韓国  2009年12月9日(水曜日)
受注実績わずか10%、造船不況に突入か[製造]

韓国造船各社の経営環境が大きく悪化している。今年9月中旬までの船舶受注額は、年初に設定した目標額の10分の1水準と低迷。背景には金融危機の影響による海運不況に加え、中国の造船業界がシェアを拡大していることがある。これまで韓国経済をけん引してきた造船業界が、不況に突入することで、金融危機から回復し始めた経済にも影響を与えそうだ。【編集局東アジア部・安藤久史】

韓国経済新聞によると、造船各社の今年9月中旬までの受注額は、現代重工業が目標額(通年)の11.4%の19億米ドル(約1,662億円)、サムスン重工業が7.0%の7億米ドル、大宇造船海洋が3.0%の3億米ドルにとどまっている。

■「手持ち」にも不安

これまで韓国造船業界では、過去の受注で数年分の手持ち工事量を確保していることから、不況が訪れたとしても経営基盤が崩れることはないという姿勢を貫いていた。

ただ、ここに来て、手持ち工事量に対する不安も広がりを見せ始めている。韓国造船業界の現在の手持ち工事量は平均2年だが、一部発注業者からキャンセルも出ているという。すでに、これまで造船各社が受注した大型船舶40隻が、発注取り消しになる可能性があるとの分析結果まで出ているほどだ。

■海運業界にも影響

造船各社の状況は、米証券大手のリーマン・ブラザーズが破たんした昨年9月に一転した。世界的な金融危機にまで発展し、消費委縮に伴い海運業界の景気が一気に冷え込んだためだ。

韓国最大の港湾、釜山港の今年上半期(1〜6月)のコンテナ取扱量は、昨年同期比17.6%減の562万6,420TEU(20フィート標準コンテナ換算)に落ち込んだ。

これに伴い、韓国国内に拠点を置く海運1,800社、海運仲介505社、船舶レンタル126社、船舶管理175社、貨物あっせん4,000社などが大きな影響を受けた。収益が昨年の10%水準にとどまる企業も続出しているという。

韓国の中堅海運業者の関係者は、「造船業界に船舶を発注するのは主に海運業者。海運業界が好調にならなければ、造船業界の不況は続くだろう」と話している。

知識経済部と金融委員会は今年4月、造船不況を阻止する目的で、船舶買い入れなどのために7兆ウォン規模の船舶ファンドの設立に乗り出したが、依然として効果は現れていないという。

■勢いづく中国勢

さらに、韓国造船業界にとっては中国の追い上げが追い打ちをかけている。中国造船業界は、中国政府の支援により、全世界に占める受注シェアを高めている。今年7月には世界シェアが70%にまで拡大した。

中国がシェアを高める背景には、韓国のコスト高がある。造船は人件費が占めるコストが高いため、韓国に比べ低賃金で労働者を確保できる中国が優位になり始めているという。

造船業界は、これまで技術力を向上させた人件費の安い国・地域が主導権を確保してきた。業界をリードする国・地域は、1960年代に西欧から日本に、そして韓国に移った。金融危機による海運不況で、主導権は人件費が高騰した韓国から、中国に移り始めた構図も浮き彫りになっている。

日本がかつて歩んできた道を韓国はたどるのか。日系メーカーは、主力の造船事業の比率を引き下げ、事業の多角化を推し進めることで、経営環境を改善した。韓国造船業界としても、中国が追い上げをみせている現状を考慮すると、事業の多角化を推し進めることで、落ち込み始めた業績を改善するしか方法はないともいえる。

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