詳細はホームページ(同鍋名で検索)で。鴨ネギ鍋事務局=電048(966)6111。ギフトセット(2〜3人前)は8380円(送料別)。こしがやまちづくり合同会社=電048(940)0009。
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